十二礼
出典: 浄土真宗聖典『ウィキアーカイブ(WikiArc)』
本書は、善導大師の『往生礼讃』の「中夜讃」に、「龍樹菩薩の願往生礼讃偈」と称して依用されているとおり、龍樹菩薩ご自身が阿弥陀仏の浄土に往生することを願って、阿弥陀仏を礼拝讃嘆された偈頌である。
迦才の『浄土論』には、「禅那崛多三蔵別訳の龍樹の讃のごとき、阿弥陀仏を礼する文、十二礼あり」と述べられている。偈頌は七言一句、四句一偈で、全部で12偈ある。最後の一偈は回向で結ばれるので礼拝を示す文は出ていないが、他に準じて「十二礼」と称される。
その内容は、初めに阿弥陀仏の徳を讃嘆し、ついで浄土の聖衆の徳を、さらに国土の徳をそれぞれ讃嘆していかれる。そして最後にこの法の徳を人々に伝えて、ともに往生しようと願う回向句をもって結ばれている。
十二礼
十二礼
【1】
- 天・人に恭敬せられたまふ、阿弥陀仙両足尊に稽首したてまつる。
- かの微妙の安楽国にましまして、無量の仏子衆に囲繞せられたまへり。
【2】
- 金色の身、浄くして、山王のごとし。奢摩他の行は、象の歩むがごとし。
- 両目の浄きこと、青蓮華のごとし。ゆゑにわれ、弥陀尊を頂礼したてまつる。
【3】
- 面よく円浄なること、満月のごとし。威光はなほ、千の日月のごとし。
- 声は、天鼓と倶翅羅のごとし。ゆゑにわれ、弥陀尊を頂礼したてまつる。
【4】
- 観音頂戴の冠中に住したまふ。種々の妙相、宝をもつて荘厳せり。
- よく外道と魔との驕慢を伏す。ゆゑにわれ、弥陀尊を頂礼したてまつる。
【5】
- 無比・無垢にして、広く清浄なり。衆徳皎潔なること虚空のごとし。
- 所作の利益に自在を得たまへり。ゆゑにわれ、弥陀尊を頂礼したてまつる。
【6】
- 十方に名の聞ゆる菩薩衆、無量の諸魔、つねに讃歎す。
- もろもろの衆生のために、願力をもつて住したまふ。ゆゑにわれ、弥陀尊を頂
- 礼したてまつる。
【7】
- 金を底とし、宝を間へたる池に生ぜる華、善根の成ぜるところの妙台座あり。
- かの座の上にして山王のごとし。ゆゑにわれ、弥陀尊を頂礼したてまつる。
【8】
- 十方より来れるところのもろもろの仏子、神通を顕現して安楽に至り、
- 尊顔を瞻仰してつねに恭敬す。ゆゑにわれ、弥陀尊を頂礼したてまつる。
【9】
- 諸有は無常・無我等なり。また水月・電の影・露のごとし。
- 衆のために法を説くに名字なし。ゆゑにわれ、弥陀尊を頂礼したてまつる。
【10】
- かの尊の仏刹には悪の名なし。また、女人と悪道との怖れなし。
- 衆人、心を至してかの尊を敬ふ。ゆゑにわれ、弥陀尊を頂礼したてまつる。
【11】
- かの尊の無量方便の境には、諸趣と悪知識あることなし。
- 往生すれば、退せずして菩提に至る。ゆゑにわれ、弥陀尊を頂礼したてまつる。
【12】
- われ、かの尊の功徳の事を説くに、衆善無辺にして海水のごとし。
- 獲るところの善根清浄なれば、衆生に回施してかの国に生ぜしめん。