七箇条の御起請文
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以下は『西方指南抄』から
一。普告于予門人念仏上人等
あまねく予(わが)門人念仏上人等に告げたまわく。
可停止未窺一句文。奉破真言止観。謗余仏菩薩事
いまだ一句の文も窺わず、真言・止観を破し、余仏・菩薩を謗じたてまつることを停止(ちょうじ)すべき。
右至立破道者。学生之所経也。非愚人之境界。
右、破するに道を立つるに至るは学生の経(ふ)るところなり。愚人の境界にあらず。
加之誹謗正法免除弥陀願。其報当堕那落。豈非痴闇之至哉
しかのみならず誹謗正法、弥陀(の)願に免除せられたり。この報(しらせ)まさに那落に堕す、あに痴闇のいたりに非ずや。
一。可停止以無智身対有智人。遇別行輩好致諍論事
無智の身をもって有智の人に対(むか)い、別行の輩らに遇いて、好みて諍論をいたすこと停止すべき。
右論義者。是智者之有也。更非愚人之分。又諍論之処。諸煩悩起。智者遠離之百由句也。況於一向念仏行之人乎
右の論義は、これ智者の有なり。さらに愚人の文には非ず。また、諍論のところには、もろもろの煩悩おこる、智者これを遠離すること百由句なり。いわんや一向念仏行の人においておや。
一。可停止対別解別行人。以愚痴偏執心。傋当棄置本業強嫌喧之事
別解別行の人にむかいて、愚痴偏執の心をもって、まさに本業を棄置、しいてこれを嫌喧すべしということを停止すべき。
右修道之習。只各勤敢不遮余行。西方要決云。別解別行者。総起敬心。若生軽慢。得罪無窮 云云 何背此制哉
右、修道の習。ただそれぞれ勤むるにあえて余行を遮せず。西方要決のいわく、別解別行者は、すべて敬心を起こせ、もし軽(驕)慢を生ぜば罪を得んこと窮まり無しと。何ぞこの制に背かんや。
一。可停止於念仏門号無戒行。専勧婬酒食肉。適守律儀者名雑行。憑弥陀者本願者説勿恐造悪事
念仏門において戒行無しと号して、もっぱら婬・酒・食肉をすすめ、律儀を守るものを雑行と名づく。弥陀の本願を憑む者は、造悪を恐るることなかれということを停止すべし。
右戒是仏法大地也。衆行雖区同専之。是以善導和尚挙目不見女人。此行状之趣過本律制。浄業之類不順之者。総失如来之遺教。別背祖師之旧跡。旁無拠者歟
右、戒はこれ仏法の大地なり。衆行まちまちなりといえども同じくこれを専らす。これをもって善導和尚目をあげて女人を見ず。この行状のおもむき本律の制、浄業のたぐいに過ぎたり。これに順ぜずばすべて如来の遺教を忘れたり。別しては祖師の旧跡に背く。旁(かたがた)、よるところ無き者かと。
一。可停止未弁是非痴人。離聖教非師説。恐述私義妄企諍論。被咲智者迷乱愚人事
いまだ是非をわきまえず痴人、聖教をはなれ師説にあらず、恐くは私義を述べみだりに諍論をくわだて知者に笑わる、愚人を迷乱することを停止すべし。
右無智大天。此朝再誕。猥述邪義。既同九十五種異道。尤可悲之
右、無知の大天(魔)、この朝に再誕してみだりがわしく邪義を述ぶ。すでに九十五種の異道に同じ、もっともこれを悲しむべし。
一。可停止以痴鈍身殊好唱導。不知正法説種種邪法。教化無智道俗事
痴鈍の身をもって、ことに唱導を好み、正法を知らずして種種の邪法を説き、無知の道俗を教化することを停止すべき。
右無解作師。是梵網之制戒也。黒闇之類欲顕己才。以浄土教爲芸能。貪名利望檀越。恐成自由之妄説狂惑世間人。誑法之過殊重。是輩非国賊乎
右、解(さとり)なくして師となるは、これ梵網の制戒なり。黒闇のたぐい己の才をあらわさんと欲うて、浄土教をもって芸能となし、名利を貪し檀越を望む。恐らくは自由の妄説をなして世間の人を狂惑せむ。誑法のとが、ことのほか重し、この輩は国賊に非ずや。
一。可停止自説非仏教邪法爲正法。偽号師範説事
自ら仏教にあらざる邪法を説きて正法となし、偽りて師範の説と号すことを停止すべき。
右各雖一人。説所積爲予一身衆悪。汚弥陀教文。揚師匠之悪名。不善之甚無過之者也
右、それぞれ一人なりといえども、つめるところ予(わが)一身の為なりと説く。衆悪をして弥陀の教文をけがす師匠の悪名を揚ぐ。不善のはなはだしきこと、これにすぎたること無きものなり。
以前七箇条甄録如斯。一分学教文弟子等者。頗知旨趣。年来之間雖修念仏。随順聖教。敢不逆人心。無驚世聴。因茲于今三十箇年。無爲
もって前の七箇条甄録かくのごとし。一分の教文を学ばん弟子らは、すこぶる旨趣を知りて年来の間、念仏を修すといえども聖教に随順してあえて人心にたがわず、世にきこえを驚かすことなかれ。これによって今に三十箇年、無爲なり。
渉日月。而至近王。此十箇年以後無智不善輩。時時到来。非啻失弥陀浄業。又汚穢釈迦遺法。何不加[火+向]誡乎。
日月をわたり、近き王に至るまでこの十箇年より以後、無智不善の輩、時時到来す。
ただ弥陀の浄業を失するのみにあらず、また釈迦の遺法を汚穢する、何ぞ[火+向](あきらかに)誡を加えざらんや。
此七箇条之内。不当之間。巨細事等多。具難註述。総如此等之無方。慎不可犯。
この七箇条のうち、不当の間、巨細の事ら多し。つぶさに註述しがたし。すべてこのごときらの無方、慎んで犯すべからず。
此上猶背制法輩者。是非予門人。魔眷属也。更不可来草菴。自今以後。各随聞及。必可被触之。
このうえなお制法に背く輩は、これ予が門人に非ず、魔の眷属なり。さらに草菴に来るべからず。
自今以後、おのおの聞きおよばむに随って、必ずこれを触れかぶるべし。
余人勿相伴。若不然者。是同意人也。
余人あい伴うことなかれ。もししからばこれ同意の人なり。
彼過如作者。不能瞋同法恨師匠。自業自得之理。只在己心(身)而已。是故今日催四方行人。集一室告命。
かの過をなす者のごときは、同法を瞋り師匠を恨むことあたわず、自業自得のことわり、ただ己が身にありならくのもと。このゆえに今日、四方の行人をもよおして、一室に集めて告命す。
僅雖有風聞。慥不知誰人失。拠于沙汰愁歎遂年序。非可黙止。
わずかに風聞ありといえども、たしかに誰の人のとがと知らず、沙汰によって愁歎す、 年序をおくる、もだす止むべきに非ず。
先随力及所迴禁遏之計也。仍録其趣示門葉等之状如件
先に力の及ぶに随うて禁遏のはかりごとをめぐらすところなり。よって趣を録して門葉等に示す状、くだんのごとし。
元久元年十一月七日 沙門源空
信空 感聖 尊西 証空 源智 行西 聖蓮 見仏 道豆 導西 寂西 宗慶 西縁 親蓮 幸西 住蓮 西意 仏心 源蓮 蓮生 善信 行空 已上
已上二百余人連署了