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「讃阿弥陀仏偈 (七祖)」の版間の差分

出典: 浄土真宗聖典『ウィキアーカイブ(WikiArc)』

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:釈迦[[無礙の大弁才]]をもつて、もろもろの仮令を設けて少分を示し、
 
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:道場樹の六根に対するを蒙り、すなはち成仏に至るまで根清徹なり。
 
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:この樹の威徳の由来するところ、みなこれ如来(阿弥陀仏)[[五種の力]]なり。
 
:この樹の威徳の由来するところ、みなこれ如来(阿弥陀仏)[[五種の力]]なり。

2010年5月16日 (日) 16:18時点における版

曇鸞大師が主に『大経』によって阿弥陀仏とその聖衆、および国土の荘厳相を讃嘆された七言一句の偈頌(詩句)である。

 内容の上から本書を大別すると、総讃・別讃・結讃の三つの部分よりなっていると考えられる。まず総讃の部分では、浄土の方処を西方安楽土と指定し、仏を阿弥陀と標して、曇鸞大師自身の帰命の意を示し、阿弥陀仏の光寿二無量の徳を讃嘆する。これにつづく別讃は、本書の中心部分で、阿弥陀仏・聖衆・国土の三種荘厳を詳しく讃嘆したものである。とくに十二光の名を釈して阿弥陀仏の徳を讃じている点は曇鸞大師の創意によるものであり、教学の上からも注目される。最後の結讃の部分では、相承の本師であるところの龍樹菩薩を讃じて、本書製作の意趣を明かし、阿弥陀一仏に帰するゆえんを示して、一部の結びとしている。


讃阿弥陀仏偈

   讃阿弥陀仏偈

                     曇鸞法師作

 南無阿弥陀仏{釈して無量寿と名づく。『経』(大経)に傍へて奉讃す。また安養ともいふ。

【1】

現に西方この界を去ること、十万億刹の安楽土にまします。
仏世尊を阿弥陀と号けたてまつる。われ往生せんと願じて帰命し礼したてまつる。

【2】

成仏よりこのかた十劫を歴たまへり。寿命まさに量りあることなし。
法身の光輪法界にあまねくして、世の盲冥を照らす。ゆゑに頂礼したてまつる。

【3】

智慧の光明量るべからず。ゆゑに仏をまた無量光と号けたてまつる。
有量の諸相光暁を蒙る。このゆゑに真実明を稽首したてまつる。

【4】

解脱の光輪限斉なし。ゆゑに仏をまた無辺光と号けたてまつる。

光触を蒙るもの有無を離る。このゆゑに平等覚を稽首したてまつる。

【5】

光雲無礙にして虚空のごとし。ゆゑに仏をまた無礙光と号けたてまつる。
一切の有礙光沢を蒙る。このゆゑに難思議を頂礼したてまつる。

【6】

清浄の光明対ぶものあることなし。ゆゑに仏をまた無対光と号けたてまつる。
この光に遇ふもの業繋除こる。このゆゑに畢竟依を稽首したてまつる。

【7】

仏光照曜すること最第一なり。ゆゑに仏をまた光炎王と号けたてまつる。
三塗の黒闇光啓を蒙る。このゆゑに大応供を頂礼したてまつる。

【8】

道光明朗にして、色超絶したまへり。ゆゑに仏をまた清浄光と号けたてまつる。
一たび光照を蒙れば、罪垢除こりてみな解脱を得。ゆゑに頂礼したてまつる。

【9】

慈光はるかに被らしめ、安楽を施したまふ。ゆゑに仏をまた歓喜光と号けたてまつる。
光の至るところの処法喜を得。大安慰を稽首し頂礼したてまつる。

【10】

仏光よく無明の闇を破す。ゆゑに仏をまた智慧光と号けたてまつる。
一切諸仏・三乗衆、ことごとくともに歎誉したまへり。ゆゑに稽首したてまつる。

【11】

光明一切の時にあまねく照らす。ゆゑに仏をまた不断光と号けたてまつる。
光力を聞くがゆゑに、心断えずしてみな往生を得。ゆゑに頂礼したてまつる。

【12】

その光仏を除きてはよく測るものなし。ゆゑに仏をまた難思議と号けたてまつる。
十方諸仏往生を歎じ、その功徳を称したまへり。ゆゑに稽首したてまつる。

【13】

神光、相を離れたれば、名づくべからず。ゆゑに仏をまた無称光と号けたてまつる。
光によりて成仏したまへば、光赫然たり。諸仏の歎じたまふところなり。ゆゑに頂礼したてまつる。

【14】

光明照曜すること日月に過ぎたり。ゆゑに仏を超日月光と号けたてまつる。
釈迦仏歎じたまふもなほ尽きず。ゆゑにわれ無等等を稽首したてまつる。

【15】

阿弥陀仏の初会の衆は、声聞・菩薩の数無量なり。
神通巧妙にして算ふることあたはず。このゆゑに広大会を稽首したてまつる。

【16】

安楽の無量の摩訶薩は、みなまさに一生にして仏処を補ふべし。
その本願の大弘誓をもつて、あまねくもろもろの衆生を度脱せんと欲するを除く。
これらの宝林功徳聚を、一心に合掌し頭面をもつて礼したてまつる。

【17】

安楽国土のもろもろの声聞は、みな光一尋にして流星のごとし。
菩薩の光輪は四千里にして、秋の満月の紫金に映ずるがごとし。
仏の法蔵を集めて衆生のためにす。ゆゑにわれ大心海を頂礼したてまつる。

【18】

また観世音・大勢至は、もろもろの聖衆において最第一なり。

慈光大千界を照曜し、仏の左右に侍して神儀を顕す。
もろもろの有縁を度してしばらくも息まざること、大海の潮の時を失せざるがごとし。
かくのごとき大悲(観音)・大勢至を、一心に稽首し頭面をもつて礼したてまつる。

【19】

それ衆生ありて安楽に生ずれば、ことごとく三十有二相を具す。
智慧満足して深法に入る。道要を究暢して障礙なし。
根の利鈍に随ひて忍を成就す。三忍乃至不可説なり。
宿命五通つねに自在にして、仏に至るまで雑悪趣に更らず。
他方の五濁の世に生じて、示現して同じく大牟尼(釈尊)のごとくなるを除く。
安楽国に生じて大利を成ず。このゆゑに心を至して頭面をもつて礼したてまつる。

【20】

安楽の菩薩は仏のを承けて、一念のあひだに十方に詣る。
算数すべからざる仏世界にして、もろもろの如来を恭敬し供養したてまつる。

華・香・伎楽、念に従ひて現じ、宝蓋・幢幡、意に随ひて出づ。
珍奇なること世に絶れてよく名づくることなし。散華して殊勝の宝を供養したてまつれば、
化して華蓋となり、光晃耀し、香気あまねく薫じてあまねからざるはなし。
華蓋の小なるものも四百里なり。すなはちあまねく一仏界を覆ふことあり。
その前後に随ひて次いで化し去る。このもろもろの菩薩みな欣悦す。
虚空のなかにおいて天楽を奏し、徳を雅讃し、仏慧を頌揚す
経法を聴受して供養しをはりて、いまだ食せざる前に虚に騰りて還る。
神力自在にして測るべからず。ゆゑにわれ無上道を頂礼したてまつる。

【21】

安楽仏国のもろもろの菩薩、それ宣説すべきことは智慧に随ふ。
おのが万物において我所を亡ず。浄きこと蓮華の塵を受けざるがごとし。
往来進止汎べる舟のごとし。利安を務めとなして適莫を捨つ。

かれもおのれも空のごとくして二想を断ず。智慧の炬を燃して長夜を照らす。
三明六通みなすでに足れり。菩薩の万行心眼を貫く。
かくのごとき功徳辺量なし。このゆゑに心を至して頭面をもつて礼したてまつる。

【22】

安楽の声聞・菩薩衆、人天、智慧ことごとく洞達せり。
身相の荘厳殊異なし。ただ他方に順ずるがゆゑに名を列ぬ。
顔容端正にして比ぶべきなし。精微妙躯にして人天にあらず。
虚無の身無極の体なり。このゆゑに平等力を頂礼したてまつる。

【23】

敢みてよく安楽国に生ずることを得れば、みなことごとく正定聚に住す。
邪定・不定その国になし。諸仏ことごとく讃じたまふ。ゆゑに頂礼したてまつる。

【24】

あらゆるもの、阿弥陀の徳号を聞きて、信心歓喜して聞くところを慶び、
すなはち一念に曁ぶまで心を至すもの、回向して生ぜんと願ずればみな

生ずることを得。
ただ五逆と謗正法とを除く。ゆゑにわれ頂礼して往生を願ず。

【25】

安楽の菩薩・声聞の輩、この世界において比方なし。
釈迦無礙の大弁才をもつて、もろもろの仮令を設けて少分を示し、
最賤の乞人を帝王に並べ、帝王をまた金輪王に比ぶ。
かくのごとく展転して六天に至る。次第してあひ形すことみな始めのごとし。
天の色像をもつてかれに喩ふるに、千万億倍すともその類にあらず。
みなこれ法蔵願力のなせるなり。大心力を稽首し頂礼したてまつる。

【26】

天・人一切須むるところあれば、欲に称はざるはなし。念に応じて至る。
一宝・二宝・無量宝、心に随ひて受用の具を化造す。
堂宇・飲食ことごとくかくのごとし。ゆゑにわれ無称仏を稽首したてまつる。

【27】

もろもろの往生するもの、ことごとく清浄の色身を具足して、比ぶべきなし。

神通功徳および宮殿・服飾の荘厳は六天のごとし。
応器の宝鉢自然に至り、百味の嘉餚たちまちすでに満つ。
色を見、香りを聞き、意に食せんとすれば、忽然として飽足し適悦を受く。
味はふところ清浄にして着するところなし。事已れば化し去り、須むればまた現ず。
晏安たる快楽は泥洹に次し。このゆゑに心を至して頭面をもつて礼したてまつる。

【28】

十方仏土の菩薩衆およびもろもろの比丘、安楽に生ずるもの、
無量無数にして計るべからず。已生・今生・当もまたしかなり。
みなかつて無量の仏を供養し、百千堅固の法を摂取す。
かくのごとき大士ことごとく往生す。このゆゑに阿弥陀を頂礼したてまつる。

【29】

もし阿弥陀仏の号を聞きて、歓喜し讃仰し、心帰依すれば、
下一念に至るまで大利を得。すなはち功徳の宝を具足すとなす。

たとひ大千世界に満てらん火をも、またただちに過ぎて仏の名を聞くべし。
阿弥陀を聞けば、また退かず。このゆゑに心を至して稽首し礼したてまつる。

【30】

神力無極の阿弥陀は、十方無量の仏の歎じたまふところなり。
東方恒沙の諸仏の国、菩薩無数にしてみな往覲す。
また安楽国の菩薩・声聞・もろもろの大衆を供養し、
経法を聴受して道化を宣ぶ自余の九方もまたかくのごとし。
釈迦如来、を説きて、無量の功徳を頌したまふ。ゆゑに頂礼したてまつる。

【31】

諸来の無量菩薩衆、徳本を殖ゑんがために虔恭を致す。
あるいは天楽を奏して仏を歌歎し、あるいは仏慧の世間を照らすを頌す。
あるいは天の華・衣をもつて供養し、あるいは浄土を覩て等願を興す。
かくのごとき聖衆ことごとく現前し、八梵声をもつて仏記を授くるを蒙る。

一切の菩薩願行を増す。ゆゑにわれ婆伽婆を頂礼したてまつる。

【32】

聖主世尊(阿弥陀仏)説法の時、大衆七宝の堂に雲集す。
仏の開示を聴きてことごとく悟入し、歓喜充遍してみなを得。
時に四面より清風起り、宝樹を撃動して妙響を出す。
和韻清徹にして糸竹に過ぎ、金石に踰えて倫比なし。
天華繽紛として香風を逐ひ、自然の供養つねにして息まず。
諸天また天の華香を持し、百千の伎楽もつて敬ひを致す。
かくのごとき功徳三宝の聚なり。ゆゑにわれ想を運らして講堂を礼したてまつる。

【33】

妙土広大にして数限を超ゆ。自然の七宝をもつて合成するところなり。
仏の本願力より荘厳起る。清浄大摂受を稽首したてまつる。

【34】

世界光曜すること妙にして殊絶す。適悦晏安として四時なし。
自利他利の力円満したまふ。方便巧荘厳を帰命したてまつる。
宝地澄静にして平らかなること掌のごとく、山・川・陵・谷の阻あることなし。

もし仏の神力をもつて須むればすなはち見る。不可思議尊を稽首したてまつる。

【35】

道樹の高さ四百万里、周囲由旬五千あり。
枝葉布くこと里二十万なり。自然の衆宝をもつて合成するところなり。
月光摩尼海輪宝、衆宝の王をもつて荘厳す。
周匝してあひだに垂るる宝の瓔珞は、百千万種の色に変異す。
光焔照曜すること千日に超え、無極の宝網その上に覆へり。
一切の荘厳随ひて応現す。道場樹を稽首し頂礼したてまつる。

【36】

微風、樹を吹きて法音を出し、あまねく十方諸仏のに流る。
この音を聞くもの深法忍を得、仏道を成ずるに至るまで苦に遭はず。
神力広大にして量るべからず。道場樹を稽首し頂礼したてまつる。

【37】

樹香・樹色・樹音声・樹触・樹味および樹法、
六情遇へば法忍を得。ゆゑにわれ道場樹を頂礼したてまつる。

【38】

道場樹の六根に対するを蒙り、すなはち成仏に至るまで根清徹なり。
音響・柔順・無生忍、力の浅深に随ひてことごとく証を得。

この樹の威徳の由来するところ、みなこれ如来(阿弥陀仏)五種の力なり。
神力と本願および満足と、明了と堅固と究竟願となり。
慈悲方便称るべからず。真無量を帰命し稽首したてまつる。

【39】

世の帝王より六天に至るまで、音楽うたた妙にして八種あり。
展転して勝るること千億万倍、宝樹の音の麗しきこと倍してまたしかなり。
また自然の妙なる伎楽あり。法音清和にして心神を悦ばしめ、
哀婉雅亮にして十方に超ゆ。ゆゑにわれ清浄楽を稽首したてまつる。

【40】

七宝の樹林世界にあまねし。光耀鮮明にしてあひ映発す。
華・菓・枝・葉たがひになる。本願功徳聚を稽首したてまつる。

【41】

清風時々に宝樹を吹くに、五の音声を出して宮商和す。
微妙の雅曲自然に成ず。ゆゑにわれ清浄勲を頂礼したてまつる。

【42】

その土広大にして崖際なく、衆宝の羅網あまねく上に覆へり。
金縷珠璣、奇異の珍、不可名の宝をもつて校飾となす。
四面に周匝して宝鈴を垂る。調風吹き動かして妙法を出す。

和雅の徳香つねに流布せり。聞くもの塵労の習起らず。
この風身に触るれば快楽を受くること、比丘の滅尽定を得るがごとし。
風吹きて華を散らし、仏土に満つ。色の次第に随ひて雑乱せず。
華質柔軟にして列芬芳たり。足その上を履むに下ること四指。
足を挙ぐる時に随ひてまた故のごとし。用ゐをはれば地開け、没して遺ることなし。
その時節に随ひて華六返す。不可議の報なり。ゆゑに頂礼したてまつる。

【43】

衆宝の蓮華世界に盈つ。一々の華に百千億の葉あり。
その葉の光明の色無量なり。朱・紫・紅・緑五色に間はり、
煒燁煥爛として日光より曜く。このゆゑに一心に稽首し礼したてまつる。

【44】

一々の華のなかより出すところの光、三十六百有千億なり。
一々の華のなかに仏身あり。多少また出すところの光のごとし。
仏身の相好金山のごとし。一々また百千の光を放ち、
あまねく十方のために妙法を説き、おのおの衆生を仏道に安んず。
かくのごとき神力辺量なし。ゆゑにわれ阿弥陀を帰命したてまつる。

【45】

楼閣・殿堂工の造にあらず。七宝の彫綺化してなるところなり。
明月珠璫交露の縵あり。おのおの浴池あり、形あひ称ふ。
八功徳の水池のなかに満てり。色味香潔にして甘露のごとし。
黄金の池には白銀の沙あり。七宝の池の沙たがひにかくのごとし。
池岸の香樹上に垂れ布き、栴檀芬馥としてつねに馨りを流す。
天華彩璨として映飾をなす。水上熠燿として景雲のごとし。
無漏の依果、思議しがたし。このゆゑに功徳蔵を稽首したてまつる。

【46】

菩薩・声聞宝池に入れば、意に随ひて浅深欲するところのごとし。
もし身に灌がんと須むれば、自然に注ぐ。旋復せしめんと欲すれば、水すなはち還る。
調和冷暖にして称はざるはなし。開け体悦びて、心垢を蕩かす。
清明澄潔にして形なきがごとし。宝沙映徹して深からざるがごとし。
澹淡として回転りてあひ注灌す。嬋約容予にして人の神を和らぐ。
微波無量にして妙響を出す。その所応に随ひて法語を聞く。
あるいは三宝の妙章を聞き、あるいは寂静・空・無我を聞き、

あるいは無量の波羅蜜・・不共法・諸通慧を聞き、
あるいは無作・無生忍、乃至甘露灌頂の法を聞く。
根の性欲に随ひてみな歓喜す。三宝の相と真実の義に順ひて、
菩薩・声聞の所行の道、ここにおいて一切ことごとくつぶさに聞く。
三塗苦難の名永く閉ぢ、ただ自然快楽の音のみあり。
このゆゑにその国を安楽と号く。頭面をもつて無極尊を頂礼したてまつる。

【47】

本師龍樹摩訶薩、形を像始に誕じて頽綱を理へ
邪扇を関閉して正轍を開く。これ閻浮提の一切の眼なり。
伏して承るに尊(龍樹)、歓喜地をりて、阿弥陀に帰して安楽に生ぜり。

【48】

たとへば動けば雲かならず随ふがごとし。閻浮提に百卉を放ち舒ぶ。
南無慈悲龍樹尊、心を至し帰命し頭面をもつて礼したてまつる。

【49】

われ無始より三界に循りて、虚妄輪のために回転せらる。
一念一時に造るところの業、足六道に繋がれ三塗に滞まる。
ただ願はくは慈光、われを護念して、われをして菩提心を失せざらしめたまへ。

わが仏慧功徳を讃ずる音、願はくは十方のもろもろの有縁に聞かしめて、
安楽に往生することを得んと欲するもの、あまねくみな意のごとくにして障礙なからしめん。
あらゆる功徳もしは大少、一切に回施してともに往生せん。
不可思議光に南無し、一心に帰命し稽首して礼したてまつる。

【50】

十方三世の無量慧、同じく一如に乗じて正覚を号したまふ。
二智円満して道平等なり。摂化縁に随ふがゆゑに若干なり。
われ阿弥陀の浄土に帰するは、すなはちこれ諸仏の国に帰命するなり。
われ一心をもつて一仏を讃ず。願はくは十方無礙人にあまねからん。
かくのごとき十方無量の仏、ことごとくおのおの心を至して頭面をもつ
て礼したてまつる。

 讃は一百九十五、礼は五十一拝。




讃阿弥陀仏偈