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白楽天

出典: 浄土真宗聖典『ウィキアーカイブ(WikiArc)』

燕詩示劉叟

 燕の詩  劉叟に示す[1]

           白居易

梁上有雙燕 
梁上(りゃうじゃう)に 双燕(さうえん) 有り。
翩翩雄與雌。
翩翩(へんぺん)たり 雄と雌と。
銜泥兩椽間
泥を(ふく)む 両椽(りゃうてん)の間、
一巣生四兒。
一巣に 四児 生む。
四兒日夜長
四児 日夜に 長じ、
索食聲孜孜。
食を (もと)むる 声 孜孜(しし)たり。
青蟲不易捕
青虫 捕へ ()すからざるも、
黄口無飽期。
黄口 飽期 無し。
觜爪雖欲弊
觜爪(しさう) (つか)れんと(ほっ)すと (いへど)も、
心力不知疲。
心力 疲るるを 知らず。
須臾千來往
須臾(しゅゆ)に 千たび 来往し、
猶恐巣中飢。
猶ほ 巣中の飢を 恐るるがごとし。
辛勤三十日 
辛勤 三十日、
母痩雛漸肥。
母 痩せて 雛 (やうや)く 肥ゆ。
喃喃敎言語 
喃喃(なんなん)として 言語を 教へ、
一一刷毛衣。
一一 毛衣を (ぬぐ)ふ。
一旦羽翼成 
一旦 羽翼 成りて、
引上庭樹枝。
(ひき)ゐて 庭樹の枝に上る。
舉翅不回顧 
(つばさ)()げ 回顧せずして、
隨風四散飛。
風に(したが)ひ 四散して飛ぶ。
雌雄空中鳴 
雌雄 空中に 鳴き、
聲盡呼不歸。
声 尽くるまで 呼べども 帰らず。
卻入空巣裏 
(しりぞ)きて 空巣の(うち)に 入り、
啁啾終夜悲。
啁啾(ちうしう) 終夜 悲しむ。
燕燕爾勿悲 
燕や 燕 (なんぢ) 悲しむ (なか)れ、
爾當返自思。
(なんぢ) (まさ)に 返って(みづか)ら思ふべし。
思爾爲雛日 
思へ  (なんぢ) 雛 ()りし日、
高飛背母時。
高飛して 母に (そむ)きし時を。
當時父母念 
当時の 父母の(おもひ)
今日爾應知。
今日 (なんぢ) (まさ)に知るべし。

燕詩示劉叟


  1. 劉叟の息子が老いた親を置いて家を出て行き、帰ってこなくなったことについて、詠った。