正像末和讃(国宝本)
出典: 浄土真宗聖典『ウィキアーカイブ(WikiArc)』
Ⅱ-0467康元二歲丁巳二月九日の夜 寅時夢告にいはく Ⅱ-0468(三六) 彌陀の本願信ずべし 本願信ずるひとはみな 攝取不捨の利益にて 无上覺おばさとるなり この和讚を、ゆめにおほせをかぶりて、うれしさにかきつけまいらせたるなり。 正嘉元年丁巳閏三月一日 愚禿親鸞W八十五歲R書之 Ⅱ-0469(一三) 釋尊かくれましまして 二千餘年になりたまふ 正像の二時はおわりにき 如來の遺弟悲泣せよ Ⅱ-0470(八) 像季・末法の衆生の 行證かなわぬときなれば 釋迦の遺法ことごとく 龍宮にすでにいりたまふ (三三) 正像末の三時には 彌陀の本願ひろまれり 像季・末法のこのよには 諸善龍宮にいりたまふ Ⅱ-0471(一四) 『大集經』にのたまはく このよは第五の五百年 鬪諍堅固なるゆへに 白法隱滯したまへり Ⅱ-0472(二九) 劫濁うつるしるしには 有情やうやく身小なり 衆生濁惡蛇龍にて 惱濁塵數のごとくなり (三〇) 愛憎違順することは 高峰岳山にことならず 見濁叢林棘刺のごとし 背正歸邪はさかりなり Ⅱ-0473(三一) 命濁中夭刹那にて 流轉生死は須臾なり 如來の悲願を信ぜずは 出離その期もなかるべし Ⅱ-0474(三二) 九十五種よをけがす 唯佛一道きよくます 菩提に出到してのみぞ 火宅に還來自然なる Ⅱ-0476(一五) 正法の時機とおもへども 底下の凡愚となれるみは 淸淨眞實のこゝろなし 發菩提心いかゞせむ (一六) 自力聖道の菩提心 こゝろもことばもおよばれず 常沒流轉の凡愚は いかでか發起せしむべき Ⅱ-0477(一七) 三恆河沙の諸佛の 出世のみもとにありしとき 大菩提心おこせども さとりかなはで流轉せり (七) 像末五濁のよとなりて 釋迦の遺敎かくれしむ 彌陀の悲願はひろまりて 念佛往生とげやすし Ⅱ-0478(一八) 淨土の大菩提心は 願作佛心をすゝめしむ すなわち願作佛心を 度衆生心となづけたり Ⅱ-0479(一九) 度衆生心といふことは 如來智願の廻向なり 廻向の信樂うるひとは 大般涅槃をさとるなり (二〇) 如來の廻向に歸入して 願作佛心をうるひとは 自力の廻向をすてはてゝ 利益有情はきわもなし Ⅱ-0480(二一) 彌陀の智願海水に 他力の信水いりぬれば 眞實報土のならひにて 煩惱・菩提一味なり (二二) 如來二種の廻向を ふかく信ずる人はみな 等正覺にいたるゆへ 憶念の心はたえぬなり Ⅱ-0481(二三) 彌陀智願の廻向の 信樂まことにうるひとは 攝取不捨の利益ゆへ 等正覺にはいたるなり (一) 五十六億七千萬 彌勒菩薩はとしをへむ 念佛往生信ずれば このたびさとりはひらくべし Ⅱ-0482(二) 念佛往生の願により 等正覺にいたる人 すなわち彌勒におなじくて 大般涅槃をさとるべし (三) 眞實信心をうるゆへに すなわち定聚にいりぬれば 補處の彌勒におなじくて 无上覺を證すべし Ⅱ-0483(二四) 像法のときの智人も 自力の諸敎をさしおきて 時機相應の法なれば 念佛門にぞいりたまふ (五) 彌陀の名號となえつゝ 信心まことにうるひとは 憶念の心つねにして 佛恩報ずるおもひあり Ⅱ-0484(六) 五濁惡世の衆生の 選擇本願信ずれば 不可稱不可說不可思議の 功德は信者のみにみてり (二五) 无㝵光佛ののたまはく 未來の有情利せむとて 大勢至菩薩に 智慧の念佛さづけしむ Ⅱ-0485(二六) 濁世の有情をあわれみて 勢至念佛すゝめしむ 信心のひとを攝取して 淨土に歸入せしめけり (一〇) 釋迦・彌陀の慈悲よりぞ 願作佛心はえしめたる 信心の智慧にいりてこそ 佛恩報ずるみとはなれ Ⅱ-0486(一一) 智慧の念佛うることは 法藏願力のなせるなり 信心の智慧なかりせば いかでか涅槃をさとらまし (二七) 无明長夜の燈炬なり 智眼くらしとかなしむな 生死大海の船筏なり 罪障おもしとなげかざれ Ⅱ-0487(二八) 佛力无窮にましませば 罪障深重もおもからず 佛智无邊にましませば 散亂放逸もすてられず (三四) 如來の作願をたづぬれば 苦惱の衆生をすてずして 廻向を首としたまひて 大悲心おば成就せり Ⅱ-0488(三七) 眞實信心の稱名は 如來廻向の法なれば 不廻向となづけてぞ 自力の稱念きらはるゝ Ⅱ-0497(九) 三朝淨土の大師等 哀愍攝受したまひて 眞實信心すゝめしめ 定聚のくらゐに歸せしめよ Ⅱ-0498(三五) 如來大悲の恩德は 身を粉にしても報ずべし 師主知識の恩德も 骨をくだきても謝すべし 已上三十四首 Ⅱ-0515(三九) 上宮太子方便し 和國の有情をあわれみて 如來の悲願弘宣せり 慶喜奉讚せしむべし Ⅱ-0524(四〇) 罪業もとより所有なし 妄想顚倒よりおこる 心性みなもときよければ 衆生すなわち佛なり Ⅱ-0526(四一) 无明法性ことなれど 心はすなわちひとつなり この心すなわち涅槃なり この心すなわち如來なり (三八) 大日本國粟散王 佛敎弘興の上宮皇 恩德ふかくひろくます 奉讚たえずおもふべし