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出典: 浄土真宗聖典『ウィキアーカイブ(WikiArc)』

四馬の譬

雜阿含經卷第三十三

如是我聞。一時佛住王舍城迦蘭陀竹園。

かくの如く我聞けり。一時仏、王舍城 迦蘭陀竹園の存せり。

爾時世尊告諸比丘。世有四種良馬。

その時、世尊、諸の比丘に告げたまわく。世に四種の良馬あり。

有良馬駕以平乘。顧其鞭影馳駃 善能 觀察御者形勢。遲速左右隨御者心。是名比丘世間良馬第一之徳。

良馬あり、駕、平乗をもってす。其の鞭影を顧み馳駃、善く能し。御者の形勢を観察し、遅速左右し御者の心に随ふ。是れを比丘、世間の良馬、第一の徳と名づく。

復次比丘。世間良馬 不能顧影而自驚察。然以鞭杖觸其毛尾。則能驚速察御者心。遲速左右。是名世間第二良馬。

復た次に比丘、若しは世間の良馬、影を顧み及び皮毛に触れて能く人の心に随うこと能わず。而も鞭杖を以て小しく皮肉を侵せば、則ち能く驚き察して御者の心に随ひ、遅速左右す。是れを比丘、第二の良馬と名づく。

復次比丘。若世間良馬 不能顧影及觸皮毛能隨人心。而以鞭杖小侵皮肉則能驚察隨御者心。遲速左右。是名比丘第三良馬。

復た次に比丘、若しは世間の良馬、影を顧み及び皮毛に触れて能く人の心に随うこと能わず。而も鞭杖を以て小しく皮肉を侵せば、則ち能く驚き察して御者の心に随ひ、遅速左右す。是れを比丘、第三の良馬と名づく。

復次比丘。世間良馬 不能顧其鞭影及觸皮毛小侵膚肉。乃以鐵錐刺身。徹膚傷骨然後方驚。牽車著路。隨御者心遲速左右。是名世間第四良馬。

復た次に比丘。世間の良馬、其の鞭影を顧みること能はず、及び皮毛に触れ小しく膚肉を侵すものなり。乃ち鉄錐を以って身を刺し、膚を徹し骨を傷け然る後に方(まさ)に驚き、車を牽き路に著き、御者の心に随ひ遅速左右す。是を世間第四の良馬と名づく。

如是於正法律 有四種善男子。何等爲四。謂善男子 聞他聚落有男子女人疾病困苦乃至死。聞已能生恐怖。依正思惟。如彼良馬顧影則調。是名第一善男子於正法律能自調伏。

是のごとくに正法律に於いて四種の善男子あり。何等を四となす。謂く善男子、他の聚落の男子女人ありて、疾病困苦乃至死せるを聞きて、聞き已りて能く恐怖を生じて、正思惟に依る。彼の良馬の影を顧みれば則ち調へるがごとし。是を第一善男子、正法律に於いて能く自ら調伏すと名づく。

復次善男子 不能聞他聚落若男若女老病死苦。能生怖畏依正思惟。見他聚落 若男若女老病死苦。則生怖畏依正思惟。如彼良馬觸其毛尾能速調伏隨御者心。是名第二善男子於正法律能自調伏。

復た次に善男子、他の聚落の若しくは男、若しくは女の老病死苦を聞きて、能く怖畏を生じ正思惟に依ること能はず。他の聚落の若しくは男、若しくは女の老病死苦を見て、則ち怖畏を生じ正思惟に依る。彼の良馬の、其の毛尾に觸れ能く速に調伏し御者の心に隨ふがごとし。是を第二善男子、正法律に於いて能く自ら調伏すと名づく。

復次善男子 不能聞見他聚落中男子女人老病死苦。生怖畏心依正思惟。然見聚落城邑 有善知識及所親近老病死苦。則生怖畏依正思惟。如彼良馬觸其膚肉然後調伏隨御者心。是名善男子於聖法律而自調伏。

復た次に善男子、他の聚落中の男子女人の老病死苦を聞見して、怖畏の心を生じて正思惟に依ること能はず。然に聚落城邑の善知識及び親近する所の老病死苦あるを見て、則ち怖畏を生じて正思惟に依る。彼の良馬の、其の膚肉に觸れ、然る後に調伏して御者の心に隨ふがごとし。是を(第三)善男子、聖法律に於いて而も自ら調伏すと名づく。

復次善男子不能聞見他聚落中男子女人及所親近老病死苦。生怖畏心依正思惟。然於自身老病死苦能生厭怖依正思惟。如彼良馬侵肌徹骨然後乃調隨御者心。是名第四善男子於聖法律能自調伏。

復た次に善男子、他の聚落中の男子女人及び親近する所の老病死苦を聞見して、怖畏の心を生じて正思惟に依ること能はず。然るに自身の老病死苦に於いて能く厭怖を生じ正思惟に依る。彼の良馬の、肌を侵し骨を徹し、然る後乃ち調し御者の心に隨ふがごとし。是れを第四善男子、聖法律に於いて能く自ら調伏と名づく。

佛説此經已。諸比丘聞佛所説。歡喜奉行。

仏、この経を説きおわるに、もろもろの比丘、仏の所説を聞きて歓喜し奉行す。