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あい

 むさぼり愛着すること。→貪愛 (信巻 P.249)

 愛欲貪愛(とんない)。 (要集 P.807)


 出典(教学伝道研究センター編『浄土真宗聖典(注釈版)第二版』本願寺出版社)
 出典(教学伝道研究センター編『浄土真宗聖典(注釈版)七祖篇』本願寺出版社)
 区切り線以下の文章は各投稿者の意見であり本願寺派の見解ではありません。


古層に属する仏典である「ブッダの真理のことば(ダンマパダ)」第十六章には、

210、 愛する人と会うな。愛しない人とも会うな。愛する人に会わないのは苦しい。また愛しない人に会うのも苦しい。
211、 それ故に愛する人をつくるな。愛する人を失うのはわざわいである。愛する人も憎む人もいない人々には、わずらいの絆が存在しない。
212、 愛するものから憂いが生じ、愛するものから恐れが生ずる、愛するものを離れたならば、憂いは存在しない。どうして恐れることがあろうか?
213、 愛情から憂いが生じ、愛情から恐れが生ずる。愛情を離れたならば憂いが存在しない。どうして恐れることがあろうか? (岩波文庫 中村元著)

とあるように、仏教においては「愛」という語は迷いの根源として、渇愛貪愛痴愛恩愛などと熟語されて否定的に把握される。明治時代までは愛という語は「性愛」として理解されていたのも仏教からの影響であろう。近代に入り、西洋での語義としての愛(love〔エロスやアガペー〕)という概念が導入され多用な用法が生まれ、愛という語は肯定的にとらえられるようになった。神を一神教の人格神として把握する西欧思想の影響であろう。
もちろん仏教でも愛という語を、愛語、仁愛などと肯定的に使う場合もあるのだが、この場合は仏・菩薩からの苦悩の衆生への慈悲のまなざしをいう語である。
なお、仏教では生死煩悩からの解脱としてのさとりの智慧を目指すので、他者との関係については「慈」と「悲」の三種の三縁をあげ、智慧による無縁の大悲を説く。→三縁


オンライン版 仏教辞典より転送

(skt.) tṛṣṇā तृष्णा、kāma काम、preman प्रेमन्、sneha स्नेह

tṛṣṇā तृष्णा

 人間の最も根源的な欲望。tRSNaaの原義は「渇き」であり、人がのどが渇いているときには、水を飲まないではいられないような衝動があり、それにたとえられる根源的な衝動が人間存在の奥底に潜在している。そこでtRSNaaを「」とか「渇愛」と訳し、ときには「恩愛」とも訳す。
 喉の渇いた人が水を欲しがるような激しい欲望、盲目的な衝動、満足するまでやまない激しい欲望、妄執をいう。
 広義には煩悩を意味し、狭義には貪欲と同じ意味である。

貌(かたち)に好醜あり。是れによりて慢を長じ愛を育す。剃髪し壊色(ゑじき)の衣を著するは慢を伏し愛をやむるのすがたなり    〔慈雲短篇法語

 愛は十二因縁に組み入れられ、第八支となる。前の(感受)により、苦痛を受けるものに対しては憎しみ避けようという強い欲求を生じ、楽を与えるものに対してはこれを求めようと熱望する。苦楽の受に対して愛憎の念を生ずる段階である。

kāma काम

 kāmaはふつう「性愛」「性的本能の衝動」「相擁して離れがたく思う男女の愛」「愛欲」の意味に用いられる。これを「」と表現することが多い。
 仏教では、性愛については抑制を説いたが、後代の真言密教になると、男女の性的結合を絶待視するタントラ教の影響を受けて、仏教教理を男女の性に結びつけて説く傾向が現れ、男女の交会を涅槃そのもの、あるいは仏道成就とみなす傾向さえも見られた。密教が空海によって日本に導入されたときは、この傾向は払拭されたが、平安末期に立川流が現れ、男女の交会を理智不二に当てはめた。性愛を表すのに、愛染という語も、この流れであり、しばしば用いられる。

preman प्रेमन्、sneha स्नेह

 preman, snehaは、他人に対する、隔てのない愛情を強調する。
 子に対する親の愛が純粋であるように、一切衆生に対してそのような愛情を持てと教える。この慈愛の心を以て人に話しかけるのが愛語であり、愛情のこもった言葉をかけて人の心を豊かにし、励ます。この愛の心をもってすべての人々を助けるように働きかけるのが、菩薩の理想である。
 一切衆生に対する愛情の純粋化・理想化されたものを慈悲という。それは仏に成就しているが、一般の人々にも多かれ少なかれ実践できる。

 〔大毘婆沙論巻29〕には、汚れた愛と汚れのない愛との二種があり、前者は貪、後者は信であるという。

 〔大智度論巻72〕には、欲愛法愛の二愛を説いている。欲愛とは妻子などを愛念する貪欲であり、法愛とは一切衆生を慈愛する慈悲心である。