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染香人

出典: 浄土真宗聖典『ウィキアーカイブ(WikiArc)』

ぜんこうにん

 仏の智慧の香に染まった人。念仏の行者をいう。

左訓

①「かうばしき香、身に染めるがごとしといふ」(異本)(浄土 P.577)、(尊号 P.649)
出典(教学伝道研究センター編『浄土真宗聖典(注釈版)第二版』本願寺出版社
『浄土真宗聖典(注釈版)七祖篇』本願寺出版社

区切り線以下の文章は各投稿者の意見であり本願寺派の見解ではありません。


染香人」とは『尊号真像銘文』に『首楞厳経』を引いて『大勢至菩薩御銘文』を著されておられる。

「如染香人身有香気」「隠/顕」染香人の身に香気あるがごとしといふは、かうばしき気、身にある人のごとく、念仏のこころもてる人に勢至のこころをかうばしき人にたとへまうすなり。このゆゑに「此則名曰香光荘厳」「隠/顕」これをすなわち名づけて香光荘厳といふと申すなり。
勢至菩薩の御こころのうちに念仏のこころをもてるを染香人にたとへまうすなり。 (尊号 P.649)

また『勢至讃』では、
(116)

染香人のその身には
 香気あるがごとくなり
 これをすなはちなづけてぞ
 香光荘厳とまうすなる  (浄土 P.577) 

とされ『勢至讃』の末尾に「源空聖人御本地なり」と、法然聖人の本地は勢至菩薩であるとされておられた。
なお当時の貴族は、薫衣香(くのえこう)として衣服に香をたきしめるための薫物 (たきもの)で衣服に香を()()めて匂いを移らせた 。

以下『西方指南抄』の「本願体用事(四箇条問答)」より。

うたがひなく往生すべき道理に住して、南无阿弥陀仏と唱てむ上には、決定往生とおもひをなすべきなり。たとへば、たきものゝ[1]にほひの(くん)ぜる衣を身にきつれば[2]、みなもとはたきものゝにほひにてこそありと云とも、衣のにほひ身に(くん)ずるがゆへに、その人のかうばしかりつると云がごとく、本願薫力のたきものゝ匂(におひ)は、名号の衣に薫じ、またこの名号の衣を一度南无阿弥陀仏とひきゝてむ[3]ものは、名号の衣の(にほひ) 身に薫ずるがゆへに、決定往生すべき人なり。 大願業力の(にほひ)と云は、往生の(にほひ)なり。大願業力の往生の匂、名号の衣よりつたわりて行者の身に薫ずと云道理によりて、『観経』には「若念仏者、当知、此人是人中分陀利華」「隠/顕」もし念仏するものは、まさに知るべし、この人はこれ人中の分陀利華なり。(とく)なり。 (西方指南抄#P--983)

本願の香を名号に(くん)じた名号を称えれば、大願業力による往生決定の匂いが念仏の行者につたわるといふのである。 香は仏教とともに伝来し華・香・灯の三具足の香からきているのであろう。薫衣香や匂袋(においぶくろ)なども仏教の影響であろう。


  1. 〔薫物(たきもの)。衣に薫ずるために焚く香のこと
  2. きつれば。着たならば。
  3. ひきゝてむ。引着(ひききる)。衣・夜具などを引きよせて頭からかぶる。頭からからだ全体をおおうこと。by コトバンク