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「讃阿弥陀仏偈と浄土和讃」の版間の差分

出典: 浄土真宗聖典『ウィキアーカイブ(WikiArc)』

 
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讃阿弥陀仏偈
 
讃阿弥陀仏偈
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2024年11月5日 (火) 16:09時点における最新版

 「弥陀成仏のこのかたは……」ではじまる『浄土和讃』讃阿弥陀仏偈和讃は、「正信念仏偈」とともに浄土真宗の門徒には親しく耳になずんだ和讃である。この『浄土和讃』の「讃阿弥陀仏偈 和讃(阿弥陀仏を讃嘆する偈の和讃)」は、曇鸞大師作の「讃阿弥陀仏偈」の漢讃(漢文による仏徳讃歎の詩)を御開山が日本語化したものである。日本語化したから和讃(日本語での仏徳讃歎)とよぶ。 以下にその漢讃(かんさん)と和讃(わさん)を対照してあるので、『浄土和讃』を拝読し味わうときの参考になれば幸いである。

讃阿弥陀仏偈

   曇鸞法師作

仏荘厳

南無阿弥陀仏{釈名無量寿傍経奉讃亦曰安養

阿弥陀陀仏と国土

【1】

現在西方去此界 十万億刹安楽土
仏世尊号阿弥陀 我願往生帰命礼

現に西方この界を去ること、十万億刹の安楽土にまします。
仏世尊を阿弥陀と号(なづ)けたてまつる。われ往生せんと願じて帰命し礼したてまつる。

光寿二無量の徳

【2】
成仏已来歴十劫 寿命方将無有量
法身光輪遍法界 照世盲冥故頂礼

成仏よりこのかた十劫を歴たまへり。寿命まさに量りあることなし。
法身の光輪法界にあまねくして、世の盲冥を照らす。ゆゑに頂礼したてまつる。
(3)
弥陀成仏のこのかたは
 いまに十劫をへたまへり
 法身の光輪きはもなく
 世の盲冥をてらすなり

十二光

【3】
智恵光明不可量 故仏又号無量光
有量諸相蒙光暁 是故稽首真実明

智慧の光明量るべからず。ゆゑに仏をまた無量光と号けたてまつる。
有量の諸相光暁を蒙る。このゆゑに真実明を稽首したてまつる。

(4)
智慧の光明はかりなし
 有量の諸相ことごとく
 光暁かぶらぬものはなし
 真実明に帰命せよ

【4】
解脱光輪無限斉 故仏又号無辺光
蒙光触者離有無 是故稽首平等覚

解脱の光輪限斉なし。ゆゑに仏をまた無辺光と号けたてまつる。
光触を蒙るもの有無を離る。このゆゑに平等覚を稽首したてまつる。
(5)
解脱の光輪きはもなし
 光触かぶるものはみな
 有無をはなるとのべたまふ
 平等覚に帰命せよ

【5】
光雲無礙如虚空 故仏又号無礙光
一切有礙蒙光沢 是故頂礼難思議

光雲無礙にして虚空のごとし。ゆゑに仏をまた無礙光と号けたてまつる。
一切の有礙光沢を蒙る。このゆゑに難思議を頂礼したてまつる。
(6)
光雲無碍如虚空
 一切の有碍にさはりなし
 光沢かぶらぬものぞなき
 難思議を帰命せよ

【6】
清浄光明無有対 故仏又号無対光
遇斯光者業繋除 是故稽首畢竟依

清浄の光明対ぶものあることなし。ゆゑに仏をまた無対光と号けたてまつる。
この光に遇ふもの業繋除こる。このゆゑに畢竟依を稽首したてまつる。
(7)
清浄光明ならびなし
 遇斯光のゆゑなれば
 一切の業繋ものぞこりぬ
 畢竟依を帰命せよ

【7】
仏光照曜最第一 故仏又号光炎王
三塗黒闇蒙光啓 是故頂礼大応供

仏光照曜すること最第一なり。ゆゑに仏をまた光炎王と号けたてまつる。
三塗の黒闇光啓を蒙る。このゆゑに大応供を頂礼したてまつる。
(8)
仏光照曜最第一
 光炎王仏となづけたり
 三塗の黒闇ひらくなり
 大応供を帰命せよ

【8】
道光明朗色超絶 故仏又号清浄光
一蒙光照罪垢除 皆得解脱故頂礼

道光明朗にして、色超絶したまへり。ゆゑに仏をまた清浄光と号けたてまつる。
一たび光照を蒙れば、罪垢除こりてみな解脱を得。ゆゑに頂礼したてまつる。
(9)
道光明朗超絶せり
 清浄光仏とまうすなり
 ひとたび光照かぶるもの
 業垢をのぞき解脱をう

【9】
慈光遐被施安楽 故仏又号歓喜光
光所至処得法喜 稽首頂礼大安慰

慈光はるかに被らしめ、安楽を施したまふ。ゆゑに仏をまた歓喜光と号けたてまつる。
光の至るところの処法喜を得。大安慰を稽首し頂礼したてまつる。
(10)
慈光はるかにかぶらしめ
 ひかりのいたるところには
 法喜をうとぞのべたまふ
 大安慰を帰命せよ

【10】
仏光能破無明闇 故仏又号智恵光
一切諸仏三乗衆 咸共歎誉故稽首

仏光よく無明の闇を破す。ゆゑに仏をまた智慧光と号けたてまつる。
一切諸仏・三乗衆、ことごとくともに歎誉したまへり。ゆゑに稽首したてまつる
(11)
無明の闇を破するゆゑ
 智慧光仏となづけたり
 一切諸仏三乗衆
 ともに嘆誉したまへり

【11】
光明一切時普照 故仏又号不断光
聞光力故心不断 皆得往生故頂礼

光明一切の時にあまねく照らす。ゆゑに仏をまた不断光と号けたてまつる。
光力を聞くがゆゑに、心断えずしてみな往生を得。ゆゑに頂礼したてまつる。
(12)
光明てらしてたえざれば
 不断光仏となづけたり
 聞光力のゆゑなれば
 心不断にて往生す

【12】
其光除仏莫能測 故仏又号難思議
十方諸仏歎往生 称其功徳故稽首

その光仏を除きてはよく測るものなし。ゆゑに仏をまた難思議と号けたてまつる。
十方諸仏往生を歎じ、その功徳を称したまへり。ゆゑに稽首したてまつる。
(13)
仏光測量なきゆゑに
 難思光仏となづけたり
 諸仏は往生嘆じつつ
 弥陀の功徳を称せしむ

【13】
神光離相不可名 故仏又号無称光
因光成仏光赫然 諸仏所歎故頂礼

神光、相を離れたれば、名づくべからず。ゆゑに仏をまた無称光と号けたてまつる。
光によりて成仏したまへば、光赫然たり。諸仏の歎じたまふところなり。ゆゑに頂礼したてまつる。
(14)
神光の離相をとかざれば
 無称光仏となづけたり
 因光成仏のひかりをば
 諸仏の嘆ずるところなり

【14】
光明照曜過日月 故仏号超日月光
釈迦仏歎尚不尽 故我稽首無等等

光明照曜すること日月に過ぎたり。ゆゑに仏を超日月光と号けたてまつる。
釈迦仏歎じたまふもなほ尽きず。ゆゑにわれ無等等を稽首したてまつる。
(15)
光明月日に勝過して
 超日月光となづけたり
 釈迦嘆じてなほつきず
 無等等を帰命せよ

菩薩荘厳

【15】
阿弥陀仏初会衆 声聞菩薩数無量
神通巧妙不能算 是故稽首広大会

阿弥陀仏の初会の衆は、声聞・菩薩の数無量なり。
神通巧妙にして算ふることあたはず。このゆゑに広大会を稽首したてまつる。
(16)
弥陀初会の聖衆は
 算数のおよぶことぞなき
 浄土をねがはんひとはみな
 広大会を帰命せよ

【16】
安楽無量摩訶薩 咸当一生補仏処
除其本願大弘誓 普欲度脱諸衆生
斯等宝林功徳聚 一心合掌頭面礼

安楽の無量の摩訶薩は、みなまさに一生にして仏処を補ふべし。
その本願の大弘誓をもつて、あまねくもろもろの衆生を度脱せんと欲するを除く。
これらの宝林功徳聚を、一心に合掌し頭面をもつて礼したてまつる。

(17)
安楽無量の大菩薩
 一生補処にいたるなり
 普賢の徳に帰してこそ
 穢国にかならず化するなれ

【17】
安楽国土諸声聞 皆光一尋若流星
菩薩光輪四千里 若秋満月映紫金
集仏法蔵為衆生 故我頂礼大心海

安楽国土のもろもろの声聞は、みな光一尋にして流星のごとし。
菩薩の光輪は四千里にして、秋の満月の紫金に映ずるがごとし。
仏の法蔵を集めて衆生のためにす。ゆゑにわれ大心海を頂礼したてまつる。
(18)
十方衆生のためにとて
 如来の法蔵あつめてぞ
 本願弘誓に帰せしむる
 大心海を帰命せよ

【18】
又観世音大勢至 於諸聖衆最第一
慈光照曜大千界 侍仏左右顕神儀
度諸有縁不暫息 如大海潮不失時
如是大悲大勢至 一心稽首頭面礼

また観世音・大勢至は、もろもろの聖衆において最第一なり。
慈光大千界を照曜し、仏の左右に侍して神儀を顕す。
もろもろの有縁を度してしばらくも息まざること、大海の潮の時を失せざるがごとし。
かくのごとき大悲(観音)・大勢至を、一心に稽首し頭面をもつて礼したてまつる。
(19)
観音・勢至もろともに
 慈光世界を照曜し
 有縁を度してしばらくも
 休息あることなかりけり

【19】
其有衆生生安楽 悉具三十有二相
智恵満足入深法 究暢道要無障礙
随根利鈍成就忍 三忍乃至不可説
宿命五通常自在 至仏不更雑悪趣
除生他方五濁世 示現同如大牟尼
生安楽国成大利 是故至心頭面礼

それ衆生ありて安楽に生ずれば、ことごとく三十有二相を具す。
智慧満足して深法に入る。道要を究暢して障礙なし。
根の利鈍に随ひて忍を成就す。三忍乃至不可説なり。
宿命五通つねに自在にして、仏に至るまで雑悪趣に更らず。
他方の五濁の世に生じて、示現して同じく大牟尼(釈尊)のごとくなるを除く。
安楽国に生じて大利を成ず。このゆゑに心を至して頭面をもつて礼したてまつる。
(20)
安楽浄土にいたるひと
 五濁悪世にかへりては
 釈迦牟尼仏のごとくにて
 利益衆生はきはもなし

【20】
安楽菩薩承仏神 於一念頃詣十方
不可算数仏世界 恭敬供養諸如来
花香伎楽従念現 宝蓋幢幡随意出
珍奇絶世無能名 散花供養殊星宝
化成花蓋光晃耀 香気普薫莫不周
花蓋小者四百里 乃有遍覆一仏界
随其前後次化去 是諸菩薩僉欣悦
於虚空中奏天楽 雅讃徳頌揚仏恵
聴受経法供養已 未食之前騰虚還
神力自在不可測 故我頂礼無上道

安楽の菩薩は仏のを承けて、一念のあひだに十方に詣る。
算数すべからざる仏世界にして、もろもろの如来を恭敬し供養したてまつる。
華・香・伎楽、念に従ひて現じ、宝蓋・幢幡、意に随ひて出づ。
珍奇なること世に絶れてよく名づくることなし。散華して殊勝の宝を供養したてまつれば、
化して華蓋となり、光晃耀し、香気あまねく薫じてあまねからざるはなし。
華蓋の小なるものも四百里なり。すなはちあまねく一仏界を覆ふことあり。
その前後に随ひて次いで化し去る。このもろもろの菩薩みな欣悦す。
虚空のなかにおいて天楽を奏し、徳を雅讃し、仏慧を頌揚す
経法を聴受して供養しをはりて、いまだ食せざる前に虚に騰りて還る。
神力自在にして測るべからず。ゆゑにわれ無上道を頂礼したてまつる。
(21)
神力自在なることは
 測量すべきことぞなき
 不思議の徳をあつめたり
 無上尊を帰命せよ

【21】
安楽仏国諸菩薩 夫可宣説随智恵
於己万物亡我所 浄若蓮花不受塵
往来進止若汎舟 利安為務捨適莫
彼己猶空断二想 燃智恵炬照長夜
三明六通皆已足 菩薩万行貫心眼
如是功徳無辺量 是故至心頭面礼

安楽仏国のもろもろの菩薩、それ宣説すべきことは智慧に随ふ。
おのが万物において我所を亡ず。浄きこと蓮華の塵を受けざるがごとし。
往来進止汎べる舟のごとし。利安を務めとなして適莫を捨つ。
かれもおのれも空のごとくして二想を断ず。智慧の炬を燃して長夜を照らす。
三明六通みなすでに足れり。菩薩の万行心眼を貫く。
かくのごとき功徳辺量なし。このゆゑに心を至して頭面をもつて礼したてまつる。

【22】
安楽声聞菩薩衆 人天智恵咸洞達
身相荘厳無殊異 但順他方故列名

安楽の声聞・菩薩衆、人天、智慧ことごとく洞達せり。
身相の荘厳殊異なし。ただ他方に順ずるがゆゑに名を列ぬ。
(22)
安楽声聞・菩薩衆
 人・天智慧ほがらかに
 身相荘厳みなおなじ
 他方に順じて名をつらぬ

顔容端正無可比 精微妙躯非人天
虚無之身無極体 是故頂礼平等力

顔容端正にして比ぶべきなし。精微妙躯にして人天にあらず。
虚無の身無極の体なり。このゆゑに平等力を頂礼したてまつる。
(23)
顔容端正たぐひなし
 精微妙躯非人天
 虚無之身無極体
 平等力を帰命せよ

【23】
敢能得生安楽国 皆悉住於正定聚
邪定不定其国無 諸仏咸讃故頂礼

敢みてよく安楽国に生ずることを得れば、みなことごとく正定聚に住す。
邪定・不定その国になし。諸仏ことごとく讃じたまふ。ゆゑに頂礼したてまつる。
(24)
安楽国をねがふひと
 正定聚にこそ住すなれ
 邪定・不定聚くにになし
 諸仏讃嘆したまへり

【24】
諸聞阿弥陀徳号 信心歓喜慶所聞
乃曁一念至心者 廻向願生皆得生
唯除五逆謗正法 故我頂礼願往生

あらゆるもの、阿弥陀の徳号を聞きて、信心歓喜して聞くところを慶び、
すなはち一念に曁(およ)ぶまで心を至すもの、回向して生ぜんと願ずればみな生ずることを得。
ただ五逆と謗正法とを除く。ゆゑにわれ頂礼して往生を願ず。
(25)
十方諸有の衆生は
 阿弥陀至徳の御名をきき
 真実信心いたりなば
 おほきに所聞を慶喜せん
(26)
若不生者のちかひゆゑ
 信楽まことにときいたり
 一念慶喜するひとは
 往生かならずさだまりぬ
(49)
信心歓喜慶所聞
 乃曁一念至心者
 南無不可思議光仏
 頭面に礼したてまつれ

【25】
安楽菩薩声聞輩 於此世界無比方
釈迦無礙大弁才 設諸仮令示少分
最賤乞人並帝王 帝王復比金輪王
如是展転至六天 次第相形皆如始
以天色像喩於彼 千万億倍非其類
皆是法蔵願力為 稽首頂礼大心力

安楽の菩薩・声聞の輩、この世界において比方なし。
釈迦無礙の大弁才をもつて、もろもろの仮令を設けて少分を示し、
最賤の乞人を帝王に並べ、帝王をまた金輪王に比ぶ。
かくのごとく展転して六天に至る。次第してあひ形すことみな始めのごとし。
天の色像をもつてかれに喩ふるに、千万億倍すともその類にあらず。
みなこれ法蔵願力のなせるなり。大心力を稽首し頂礼したてまつる。
(27)
安楽仏土の依正は
 法蔵願力のなせるなり
 天上天下にたぐひなし
 大心力を帰命せよ

【26】
天人一切有所須 無不称欲応念至
一宝二宝無量宝 随心化造受用具
堂宇飲食悉如此 故我稽首無称仏

天・人一切須むるところあれば、欲に称はざるはなし。念に応じて至る。
一宝・二宝・無量宝、心に随ひて受用の具を化造す。
堂宇・飲食ことごとくかくのごとし。ゆゑにわれ無称仏を稽首したてまつる。
(27)
安楽国土の荘厳は
 釈迦無碍のみことにて
 とくともつきじとのべたまふ
 無称仏を帰命せよ

【27】
諸往生者悉具足 清浄色身無可比
神通功徳及宮殿 服飾荘厳如六天
応器宝鉢自然至 百味嘉嘉餚已満
見色聞香意為食 忽然飽足受適悦
所味清浄無所着 事已化去須復現
晏安快楽次泥洹 是故至心頭面礼

【28】
十方仏土菩薩衆 及諸比丘生安楽
無量無数不可計 已生今生当亦然
皆曾供養無量仏 摂取百千堅固法
如是大士悉往生 是故頂礼阿弥陀

十方仏土の菩薩衆およびもろもろの比丘、安楽に生ずるもの、
無量無数にして計るべからず。已生・今生・当もまたしかなり。
みなかつて無量の仏を供養し、百千堅固の法を摂取す。
かくのごとき大士ことごとく往生す。このゆゑに阿弥陀を頂礼したてまつる。
(29)
已今当の往生は
 この土の衆生のみならず
 十方仏土よりきたる
 無量無数不可計なり

【29】
若聞阿弥陀仏号 歓喜讃仰心帰依
下至一念得大利 則為具足功徳宝
設満大千世界火 亦応直過聞仏名
聞阿弥陀不復退 是故至心稽首礼

もし阿弥陀仏の号を聞きて、歓喜し讃仰し、心帰依すれば、
下一念に至るまで大利を得。すなはち功徳の宝を具足すとなす。
たとひ大千世界に満てらん火をも、またただちに過ぎて仏の名を聞くべし。
阿弥陀を聞けば、また退かず。このゆゑに心を至して稽首し礼したてまつる。
(30)
阿弥陀仏の御名をきき
 歓喜讃仰せしむれば
 功徳の宝を具足して
 一念大利無上なり
(31)
たとひ大千世界に
 みてらん火をもすぎゆきて
 仏の御名をきくひとは
 ながく不退にかなふなり

【30】
神力無極阿弥陀 十方無量仏所歎
東方恒沙諸仏国 菩薩無数皆往覲
亦復供養安楽国 菩薩声聞諸大衆
聴受経法宣道化 自余九方亦如是
釈迦如来説偈頌 無量功徳故頂礼

神力無極の阿弥陀は、十方無量の仏の歎じたまふところなり。
東方恒沙の諸仏の国、菩薩無数にしてみな往覲す。
また安楽国の菩薩・声聞・もろもろの大衆を供養し、
経法を聴受して道化を宣ぶ自余の九方もまたかくのごとし。
釈迦如来、を説きて、無量の功徳を頌したまふ。ゆゑに頂礼したてまつる。
(32)
神力無極の阿弥陀は
 無量の諸仏ほめたまふ
 東方恒沙の仏国より
 無数の菩薩ゆきたまふ
(33)
自余の九方の仏国も
 菩薩の往覲みなおなじ
 釈迦牟尼如来偈をときて
 無量の功徳をほめたまふ

【31】
諸来無量菩薩衆 為殖徳本致虔恭
或奏天楽歌歎仏 或頌仏恵照世間
或以天花衣供養 或覩浄土興等願
如是聖衆悉現前 蒙八梵声授仏記
一切菩薩増願行 故我頂礼婆伽婆

諸来の無量菩薩衆、徳本を殖ゑんがために虔恭を致す。
あるいは天楽を奏して仏を歌歎し、あるいは仏慧の世間を照らすを頌す。
あるいは天の華・衣をもつて供養し、あるいは浄土を覩て等願を興す。
かくのごとき聖衆ことごとく現前し、八梵声をもつて仏記を授くるを蒙る。
一切の菩薩願行を増す。ゆゑにわれ婆伽婆を頂礼したてまつる。

(34)
十方の無量菩薩衆
 徳本うゑんためにとて
 恭敬をいたし歌嘆す
 みなひと婆伽婆を帰命せよ

【32】
聖主世尊説法時 大衆雲集七宝堂
聴仏開示咸悟入 歓喜充遍皆得道
于時四面起清風 撃動宝樹出妙響
和韻清徹過糸竹 踰於金石無倫比
天花繽紛逐香風 自然供養常不息
諸天復持天花香 百千伎楽用致敬
如是功徳三宝聚 故我運想礼講堂

聖主世尊(阿弥陀仏)説法の時、大衆七宝の堂に雲集す。
仏の開示を聴きてことごとく悟入し、歓喜充遍してみなを得。
時に四面より清風起り、宝樹を撃動して妙響を出す。
和韻清徹にして糸竹に過ぎ、金石に踰えて倫比なし。
天華繽紛として香風を逐ひ、自然の供養つねにして息まず。
諸天また天の華香を持し、百千の伎楽もつて敬ひを致す。
かくのごとき功徳三宝の聚なり。ゆゑにわれ想を運らして講堂を礼したてまつる。
(35)
七宝講堂道場樹
 方便化身の浄土なり
 十方来生きはもなし
 講堂道場礼すべし

国土荘厳

【33】
妙土広大超数限 自然七宝所合成
仏本願力荘厳起 稽首清浄大摂受

妙土広大にして数限を超ゆ。自然の七宝をもつて合成するところなり。
仏の本願力より荘厳起る。清浄大摂受を稽首したてまつる。
(36)
妙土広大超数限
 本願荘厳よりおこる
 清浄大摂受
 稽首帰命せしむべし

【34】
世界光曜妙殊絶 適悦晏安無四時
自利他利力円満 帰命方便巧荘厳
宝地澄静平如掌 無有山川陵谷阻
若仏神力須則見 稽首不可思議尊

世界光曜すること妙にして殊絶す。適悦晏安として四時なし。
自利他利の力円満したまふ。方便巧荘厳を帰命したてまつる。
宝地澄静にして平らかなること掌のごとく、山・川・陵・谷の阻あることなし。
もし仏の神力をもつて須むればすなはち見る。不可思議尊を稽首したてまつる。
(37)
自利利他円満して
 帰命方便巧荘厳
 こころもことばもたえたれば
 不可思議尊を帰命せよ

【35】
道樹高四百万里 周囲由旬有五千
枝葉布里二十万 自然衆宝所合成
月光摩尼海輪宝 衆宝之王而荘厳
周匝垂間宝瓔珞 百千万種色変異
光焔照曜超千日 無極宝網覆其上
一切荘厳随応現 稽首頂礼道場樹

【36】
微風吹樹出法音 普流十方諸仏刹
聞斯音得深法忍 至成仏道不遭苦
神力広大不可量 稽首頂礼道場樹

【37】
樹香樹色樹音声 樹触樹味及樹法
六情遇者得法忍 故我頂礼道場樹

【38】
蒙道場樹対六根 乃至成仏根清徹
音響柔順無生忍 随力浅深咸得証
此樹威徳所由来 皆是如来五種力
神力本願及満足 明了堅固究竟願
慈悲方便不可称 帰命稽首真無量

道場樹の六根に対するを蒙り、すなはち成仏に至るまで根清徹なり。
音響・柔順・無生忍、力の浅深に随ひてことごとく証を得。
この樹の威徳の由来するところ、みなこれ如来(阿弥陀仏)五種の力なり。
神力と本願および満足と、明了と堅固と究竟願となり。
慈悲方便称るべからず。真無量を帰命し稽首したてまつる。
(38)
神力本願及満足
 明了堅固究竟願
 慈悲方便不思議なり
 真無量を帰命せよ

【39】
従世帝王至六天 音楽転妙有八種
展転勝千億万倍 宝樹音麗倍亦然
復有自然妙伎楽 法音清和悦心神
哀婉雅亮超十方 故我稽首清浄楽

世の帝王より六天に至るまで、音楽うたた妙にして八種あり。
展転して勝るること千億万倍、宝樹の音の麗しきこと倍してまたしかなり。
また自然の妙なる伎楽あり。法音清和にして心神を悦ばしめ、
哀婉雅亮にして十方に超ゆ。ゆゑにわれ清浄楽を稽首したてまつる。
(39)
宝林・宝樹微妙音
 自然清和の伎楽にて
 哀婉雅亮すぐれたり
 清浄楽を帰命せよ

【40】
七宝樹林周世界 光耀鮮明相映発
花菓枝葉更互為 稽首本願功徳聚

七宝の樹林世界にあまねし。光耀鮮明にしてあひ映発す。
華・菓・枝・葉たがひになる。本願功徳聚を稽首したてまつる。
(40)
七宝樹林くににみつ
 光耀たがひにかがやけり
 華菓枝葉またおなじ
 本願功徳聚を帰命せよ

【41】
清風時時吹宝樹 出五音声宮商和
微妙雅曲自然成 故我頂礼清浄勲

清風時々に宝樹を吹くに、五の音声を出して宮商和す。
微妙の雅曲自然に成ず。ゆゑにわれ清浄勲を頂礼したてまつる。
(41)
清風宝樹をふくときは
 いつつの音声いだしつつ
 宮商和して自然なり
 清浄勲を礼すべし

【42】
其土広大無崖際 衆宝羅網遍覆上
金縷殊璣奇異珍 不可名宝為校飾
周匝四面垂宝鈴 調風吹動出妙法
和雅徳香常流布 聞者塵労習不起
此風触身受快楽 如比丘得滅尽定
風吹散花満仏土 随色次第不雑乱
花質柔軟列芬芳 足履其上下四指
随挙足時還如故 用訖地開没無遺
随其時節花六返 不可議報故頂礼
【43】
衆宝蓮花盈世界 一一花百千億葉
其葉光明色無量 朱紫紅緑間五色
煒燁煥爛曜日光 是故一心稽首礼

【44】
一一花中所出光 三十六百有千億
一一花中有仏身 多少亦如所出光
仏身相好如金山 一一又放百千光
普為十方説妙法 各安衆生於仏道
如是神力無辺量 故我帰命阿弥陀

一々の華のなかより出すところの光、三十六百有千億なり。
一々の華のなかに仏身あり。多少また出すところの光のごとし。
仏身の相好金山のごとし。一々また百千の光を放ち、
あまねく十方のために妙法を説き、おのおの衆生を仏道に安んず。
かくのごとき神力辺量なし。ゆゑにわれ阿弥陀を帰命したてまつる。
(42)
一々のはなのなかよりは
 三十六百千億の
 光明てらしてほがらかに
 いたらぬところはさらになし
(43)
一々のはなのなかよりは
 三十六百千億の
 仏身もひかりもひとしくて
 相好金山のごとくなり
(44)
相好ごとに百千の
 ひかりを十方にはなちてぞ
 つねに妙法ときひろめ
 衆生を仏道にいらしむる

【45】
楼閣殿堂非工造 七宝彫綺化所成
明月殊璫交露漫 各有浴池形相称
八功徳水満池中 色味香潔如甘露
黄金池者白銀沙 七宝池沙互如此
池岸香樹垂布上 栴檀芬馥常流馨
天花彩璨為映飾 水上熠燿若景雲
無漏依果難思議 是故稽首功徳蔵

楼閣・殿堂工の造にあらず。七宝の彫綺化してなるところなり。
明月珠璫交露の縵あり。おのおの浴池あり、形あひ称ふ。
八功徳の水池のなかに満てり。色味香潔にして甘露のごとし。
黄金の池には白銀の沙あり。七宝の池の沙たがひにかくのごとし。
池岸の香樹上に垂れ布き、栴檀芬馥としてつねに馨りを流す。
天華彩璨として映飾をなす。水上熠燿として景雲のごとし。
無漏の依果、思議しがたし。このゆゑに功徳蔵を稽首したてまつる。
(45)
七宝の宝池いさぎよく
 八功徳水みちみてり
 無漏の依果不思議なり
 功徳蔵を帰命せよ

【46】
菩薩声聞入宝池 随意浅深如所欲
若須灌身自然注 欲令旋復水尋還
調和冷暖無不称 神開体悦蕩心垢
清明澄潔若無形 宝沙映徹如不深
澹淡廻転相注灌 嬋約容予和人神
微波無量出妙響 随其所応聞法語
或聞三宝之妙章 或聞寂静空無我
或聞無量波羅密 力不共法諸通恵
或聞無作無生忍 乃至甘露灌頂法
随根性欲皆歓喜 順三宝相真実義
菩薩声聞所行道 於是一切悉具聞
三塗苦難名永閉 但有自然快楽音「隠/顕」
是故其国号安楽 頭面頂礼無極尊

三塗苦難の名永く閉ぢ、ただ自然快楽の音のみあり。
このゆゑにその国を安楽と号く。頭面をもつて無極尊を頂礼したてまつる。
(46)
三塗苦難ながくとぢ
 但有自然快楽音
 このゆゑ安楽となづけたり
 無極尊を帰命せよ

龍樹菩薩の徳

【47】
本師龍樹摩訶薩 誕形像始理頽綱
関閉邪扇開正轍 是閻浮提一切眼
伏承尊悟歓喜地 帰阿弥陀生安楽
【48】
譬如竜動雲必随 閻浮提放百卉舒
南無慈悲龍樹尊 至心帰命頭面礼

結讃

【49】
我従無始循三界 為虚妄輪所廻転
一念一時所造業 足繋六道滞三塗
唯願慈光護念我 令我不失菩提心
我讃仏恵功徳音 願聞十方諸有縁
欲得往生安楽者 普皆如意無障礙
所有功徳若大少 廻施一切共往生
南無不可思議光 一心帰命稽首礼

われ無始より三界に循りて、虚妄輪のために回転せらる。
一念一時に造るところの業、足六道に繋がれ三塗に滞まる。
ただ願はくは慈光、われを護念して、われをして菩提心を失せざらしめたまへ。
わが仏慧功徳を讃ずる音、願はくは十方のもろもろの有縁に聞かしめて、
安楽に往生することを得んと欲するもの、あまねくみな意のごとくにして障礙なからしめん。
あらゆる功徳もしは大少、一切に回施してともに往生せん。
不可思議光に南無し、一心に帰命し稽首して礼したてまつる。

【50】

十方三世無量恵 同乗一如号正覚
二智円満道平等 摂化随縁故若干
我帰阿弥陀浄土 即是帰命諸仏国
我以一心讃一仏 願遍十方無礙人
如是十方無量仏 咸各至心頭面礼

十方三世の無量慧、同じく一如に乗じて正覚を号したまふ。
二智円満して道平等なり。摂化縁に随ふがゆゑに若干なり。
われ阿弥陀の浄土に帰するは、すなはちこれ諸仏の国に帰命するなり。
われ一心をもつて一仏を讃ず。願はくは十方無礙人にあまねからん。
かくのごとき十方無量の仏、ことごとくおのおの心を至して頭面をもつて礼したてまつる。

(47)
十方三世の無量慧
 おなじく一如に乗じてぞ
 二智円満道平等
 摂化随縁不思議なり
(48)
弥陀の浄土に帰しぬれば
 すなはち諸仏に帰するなり
 一心をもちて一仏を
 ほむるは無碍人をほむるなり


(50)
仏慧功徳をほめしめて
 十方の有縁にきかしめん
 信心すでにえんひとは
 つねに仏恩報ずべし

讃阿弥陀仏偈
讃一百九十五 礼五十一拝

讃阿弥陀仏偈