讃阿弥陀仏偈 (七祖)
出典: 浄土真宗聖典『ウィキアーカイブ(WikiArc)』
曇鸞大師が主に『大経』によって阿弥陀仏とその聖衆、および国土の荘厳相を讃嘆された七言一句の偈頌(詩句)である。
御開山の「讃阿弥陀仏偈和讃」は、この「漢讃」を和讃された。 →讃阿弥陀仏偈と浄土和讃
讃阿弥陀仏偈
曇鸞法師作
南無阿弥陀仏{
仏荘厳
【1】
- 現に西方この界を去ること、十万億刹の安楽土にまします。
- 仏世尊を阿弥陀と号けたてまつる。われ往生せんと願じて帰命し礼したてまつる。
【2】
【3】
【4】
- 解脱の光輪限斉なし。ゆゑに仏をまた無辺光と号けたてまつる。
【5】
【6】
【7】
【8】
- 道光明朗にして、色超絶したまへり。ゆゑに仏をまた清浄光と号けたてまつる。
- 一たび光照を蒙れば、罪垢除こりてみな解脱を得。ゆゑに頂礼したてまつる。
【9】
- 慈光はるかに被らしめ、安楽を施したまふ。ゆゑに仏をまた歓喜光と号けたてまつる。
- 光の至るところの処法喜を得。大安慰を稽首し頂礼したてまつる。
【10】
- 仏光よく無明の闇を破す。ゆゑに仏をまた智慧光と号けたてまつる。
- 一切諸仏・三乗衆、ことごとくともに歎誉したまへり。ゆゑに稽首したてまつる。
【11】
- 光明一切の時にあまねく照らす。ゆゑに仏をまた不断光と号けたてまつる。
- 光力を聞くがゆゑに、心断えずしてみな往生を得。ゆゑに頂礼したてまつる。
【12】
- その光仏を除きてはよく測るものなし。ゆゑに仏をまた難思議と号けたてまつる。
- 十方諸仏往生を歎じ、その功徳を称したまへり。ゆゑに稽首したてまつる。
【13】
【14】
- 光明照曜すること日月に過ぎたり。ゆゑに仏を超日月光と号けたてまつる。
- 釈迦仏歎じたまふもなほ尽きず。ゆゑにわれ無等等を稽首したてまつる。
菩薩荘厳
【15】
【16】
【17】
【18】
- また観世音・大勢至は、もろもろの聖衆において最第一なり。
- 慈光大千界を照曜し、仏の左右に侍して神儀を顕す。
- もろもろの有縁を度してしばらくも息まざること、大海の潮の時を失せざるがごとし。
- かくのごとき大悲(観音)・大勢至を、一心に稽首し頭面をもつて礼したてまつる。
【19】
- それ衆生ありて安楽に生ずれば、ことごとく三十有二相を具す。
- 智慧満足して深法に入る。道要を究暢して障礙なし。
- 根の利鈍に随ひて忍を成就す。三忍乃至不可説なり。
- 宿命五通つねに自在にして、仏に至るまで雑悪趣に更らず。
- 他方の五濁の世に生じて、示現して同じく大牟尼(釈尊)のごとくなるを除く。
- 安楽国に生じて大利を成ず。このゆゑに心を至して頭面をもつて礼したてまつる。
【20】
- 安楽の菩薩は仏の神を承けて、一念のあひだに十方に詣る。
- 算数すべからざる仏世界にして、もろもろの如来を恭敬し供養したてまつる。
- 華・香・伎楽、念に従ひて現じ、宝蓋・幢幡、意に随ひて出づ。
- 珍奇なること世に絶れてよく名づくることなし。散華して殊勝の宝を供養したてまつれば、
- 化して華蓋となり、光晃耀し、香気あまねく薫じてあまねからざるはなし。
- 華蓋の小なるものも四百里なり。すなはちあまねく一仏界を覆ふことあり。
- その前後に随ひて次いで化し去る。このもろもろの菩薩みな欣悦す。
- 虚空のなかにおいて天楽を奏し、徳を雅讃し、仏慧を頌揚す。
- 経法を聴受して供養しをはりて、いまだ食せざる前に虚に騰りて還る。
- 神力自在にして測るべからず。ゆゑにわれ無上道を頂礼したてまつる。
【21】
【22】
- 安楽の声聞・菩薩衆、人天、智慧ことごとく洞達せり。
- 身相の荘厳殊異なし。ただ他方に順ずるがゆゑに名を列ぬ。
- 顔容端正にして比ぶべきなし。精微妙躯にして人天にあらず。
- 虚無の身無極の体なり。このゆゑに平等力を頂礼したてまつる。
【23】
- 敢(すす)みてよく安楽国に生ずることを得れば、みなことごとく正定聚に住す。
- 邪定・不定その国になし。諸仏ことごとく讃じたまふ。ゆゑに頂礼したてまつる。
【24】
【25】
- 安楽の菩薩・声聞の輩、この世界において比方なし。
- 釈迦無礙の大弁才をもつて、もろもろの仮令を設けて少分を示し、
- 最賤の乞人を帝王に並べ、帝王をまた金輪王に比ぶ。
- かくのごとく展転して六天に至る。次第してあひ形すことみな始めのごとし。
- 天の色像をもつてかれに喩ふるに、千万億倍すともその類にあらず。
- みなこれ法蔵願力のなせるなり。大心力を稽首し頂礼したてまつる。
【26】
【27】
- もろもろの往生するもの、ことごとく清浄の色身を具足して、比ぶべきなし。
- 神通功徳および宮殿・服飾の荘厳は六天のごとし。
- 応器の宝鉢自然に至り、百味の嘉餚たちまちすでに満つ。
- 色を見、香りを聞き、意に食せんとすれば、忽然として飽足し適悦を受く。
- 味はふところ清浄にして着するところなし。事已れば化し去り、須むればまた現ず。
- 晏安たる快楽は泥洹に次し。このゆゑに心を至して頭面をもつて礼したてまつる。
【28】
- 十方仏土の菩薩衆およびもろもろの比丘、安楽に生ずるもの、
- 無量無数にして計るべからず。已生・今生・当もまたしかなり。
- みなかつて無量の仏を供養し、百千堅固の法を摂取す。
- かくのごとき大士ことごとく往生す。このゆゑに阿弥陀を頂礼したてまつる。
【29】
- もし阿弥陀仏の号を聞きて、歓喜し讃仰し、心帰依すれば、
- 下一念に至るまで大利を得。すなはち功徳の宝を具足すとなす。
【30】
- 神力無極の阿弥陀は、十方無量の仏の歎じたまふところなり。
- 東方恒沙の諸仏の国、菩薩無数にしてみな往覲す。
- また安楽国の菩薩・声聞・もろもろの大衆を供養し、
- 経法を聴受して道化を宣ぶ。自余の九方もまたかくのごとし。
- 釈迦如来、偈を説きて、無量の功徳を頌したまふ。ゆゑに頂礼したてまつる。
【31】
- 諸来の無量菩薩衆、徳本を殖ゑんがために虔恭を致す。
- あるいは天楽を奏して仏を歌歎し、あるいは仏慧の世間を照らすを頌す。
- あるいは天の華・衣をもつて供養し、あるいは浄土を覩て等願を興す。
- かくのごとき聖衆ことごとく現前し、八梵声をもつて仏記を授くるを蒙る。
- 一切の菩薩願行を増す。ゆゑにわれ婆伽婆を頂礼したてまつる。
【32】
- 聖主世尊(阿弥陀仏)説法の時、大衆七宝の堂に雲集す。
- 仏の開示を聴きてことごとく悟入し、歓喜充遍してみな道を得。
- 時に四面より清風起り、宝樹を撃動して妙響を出す。
- 和韻清徹にして糸竹に過ぎ、金石に踰えて倫比なし。
- 天華繽紛として香風を逐ひ、自然の供養つねにして息まず。
- 諸天また天の華香を持し、百千の伎楽もつて敬ひを致す。
- かくのごとき功徳三宝の聚なり。ゆゑにわれ想を運らして講堂を礼したてまつる。
国土荘厳
【33】
【34】
- もし仏の神力をもつて須むればすなはち見る。不可思議尊を稽首したてまつる。
【35】
- 道樹の高さ四百万里、周囲由旬五千あり。
- 枝葉布くこと里二十万なり。自然の衆宝をもつて合成するところなり。
- 月光摩尼・海輪宝、衆宝の王をもつて荘厳す。
- 周匝してあひだに垂るる宝の瓔珞は、百千万種の色に変異す。
- 光焔照曜すること千日に超え、無極の宝網その上に覆へり。
- 一切の荘厳随ひて応現す。道場樹を稽首し頂礼したてまつる。
【36】
【37】
【38】
- 道場樹の六根に対するを蒙り、すなはち成仏に至るまで根清徹なり。
- 音響・柔順・無生忍、力の浅深に随ひてことごとく証を得。
【39】
- 世の帝王より六天に至るまで、音楽うたた妙にして八種あり。
- 展転して勝るること千億万倍、宝樹の音の麗しきこと倍してまたしかなり。
- また自然の妙なる伎楽あり。法音清和にして心神を悦ばしめ、
- 哀婉雅亮にして十方に超ゆ。ゆゑにわれ清浄楽を稽首したてまつる。
【40】
- 七宝の樹林世界にあまねし。光耀鮮明にしてあひ映発す。
- 華・菓・枝・葉たがひになる。本願功徳聚を稽首したてまつる。
【41】
【42】
- 和雅の徳香つねに流布せり。聞くもの塵労の習起らず。
- この風身に触るれば快楽を受くること、比丘の滅尽定を得るがごとし。
- 風吹きて華を散らし、仏土に満つ。色の次第に随ひて雑乱せず。
- 華質柔軟にして列芬芳たり。足その上を履むに下ること四指。
- 足を挙ぐる時に随ひてまた故のごとし。用ゐをはれば地開け、没して遺ることなし。
- その時節に随ひて華六返す。不可議の報なり。ゆゑに頂礼したてまつる。
【43】
- 衆宝の蓮華世界に盈つ。一々の華に百千億の葉あり。
- その葉の光明の色無量なり。朱・紫・紅・緑五色に間はり、
- 煒燁煥爛として日光より曜く。このゆゑに一心に稽首し礼したてまつる。
【44】
- 一々の華のなかより出すところの光、三十六百有千億なり。
- 一々の華のなかに仏身あり。多少また出すところの光のごとし。
- 仏身の相好金山のごとし。一々また百千の光を放ち、
- あまねく十方のために妙法を説き、おのおの衆生を仏道に安んず。
- かくのごとき神力辺量なし。ゆゑにわれ阿弥陀を帰命したてまつる。
【45】
- 楼閣・殿堂工の造にあらず。七宝の彫綺化してなるところなり。
- 明月・珠璫、交露の縵あり。おのおの浴池あり、形あひ称ふ。
- 八功徳の水池のなかに満てり。色味香潔にして甘露のごとし。
- 黄金の池には白銀の沙あり。七宝の池の沙たがひにかくのごとし。
- 池岸の香樹上に垂れ布き、栴檀芬馥としてつねに馨りを流す。
- 天華彩璨として映飾をなす。水上熠燿として景雲のごとし。
- 無漏の依果、思議しがたし。このゆゑに功徳蔵を稽首したてまつる。
【46】
- 菩薩・声聞宝池に入れば、意に随ひて浅深欲するところのごとし。
- もし身に灌がんと須むれば、自然に注ぐ。旋復せしめんと欲すれば、水すなはち還る。
- 調和冷暖にして称はざるはなし。神開け体悦びて、心垢を蕩かす。
- 清明澄潔にして形なきがごとし。宝沙映徹して深からざるがごとし。
- 澹淡として回転りてあひ注灌す。嬋約容予にして人の神を和らぐ。
- 微波無量にして妙響を出す。その所応に随ひて法語を聞く。
- あるいは三宝の妙章を聞き、あるいは寂静・空・無我を聞き、
- あるいは無量の波羅蜜・力・不共法・諸通慧を聞き、
- あるいは無作・無生忍、乃至甘露灌頂の法を聞く。
- 根の性欲に随ひてみな歓喜す。三宝の相と真実の義に順ひて、
- 菩薩・声聞の所行の道、ここにおいて一切ことごとくつぶさに聞く。
- 三塗苦難の名永く閉ぢ、ただ自然快楽の音のみあり。
- このゆゑにその国を安楽と号く。頭面をもつて無極尊を頂礼したてまつる。
【48】
結讃
【49】
- われ無始より三界に循りて、虚妄輪のために回転せらる。
- 一念一時に造るところの業、足六道に繋がれ三塗に滞まる。
- ただ願はくは慈光、われを護念して、われをして菩提心を失せざらしめたまへ。
- わが仏慧功徳を讃ずる音、願はくは十方のもろもろの有縁に聞かしめて、
- 安楽に往生することを得んと欲するもの、あまねくみな意のごとくにして障礙なからしめん。
- あらゆる功徳もしは大少、一切に回施してともに往生せん。
- 不可思議光に南無し、一心に帰命し稽首して礼したてまつる。
【50】
讃は一百九十五、礼は五十一拝。
- 讃阿弥陀仏偈