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==蓮如上人御一代記聞書==

==蓮如上人御一代記聞書==

====1-50====

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一　[[勧修寺村の道徳]]、[[明応二年]]正月一日に御前へまゐりたるに、蓮如上人仰せられ候ふ。道徳はいくつになるぞ。道徳念仏申さるべし。自力の念仏といふは、念仏おほく申して仏にまゐらせ、この申したる功徳にて仏のたすけたまはんずるやうにおもうてとなふるなり。他力といふは、弥陀をたのむ一念のおこるとき、[[やがて]]御たすけにあづかるなり。そののち念仏申すは、御たすけありたるありがたさありがたさと思ふこころをよろこびて、南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏と申すばかりなり。されば他力とは他のちからといふこころなり。この一念、臨終までとほりて往生するなりと仰せ候ふなり。

一　[[勧修寺村の道徳]]、[[明応二年]]正月一日に御前へまゐりたるに、蓮如上人仰せられ候ふ。道徳はいくつになるぞ。道徳念仏申さるべし。自力の念仏といふは、念仏おほく申して仏にまゐらせ、この申したる功徳にて仏のたすけたまはんずるやうにおもうてとなふるなり。他力といふは、弥陀をたのむ一念のおこるとき、[[やがて]]御たすけにあづかるなり。そののち念仏申すは、御たすけありたるありがたさありがたさと思ふこころをよろこびて、南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏と申すばかりなり。されば他力とは他のちからといふこころなり。この一念、臨終までとほりて往生するなりと仰せ候ふなり。

一　あさの御[[つとめ]]に、「[[いつつの不思議]]をとくなかに」（高僧和讃・三三）より「尽十方の無礙光は　無明のやみをてらしつつ　一念歓喜するひとを　かな

一　あさの御[[つとめ]]に、「[[いつつの不思議]]をとくなかに」（高僧和讃・三三）より「尽十方の無礙光は　無明のやみをてらしつつ　一念歓喜するひとを　かな

一　御つとめのとき[[順讃]]御わすれあり。[[南殿]]へ御かへりありて、仰せに、聖人（親鸞）御すすめの和讃、あまりにあまりに殊勝にて、[[あげば]]をわすれたりと仰せ候ひき。ありがたき御すすめを信じて往生するひとすくなしと御述懐なり。

一　御つとめのとき[[順讃]]御わすれあり。[[南殿]]へ御かへりありて、仰せに、聖人（親鸞）御すすめの和讃、あまりにあまりに殊勝にて、[[あげば]]をわすれたりと仰せ候ひき。ありがたき御すすめを信じて往生するひとすくなしと御述懐なり。

一　[[念声是一]]といふことしらずと申し候ふとき、仰せに、おもひ内にあればいろ外にあらはるるとあり。されば信をえたる体はすなはち南無阿弥陀仏なり

一　[[念声是一]]といふことしらずと申し候ふとき、仰せに、おもひ内にあればいろ外にあらはるるとあり。されば信をえたる体はすなはち南無阿弥陀仏なり

一　蓮如上人仰せられ候ふ。本尊は掛けやぶれ、聖教はよみやぶれと、対句に仰せられ候ふ。

一　蓮如上人仰せられ候ふ。本尊は掛けやぶれ、聖教はよみやぶれと、対句に仰せられ候ふ。

一　仰せに、南無といふは帰命なり、帰命といふは弥陀を一念たのみまゐらするこころなり。また発願回向といふは、たのむ機に[[やがて]]大善大功徳をあたへたまふなり。その体すなはち南無阿弥陀仏なりと仰せ候ひき。

一　仰せに、南無といふは帰命なり、帰命といふは弥陀を一念たのみまゐらするこころなり。また発願回向といふは、たのむ機に[[やがて]]大善大功徳をあたへたまふなり。その体すなはち南無阿弥陀仏なりと仰せ候ひき。

一　[[加賀の願生]]と[[覚善又四郎]]とに対して、信心といふは弥陀を一念御たすけ候へとたのむとき、やがて御たすけあるすがたを南無阿弥陀仏と申すなり。総じて罪はいかほどあるとも、一念の[[信力]]にて消しうしなひたまふなり。されば「無始以来[[輪転六道]]の[[妄業]]、一念南無阿弥陀仏と帰命する[[仏智無生の妙願力]]にほろぼされて、[[涅槃畢竟の真因]]はじめてきざすところをさすなり」（真要鈔・本）といふ御ことばを引きたまひて仰せ候ひき。さればこのこころを御

一　[[加賀の願生]]と[[覚善又四郎]]とに対して、信心といふは弥陀を一念御たすけ候へとたのむとき、やがて御たすけあるすがたを南無阿弥陀仏と申すなり。総じて罪はいかほどあるとも、一念の[[信力]]にて消しうしなひたまふなり。されば「無始以来[[輪転六道]]の[[妄業]]、一念南無阿弥陀仏と帰命する[[仏智無生の妙願力]]にほろぼされて、[[涅槃畢竟の真因]]はじめてきざすところをさすなり」（真要鈔・本）といふ御ことばを引きたまひて仰せ候ひき。さればこのこころを御

一　[[三河の教賢]]、[[伊勢の空賢]]とに対して、仰せに、南無といふは帰命、このこころは御たすけ候へとたのむなり。この帰命のこころ[[やがて]]発願回向のこころを感ずるなりと仰せられ候ふなり。

一　[[三河の教賢]]、[[伊勢の空賢]]とに対して、仰せに、南無といふは帰命、このこころは御たすけ候へとたのむなり。この帰命のこころ[[やがて]]発願回向のこころを感ずるなりと仰せられ候ふなり。

一　「他力の願行をひさしく身にたもちながら、[[よしなき]][[自力の執心]]に[[ほだされて]]、むなしく流転しけるなり」（安心決定鈔・末意）と候ふを、[[え存ぜず]]候ふよし申しあげ候ふところに、仰せに、ききわけてえ信ぜぬもののことなりと仰せられ候ひき。

一　「他力の願行をひさしく身にたもちながら、[[よしなき]][[自力の執心]]に[[ほだされて]]、むなしく流転しけるなり」（安心決定鈔・末意）と候ふを、[[え存ぜず]]候ふよし申しあげ候ふところに、仰せに、ききわけてえ信ぜぬもののことなりと仰せられ候ひき。

一　「弥陀の大悲、かの[[常没]]の衆生のむねのうちにみちみちたる」（安心決定鈔・本意）といへること不審に候ふと、[[福田寺]]申しあげられ候ふ。仰せに、仏心の蓮華はむねにこそひらくべけれ、はらにあるべきや。「弥陀の身心の功徳、法界衆生の身のうち、こころのそこに入りみつ」（同・本）ともあり。しかれば、

一　「弥陀の大悲、かの[[常没]]の衆生のむねのうちにみちみちたる」（安心決定鈔・本意）といへること不審に候ふと、[[福田寺]]申しあげられ候ふ。仰せに、仏心の蓮華はむねにこそひらくべけれ、はらにあるべきや。「弥陀の身心の功徳、法界衆生の身のうち、こころのそこに入りみつ」（同・本）ともあり。しかれば、

一　十月[[二十八日]]の[[逮夜]]にのたまはく、「[[正信偈和讃]]」をよみて、仏にも聖人（親鸞）にも[[まゐらせん]]とおもふか、あさましや。他宗にはつとめをもして回向するなり。[[一流|御一流]]には他力信心をよくしれとおぼしめして、聖人の和讃にそのこころを[[あそばす|あそばされたり]]。ことに[[七高僧|七高祖]]の御ねんごろなる御釈のこころを、和讃に[[ききつくる]]やうにあそばされて、その恩をよくよく存知して、あらたふとやと念仏するは、仏恩の御ことを聖人の御前にてよろこびまうすこころなりと、くれぐれ仰せられ候ひき。

一　十月[[二十八日]]の[[逮夜]]にのたまはく、「[[正信偈和讃]]」をよみて、仏にも聖人（親鸞）にも[[まゐらせん]]とおもふか、あさましや。他宗にはつとめをもして回向するなり。[[一流|御一流]]には他力信心をよくしれとおぼしめして、聖人の和讃にそのこころを[[あそばす|あそばされたり]]。ことに[[七高僧|七高祖]]の御ねんごろなる御釈のこころを、和讃に[[ききつくる]]やうにあそばされて、その恩をよくよく存知して、あらたふとやと念仏するは、仏恩の御ことを聖人の御前にてよろこびまうすこころなりと、くれぐれ仰せられ候ひき。

一　聖教をよくおぼえたりとも、他力の安心を[[しかと]]決定なくはいたづらごとなり。弥陀をたのむところにて往生決定と信じて、ふたごころなく臨終までとほり候はば往生すべきなり。

一　聖教をよくおぼえたりとも、他力の安心を[[しかと]]決定なくはいたづらごとなり。弥陀をたのむところにて往生決定と信じて、ふたごころなく臨終までとほり候はば往生すべきなり。

一　[[明応三年]]十一月、報恩講の二十四日[[あかつき八時]]において、聖人の御前

一　[[明応三年]]十一月、報恩講の二十四日[[あかつき八時]]において、聖人の御前

一　教化するひと、まづ信心をよく決定して、そのうへにて聖教をよみかたらば、きくひとも信をとるべし。

一　教化するひと、まづ信心をよく決定して、そのうへにて聖教をよみかたらば、きくひとも信をとるべし。

一　仰せに、弥陀をたのみて御たすけを決定して、御たすけのありがたさよ

一　仰せに、弥陀をたのみて御たすけを決定して、御たすけのありがたさよ

一　[[大津近松殿]]に対しましまして仰せられ候ふ。信心をよく決定して、ひとにもとらせよと仰せられ候ひき。

一　[[大津近松殿]]に対しましまして仰せられ候ふ。信心をよく決定して、ひとにもとらせよと仰せられ候ひき。

一　十二月六日に[[富田殿]]へ御[[下向]]にて候ふあひだ、五日の夜は大勢御前へまゐり候ふに、仰せに、今夜はなにごとに人おほくきたりたるぞと。順誓申され候ふは、まことにこのあひだの御[[聴聞]]申し、ありがたさの御礼のため、また明日御下向にて御座候ふ。御目にかかりまうすべしかのあひだ、歳末の御礼のためならんと申しあげられけり。そのとき仰せに、[[無益]]の歳末の礼かな、歳末の礼には信心をとりて礼にせよと仰せ候ひき。

一　十二月六日に[[富田殿]]へ御[[下向]]にて候ふあひだ、五日の夜は大勢御前へまゐり候ふに、仰せに、今夜はなにごとに人おほくきたりたるぞと。順誓申され候ふは、まことにこのあひだの御[[聴聞]]申し、ありがたさの御礼のため、また明日御下向にて御座候ふ。御目にかかりまうすべしかのあひだ、歳末の御礼のためならんと申しあげられけり。そのとき仰せに、[[無益]]の歳末の礼かな、歳末の礼には信心をとりて礼にせよと仰せ候ひき。

一　仰せに、ときどき懈怠することあるとき、往生すまじきかと疑ひなげくものあるべし。しかれども、もはや弥陀如来をひとたびたのみまゐらせて往

一　仰せに、ときどき懈怠することあるとき、往生すまじきかと疑ひなげくものあるべし。しかれども、もはや弥陀如来をひとたびたのみまゐらせて往

一　御たすけありたることのありがたさよと念仏申すべく候ふや、また御たすけあらうずることのありがたさよと念仏申すべく候ふやと、申しあげ候ふとき、仰せに、いづれもよし。ただし正定聚のかたは御たすけありたるとよろこぶこころ、滅度のさとりのかたは御たすけあらうずることのありがたさよと申すこころなり。いづれも仏に成ることをよろこぶこころ、よしと仰せ候ふなり。

一　御たすけありたることのありがたさよと念仏申すべく候ふや、また御たすけあらうずることのありがたさよと念仏申すべく候ふやと、申しあげ候ふとき、仰せに、いづれもよし。ただし正定聚のかたは御たすけありたるとよろこぶこころ、滅度のさとりのかたは御たすけあらうずることのありがたさよと申すこころなり。いづれも仏に成ることをよろこぶこころ、よしと仰せ候ふなり。

一　[[明応五年]]正月二十三日に富田殿より御上洛ありて、仰せに、当年よりいよいよ信心なきひとには御あひあるまじきと、かたく仰せ候ふなり。安心のとほりいよいよ仰せきかせられて、また[[誓願寺]]に能をさせられけり。二月十七日にやがて富田殿へ御下向ありて、三月二十七日に[[堺殿]]より御上洛ありて、

一　[[明応五年]]正月二十三日に富田殿より御上洛ありて、仰せに、当年よりいよいよ信心なきひとには御あひあるまじきと、かたく仰せ候ふなり。安心のとほりいよいよ仰せきかせられて、また[[誓願寺]]に能をさせられけり。二月十七日にやがて富田殿へ御下向ありて、三月二十七日に[[堺殿]]より御上洛ありて、

一　四月九日に仰せられ候ふ。安心をとりてものをいはばよし。用ないことをばいふまじきなり。一心のところをばよく人にもいへと、空善に御掟なり。

一　四月九日に仰せられ候ふ。安心をとりてものをいはばよし。用ないことをばいふまじきなり。一心のところをばよく人にもいへと、空善に御掟なり。

一　おなじき十二日に堺殿へ御下向あり。

一　おなじき十二日に堺殿へ御下向あり。

一　七月二十日御上洛にて、その日仰せられ候ふ。「五濁悪世のわれらこそ　金剛の信心ばかりにて　ながく生死をすてはてて　自然の浄土にいたるなれ」（高僧和讃・七六）。[[このつぎ]]をも御法談ありて、この二首の讃のこころをいひてきかせんとてのぼりたりと仰せ候ふなり。さて「自然の浄土にいたるなり」、「ながく生死をへだてける」、さてさてあら[[おもしろや]]おもしろやと、くれぐれ御掟ありけり。

一　七月二十日御上洛にて、その日仰せられ候ふ。「五濁悪世のわれらこそ　金剛の信心ばかりにて　ながく生死をすてはてて　自然の浄土にいたるなれ」（高僧和讃・七六）。[[このつぎ]]をも御法談ありて、この二首の讃のこころをいひてきかせんとてのぼりたりと仰せ候ふなり。さて「自然の浄土にいたるなり」、「ながく生死をへだてける」、さてさてあら[[おもしろや]]おもしろやと、くれぐれ御掟ありけり。

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一　のたまはく、「[[南旡]]」の字は聖人（親鸞）の御流義にかぎりてあそばしけり。「南旡阿弥陀仏」を[[泥]]にて写させられて、御座敷に掛けさせられて仰せられけるは、不可思議光仏、無礙光仏もこの南無阿弥陀仏をほめたまふ[[徳号]]なり。しかれば南無阿弥陀仏を本とすべしと仰せられ候ふなり。

一　のたまはく、「[[南旡]]」の字は聖人（親鸞）の御流義にかぎりてあそばしけり。「南旡阿弥陀仏」を[[泥]]にて写させられて、御座敷に掛けさせられて仰せられけるは、不可思議光仏、無礙光仏もこの南無阿弥陀仏をほめたまふ[[徳号]]なり。しかれば南無阿弥陀仏を本とすべしと仰せられ候ふなり。

一　「十方無量の諸仏の　[[証誠護念]]のみことにて　自力の大菩提心の　かなはぬほどはしりぬべし」（正像末和讃・四四）。御讃のこころを聴聞申したきと順誓申しあげられけり。仰せに、諸仏の弥陀に帰せらるるを[[能]]としたまへり。

一　「十方無量の諸仏の　[[証誠護念]]のみことにて　自力の大菩提心の　かなはぬほどはしりぬべし」（正像末和讃・四四）。御讃のこころを聴聞申したきと順誓申しあげられけり。仰せに、諸仏の弥陀に帰せらるるを[[能]]としたまへり。

一　「[[鳥部野]]をおもひやるこそあはれなれ　ゆかりの人のあととおもへば」。これも聖人の御歌なり。

一　「[[鳥部野]]をおもひやるこそあはれなれ　ゆかりの人のあととおもへば」。これも聖人の御歌なり。

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一　明応五年九月二十日、御開山（親鸞）の[[御影]]様、空善に[[御免]]あり。なかなかありがたさ申すにかぎりなきことなり。

一　明応五年九月二十日、御開山（親鸞）の[[御影]]様、空善に[[御免]]あり。なかなかありがたさ申すにかぎりなきことなり。

一　おなじき十一月報恩講の二十五日に、御開山の『御伝』（御伝鈔）を聖人（親鸞）の御前にて上様（蓮如）[[あそばされて]]、いろいろ御法談候ふ。なかなかありがたさ申すばかりなく候ふ。

一　おなじき十一月報恩講の二十五日に、御開山の『御伝』（御伝鈔）を聖人（親鸞）の御前にて上様（蓮如）[[あそばされて]]、いろいろ御法談候ふ。なかなかありがたさ申すばかりなく候ふ。

一　[[明応六年]]四月十六日御上洛にて、その日御開山聖人の[[御影の正本]]、あつがみ一枚につつませ、[[みづからの御筆にて…|みづからの御筆にて御座候ふとて]]、上様御手に御ひろげ候ひて、皆に拝ませたまへり。この正本、まことに宿善なくては拝見申さぬことなりと仰せられ候ふ。

一　[[明応六年]]四月十六日御上洛にて、その日御開山聖人の[[御影の正本]]、あつがみ一枚につつませ、[[みづからの御筆にて…|みづからの御筆にて御座候ふとて]]、上様御手に御ひろげ候ひて、皆に拝ませたまへり。この正本、まことに宿善なくては拝見申さぬことなりと仰せられ候ふ。

一　のたまはく、「諸仏三業荘厳して　畢竟平等なることは　衆生[[虚誑]]の身口意を　治せんがためとのべたまふ」（高僧和讃・四四）といふは、諸仏の弥陀に帰して衆生をたすけらるることよと仰せられ候ふ。

一　のたまはく、「諸仏三業荘厳して　畢竟平等なることは　衆生[[虚誑]]の身口意を　治せんがためとのべたまふ」（高僧和讃・四四）といふは、諸仏の弥陀に帰して衆生をたすけらるることよと仰せられ候ふ。

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一　[[一念の信心]]をえてのちの相続といふは、さらに別のことにあらず、はじめ発起するところの安心を相続せられてたふとくなる一念のこころのとほるを、「[[憶念の心つねに・仏恩報謝|憶念の心つねに]]」とも「[[憶念の心つねに・仏恩報謝|仏恩報謝]]」ともいふなり。いよいよ[[帰命の一念]]、発起すること肝要なりと仰せ候ふなり。

一　[[一念の信心]]をえてのちの相続といふは、さらに別のことにあらず、はじめ発起するところの安心を相続せられてたふとくなる一念のこころのとほるを、「[[憶念の心つねに・仏恩報謝|憶念の心つねに]]」とも「[[憶念の心つねに・仏恩報謝|仏恩報謝]]」ともいふなり。いよいよ[[帰命の一念]]、発起すること肝要なりと仰せ候ふなり。

一　のたまはく、朝夕、「正信偈和讃」にて念仏申すは、往生の[[たね]]になるべきかなるまじきかと、おのおの坊主に御たづねあり。皆申されけるは、往生のたねになるべしと申したる人もあり、往生のたねにはなるまじきといふ人もありけるとき、仰せに、いづれもわろし、「正信偈和讃」は、衆生の弥陀如来を一念にたのみまゐらせて、後生たすかりまうせとのことわりをあそばされたり。よくききわけて信をとりて、ありがたやありがたやと聖人（親鸞）の御前にてよろこぶことなりと、くれぐれ仰せ候ふなり。

一　のたまはく、朝夕、「正信偈和讃」にて念仏申すは、往生の[[たね]]になるべきかなるまじきかと、おのおの坊主に御たづねあり。皆申されけるは、往生のたねになるべしと申したる人もあり、往生のたねにはなるまじきといふ人もありけるとき、仰せに、いづれもわろし、「正信偈和讃」は、衆生の弥陀如来を一念にたのみまゐらせて、後生たすかりまうせとのことわりをあそばされたり。よくききわけて信をとりて、ありがたやありがたやと聖人（親鸞）の御前にてよろこぶことなりと、くれぐれ仰せ候ふなり。

一　南無阿弥陀仏の六字を、他宗には大善大功徳にてあるあひだ、となへてこの功徳を諸仏・菩薩・諸天にまゐらせて、その功徳をわがものがほにするな

一　南無阿弥陀仏の六字を、他宗には大善大功徳にてあるあひだ、となへてこの功徳を諸仏・菩薩・諸天にまゐらせて、その功徳をわがものがほにするな

一　[[三河国]]浅井の[[後室]]、御いとまごひにとてまゐり候ふに、富田殿へ御下向の[[あした]]のことなれば、ことのほかの御[[取りみだし]]にて御座候ふに、仰せに、名号をただとなへて仏にまゐらするこころにてはゆめゆめなし。弥陀を[[しかと]]御たすけ候へとたのみまゐらすれば、やがて仏の御たすけにあづかるを南無阿弥陀仏と申すなり。しかれば、御たすけにあづかりたることのありがたさよありがたさよと、こころにおもひまゐらするを、口に出して南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏と申すを、仏恩を報ずるとは申すことなりと仰せ候ひき。

一　[[三河国]]浅井の[[後室]]、御いとまごひにとてまゐり候ふに、富田殿へ御下向の[[あした]]のことなれば、ことのほかの御[[取りみだし]]にて御座候ふに、仰せに、名号をただとなへて仏にまゐらするこころにてはゆめゆめなし。弥陀を[[しかと]]御たすけ候へとたのみまゐらすれば、やがて仏の御たすけにあづかるを南無阿弥陀仏と申すなり。しかれば、御たすけにあづかりたることのありがたさよありがたさよと、こころにおもひまゐらするを、口に出して南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏と申すを、仏恩を報ずるとは申すことなりと仰せ候ひき。

一　順誓申しあげられ候ふ。一念発起のところにて、罪みな消滅して正定聚不退の位に定まると、[[御文]]にあそばされたり。しかるに罪はいのちのあるあ

一　順誓申しあげられ候ふ。一念発起のところにて、罪みな消滅して正定聚不退の位に定まると、[[御文]]にあそばされたり。しかるに罪はいのちのあるあ

一　「真実信心の称名は　[[弥陀回向の法]]なれば　不回向となづけてぞ　自力の称念きらはるる」（正像末和讃・三九）といふは、弥陀のかたより、[[たのむこころ]]も、たふとやありがたやと念仏申すこころも、みなあたへたまふゆゑに、とやせんかくやせんとはからうて念仏申すは、自力なればきらふなりと仰せ候

一　「真実信心の称名は　[[弥陀回向の法]]なれば　不回向となづけてぞ　自力の称念きらはるる」（正像末和讃・三九）といふは、弥陀のかたより、[[たのむこころ]]も、たふとやありがたやと念仏申すこころも、みなあたへたまふゆゑに、とやせんかくやせんとはからうて念仏申すは、自力なればきらふなりと仰せ候

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一　[[無生の生]]とは、極楽の生は三界をへめぐるこころにてあらざれば、極楽の生は無生の生といふなり。

一　[[無生の生]]とは、極楽の生は三界をへめぐるこころにてあらざれば、極楽の生は無生の生といふなり。

一　回向といふは、弥陀如来の、衆生を御たすけをいふなりと仰せられ候ふなり。

一　回向といふは、弥陀如来の、衆生を御たすけをいふなりと仰せられ候ふなり。

一　仰せに、一念発起の義、往生は決定なり。罪消して助けたまはんとも、罪消さずしてたすけたまはんとも、弥陀如来の御はからひなり。罪の沙汰[[無益]]なり。たのむ衆生を本とたすけたまふことなりと仰せられ候ふなり。

一　仰せに、一念発起の義、往生は決定なり。罪消して助けたまはんとも、罪消さずしてたすけたまはんとも、弥陀如来の御はからひなり。罪の沙汰[[無益]]なり。たのむ衆生を本とたすけたまふことなりと仰せられ候ふなり。

一　仰せに、[[身をすてて]][[おのおのと同座するをば]]、聖人（親鸞）の仰せにも、[[四海]]の信心の人はみな兄弟と仰せられたれば、われもその御ことばのごとくなり。また同座をもしてあらば、不審なることをも問へかし、信をよくとれかしとねがふばかりなりと仰せられ候ふなり。

一　仰せに、[[身をすてて]][[おのおのと同座するをば]]、聖人（親鸞）の仰せにも、[[四海]]の信心の人はみな兄弟と仰せられたれば、われもその御ことばのごとくなり。また同座をもしてあらば、不審なることをも問へかし、信をよくとれかしとねがふばかりなりと仰せられ候ふなり。

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一　「[[愛欲の広海]]に沈没し、[[名利の太山]]に迷惑して、定聚の数に入ることを喜ばず、[[真証]]の証に近づくことを快しまず」（信巻・末）と申す沙汰に、[[不審のあつかひどもにて]]、往生せんずるか、すまじきなんどとたがひに申しあひけるを、ものごしにきこしめされて、愛欲も名利もみな煩悩なり、されば[[機のあつかひ]]をするは雑修なりと仰せ候ふなり。ただ信ずるほかは別のことなしと仰せられ候ふ。

一　「[[愛欲の広海]]に沈没し、[[名利の太山]]に迷惑して、定聚の数に入ることを喜ばず、[[真証]]の証に近づくことを快しまず」（信巻・末）と申す沙汰に、[[不審のあつかひどもにて]]、往生せんずるか、すまじきなんどとたがひに申しあひけるを、ものごしにきこしめされて、愛欲も名利もみな煩悩なり、されば[[機のあつかひ]]をするは雑修なりと仰せ候ふなり。ただ信ずるほかは別のことなしと仰せられ候ふ。

一　[[ゆふさり]]、[[案内]]をも申さず、ひとびとおほくまゐりたるを、[[美濃殿]]、[[まかりいで候へ]]と、あらあらと御申しのところに、仰せに、さやうにいはんことばにて、[[一念のこと]]をいひてきかせて帰せかしと。東西を走りまはりていひたきことなりと仰せられ候ふとき、慶聞房涙を流し、あやまりて候ふとて讃嘆ありけり。皆々落涙申すことかぎりなかりけり。

一　[[ゆふさり]]、[[案内]]をも申さず、ひとびとおほくまゐりたるを、[[美濃殿]]、[[まかりいで候へ]]と、あらあらと御申しのところに、仰せに、さやうにいはんことばにて、[[一念のこと]]をいひてきかせて帰せかしと。東西を走りまはりていひたきことなりと仰せられ候ふとき、慶聞房涙を流し、あやまりて候ふとて讃嘆ありけり。皆々落涙申すことかぎりなかりけり。

一　[[明応六年]]十一月、報恩講に御上洛なく候ふあひだ、[[法敬]]坊御使ひとして、当年は[[御在国]]にて御座候ふあひだ、[[御講]]をなにと御沙汰あるべきやと、

一　[[明応六年]]十一月、報恩講に御上洛なく候ふあひだ、[[法敬]]坊御使ひとして、当年は[[御在国]]にて御座候ふあひだ、[[御講]]をなにと御沙汰あるべきやと、

一　おなじき七年の夏よりまた御[[違例]]にて御座候ふあひだ、五月七日に御いとまごひに[[聖人]]へ御まゐりありたきと仰せられて、御上洛にて、[[やがて]]仰せに、信心なきひとにはあふまじきぞ。信をうるものには召してもみたく候ふ、逢ふべしと仰せなりと［云々］。

一　おなじき七年の夏よりまた御[[違例]]にて御座候ふあひだ、五月七日に御いとまごひに[[聖人]]へ御まゐりありたきと仰せられて、御上洛にて、[[やがて]]仰せに、信心なきひとにはあふまじきぞ。信をうるものには召してもみたく候ふ、逢ふべしと仰せなりと［云々］。

一　今の人は古をたづぬべし。また古き人は古をよくつたふべし。物語は失するものなり。書したるものは失せず候ふ。

一　今の人は古をたづぬべし。また古き人は古をよくつたふべし。物語は失するものなり。書したるものは失せず候ふ。

一　わが心にまかせずして心を責めよ。仏法は心のつまる物かとおもへば、信心に御なぐさみ候ふと仰せられ候ふ。

一　わが心にまかせずして心を責めよ。仏法は心のつまる物かとおもへば、信心に御なぐさみ候ふと仰せられ候ふ。

一　[[法敬]]坊九十まで存命候ふ。この歳まで聴聞申し候へども、これまでと存知たることなし、あきたりもなきことなりと申され候ふ。

一　[[法敬]]坊九十まで存命候ふ。この歳まで聴聞申し候へども、これまでと存知たることなし、あきたりもなきことなりと申され候ふ。

一　[[山科]]にて御法談の御座候ふとき、あまりにありがたき御掟どもなりとて、これを忘れまうしてはと存じ、御座敷をたち御堂へ六人よりて[[談合]]候へば、面々にききかへられ候ふ。そのうちに四人はちがひ候ふ。大事のことにて候ふと申すことなり。聞きまどひあるものなり。

一　[[山科]]にて御法談の御座候ふとき、あまりにありがたき御掟どもなりとて、これを忘れまうしてはと存じ、御座敷をたち御堂へ六人よりて[[談合]]候へば、面々にききかへられ候ふ。そのうちに四人はちがひ候ふ。大事のことにて候ふと申すことなり。聞きまどひあるものなり。

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一　蓮如上人の御時、[[こころざしの衆，こころざしの人，志の人|こころざしの衆]]も御前におほく候ふとき、このうちに信をえたるものいくたりあるべきぞ、一人か二人かあるべきか、など御掟候ふとき、おのおの肝をつぶし候ふと申され候ふよしに候ふ。

一　蓮如上人の御時、[[こころざしの衆，こころざしの人，志の人|こころざしの衆]]も御前におほく候ふとき、このうちに信をえたるものいくたりあるべきぞ、一人か二人かあるべきか、など御掟候ふとき、おのおの肝をつぶし候ふと申され候ふよしに候ふ。

====51-118====

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一　法敬申され候ふ。讃嘆のときなにもおなじやうにきかで、聴聞は[[かど]]をきけと申され候ふ。[[詮あるところ]]をきけとなり。

一　法敬申され候ふ。讃嘆のときなにもおなじやうにきかで、聴聞は[[かど]]をきけと申され候ふ。[[詮あるところ]]をきけとなり。

一　「[[憶念称名]]いさみありて」（報恩講私記）とは、称名は[[いさみの念仏]]なり。信のうへはうれしくいさみて申す念仏なり。

一　「[[憶念称名]]いさみありて」（報恩講私記）とは、称名は[[いさみの念仏]]なり。信のうへはうれしくいさみて申す念仏なり。

一　御文のこと、聖教は読みちがへもあり、こころえもゆかぬところもあり。御文は読みちがへもあるまじきと仰せられ候ふ。御慈悲のきはまりなり。これをききながらこころえのゆかぬは[[無宿善の機]]なり。

一　御文のこと、聖教は読みちがへもあり、こころえもゆかぬところもあり。御文は読みちがへもあるまじきと仰せられ候ふ。御慈悲のきはまりなり。これをききながらこころえのゆかぬは[[無宿善の機]]なり。

一　御一流の御こと、このとしまで聴聞申し候うて、御ことばをうけたまは

一　御一流の御こと、このとしまで聴聞申し候うて、御ことばをうけたまは

り候へども、ただ心が御ことばのごとくならずと、法敬申され候ふ。

り候へども、ただ心が御ことばのごとくならずと、法敬申され候ふ。

一　実如上人、[[細々，さいさい|さいさい]]仰せられ候ふ。仏法のこと、わがこころにまかせずたしなめと御掟なり。こころにまかせては、[[さてなり]]。すなはちこころにまかせずたしなむ心は他力なり。

一　実如上人、[[細々，さいさい|さいさい]]仰せられ候ふ。仏法のこと、わがこころにまかせずたしなめと御掟なり。こころにまかせては、[[さてなり]]。すなはちこころにまかせずたしなむ心は他力なり。

一　御一流の義を承りわけたるひとはあれども、聞きうる人はまれなりといへり。信をうる機まれなりといへる意なり。

一　御一流の義を承りわけたるひとはあれども、聞きうる人はまれなりといへり。信をうる機まれなりといへる意なり。

一　蓮如上人の御掟には、仏法のことをいふに、世間のことに[[とりなす]]人のみなり。それを[[退屈]]せずして、また仏法のことにとりなせと仰せられ候ふなり。

一　蓮如上人の御掟には、仏法のことをいふに、世間のことに[[とりなす]]人のみなり。それを[[退屈]]せずして、また仏法のことにとりなせと仰せられ候ふなり。

一　たれのともがらも、われはわろきとおもふもの、一人としてもあるべからず。これ[[しかしながら]]、聖人（親鸞）の御[[罰]]をかうぶりたるすがたなり。これによりて一人づつも心中をひるがへさずは、ながき世〔は〕[[泥梨]]にふかく沈

一　たれのともがらも、われはわろきとおもふもの、一人としてもあるべからず。これ[[しかしながら]]、聖人（親鸞）の御[[罰]]をかうぶりたるすがたなり。これによりて一人づつも心中をひるがへさずは、ながき世〔は〕[[泥梨]]にふかく沈

一　「皆ひとのまことの信はさらになし　ものしりがほの風情にてこそ」。[[近松殿]]の[[堺]]へ御下向のとき、[[なげし]]に[[おして]]おかせられ候ふ。あとにてこのこころをおもひいだし候へと御掟なり。[[光応寺殿]]の御不審なり。「ものしりがほ」とは、われはこころえたりとおもふがこのこころなり。

一　「皆ひとのまことの信はさらになし　ものしりがほの風情にてこそ」。[[近松殿]]の[[堺]]へ御下向のとき、[[なげし]]に[[おして]]おかせられ候ふ。あとにてこのこころをおもひいだし候へと御掟なり。[[光応寺殿]]の御不審なり。「ものしりがほ」とは、われはこころえたりとおもふがこのこころなり。

一　法敬坊、安心のとほりばかり讃嘆するひとなり。「[[言南無者の釈|言南無者]]」（玄義分 三二五）の釈をば、いつもはづさず引く人なり。それさへ、[[さしよせて]]申せと、蓮如上人御掟候ふなり。ことばすくなに安心のとほり申せと御掟なり。

一　法敬坊、安心のとほりばかり讃嘆するひとなり。「[[言南無者の釈|言南無者]]」（玄義分 三二五）の釈をば、いつもはづさず引く人なり。それさへ、[[さしよせて]]申せと、蓮如上人御掟候ふなり。ことばすくなに安心のとほり申せと御掟なり。

一　[[善宗]]申され候ふ。[[こころざし申し候ふとき]]、わがものがほにもちてまゐるははづかしきよし申され候ふ。なにとしたることにて候ふやと申し候へば、これはみな[[御用のもの]]にてあるを、わがもののやうにもちてまゐると申され候

一　[[善宗]]申され候ふ。[[こころざし申し候ふとき]]、わがものがほにもちてまゐるははづかしきよし申され候ふ。なにとしたることにて候ふやと申し候へば、これはみな[[御用のもの]]にてあるを、わがもののやうにもちてまゐると申され候

一　[[津国郡家の主計]]と申す人あり。ひまなく念仏申すあひだ、ひげを剃るとき切らぬことなし。わすれて念仏申すなり。人は口はたらかねば念仏もすこしのあひだも申されぬかと、こころもとなきよしに候ふ。

一　[[津国郡家の主計]]と申す人あり。ひまなく念仏申すあひだ、ひげを剃るとき切らぬことなし。わすれて念仏申すなり。人は口はたらかねば念仏もすこしのあひだも申されぬかと、こころもとなきよしに候ふ。

一　[[仏法者]]申され候ふ。わかきとき仏法はたしなめと候ふ。としよれば行歩もかなはず、ねぶたくもあるなり。ただわかきときたしなめと候ふ。

一　[[仏法者]]申され候ふ。わかきとき仏法はたしなめと候ふ。としよれば行歩もかなはず、ねぶたくもあるなり。ただわかきときたしなめと候ふ。

一　衆生をしつらひたまふ。「[[しつらふ]]」といふは、衆生のこころをそのままおきて、よきこころを御くはへ候ひて、[[よくめされ候|よくめされ候ふ]]。衆生のこころをみなとりかへて、仏智ばかりにて、別に御みたて候ふことにてはなく候ふ。

一　衆生をしつらひたまふ。「[[しつらふ]]」といふは、衆生のこころをそのままおきて、よきこころを御くはへ候ひて、[[よくめされ候|よくめされ候ふ]]。衆生のこころをみなとりかへて、仏智ばかりにて、別に御みたて候ふことにてはなく候ふ。

一　わが妻子ほど[[不便]]なることなし。それを[[勧化]]せぬはあさましきことなり。

一　わが妻子ほど[[不便]]なることなし。それを[[勧化]]せぬはあさましきことなり。

一　慶聞坊のいはれ候ふ。信はなくて[[まぎれまはる]]と、日に日に地獄がちかくなる。まぎれまはるがあらはれば地獄がちかくなるなり。[[うちみは]]信不信みえず候ふ。とほくいのちをもたずして、今日ばかりと思へと、古き[[こころざしのひと]]申され候ふ。

一　慶聞坊のいはれ候ふ。信はなくて[[まぎれまはる]]と、日に日に地獄がちかくなる。まぎれまはるがあらはれば地獄がちかくなるなり。[[うちみは]]信不信みえず候ふ。とほくいのちをもたずして、今日ばかりと思へと、古き[[こころざしのひと]]申され候ふ。

一　一度の[[ちかひ]]が一期のちかひなり。一度のたしなみが一期のたしなみなり。そのゆゑは、そのままいのちをはれば一期のちかひになるによりてなり。

一　一度の[[ちかひ]]が一期のちかひなり。一度のたしなみが一期のたしなみなり。そのゆゑは、そのままいのちをはれば一期のちかひになるによりてなり。

一　「今日ばかりおもふこころを忘るなよ　[[さなきは]]いとどのぞみおほきに」［覚如様御歌］

一　「今日ばかりおもふこころを忘るなよ　[[さなきは]]いとどのぞみおほきに」［覚如様御歌］

一　[[他流]]には、名号よりは絵像、絵像よりは木像といふなり。[[当流]]には、木像よりは絵像、絵像よりは名号といふなり。

一　[[他流]]には、名号よりは絵像、絵像よりは木像といふなり。[[当流]]には、木像よりは絵像、絵像よりは名号といふなり。

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一　法印兼縁、幼少の時、[[二俣]]にてあまた[[小名号]]を申し入れ候ふ時、信心やある、おのおのと仰せられ候ふ。信心は〔その〕体名号にて候ふ。いま思ひあはせ候ふとの義に候ふ。

一　法印兼縁、幼少の時、[[二俣]]にてあまた[[小名号]]を申し入れ候ふ時、信心やある、おのおのと仰せられ候ふ。信心は〔その〕体名号にて候ふ。いま思ひあはせ候ふとの義に候ふ。

一　蓮如上人仰せられ候ふ。[[堺の日向屋]]は三十万貫を持ちたれども、死にたるが仏には成り候ふまじ。[[大和の了妙]]は帷一つをも着かね候へども、このたび仏に成るべきよと、仰せられ候ふよしに候ふ。

一　蓮如上人仰せられ候ふ。[[堺の日向屋]]は三十万貫を持ちたれども、死にたるが仏には成り候ふまじ。[[大和の了妙]]は帷一つをも着かね候へども、このたび仏に成るべきよと、仰せられ候ふよしに候ふ。

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一　蓮如上人へ[[久宝寺の法性]]申され候ふは、一念に後生御たすけ候へと弥陀をたのみたてまつり候ふばかりにて往生一定と存じ候ふ。[[かやうにて御入り候ふか]]と申され候へば、ある人わきより、それはいつものことにて候ふ。別のこと、不審なることなど申され候はでと申され候へば、蓮如上人仰せられ候ふ。それぞとよ、わろきとは。めづらしきことを聞きたくおもひしりたく思ふなり。信のうへにてはいくたびも心中のおもむき、かやうに申さるべきことなるよし仰せられ候ふ。

一　蓮如上人へ[[久宝寺の法性]]申され候ふは、一念に後生御たすけ候へと弥陀をたのみたてまつり候ふばかりにて往生一定と存じ候ふ。[[かやうにて御入り候ふか]]と申され候へば、ある人わきより、それはいつものことにて候ふ。別のこと、不審なることなど申され候はでと申され候へば、蓮如上人仰せられ候ふ。それぞとよ、わろきとは。めづらしきことを聞きたくおもひしりたく思ふなり。信のうへにてはいくたびも心中のおもむき、かやうに申さるべきことなるよし仰せられ候ふ。

一　蓮如上人仰せられ候ふ。一向に[[不信]]のよし申さるる人はよく候ふ。ことばにて安心のとほり申し候ひて、口にはおなじごとくにて、[[まぎれて空しくなるべき人]]を悲しく覚え候ふよし仰せられ候ふなり。

一　蓮如上人仰せられ候ふ。一向に[[不信]]のよし申さるる人はよく候ふ。ことばにて安心のとほり申し候ひて、口にはおなじごとくにて、[[まぎれて空しくなるべき人]]を悲しく覚え候ふよし仰せられ候ふなり。

一　聖人（親鸞）の御一流は阿弥陀如来の御掟なり。されば御文には「[[阿弥陀如来の…|阿弥陀如来の仰せられけるやうは]]」とあそばされ候ふ。

一　聖人（親鸞）の御一流は阿弥陀如来の御掟なり。されば御文には「[[阿弥陀如来の…|阿弥陀如来の仰せられけるやうは]]」とあそばされ候ふ。

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一　蓮如上人、法敬に対せられ仰せられ候ふ。いまこの弥陀をたのめといふことを御教へ候ふ人をしりたるかと仰せられ候ふ。順誓、存ぜずと申され候ふ。いま御をしへ候ふ人をいふべし。[[ 鍛冶番匠|鍛冶・番匠]]なども物ををしふるに[[物]]を出すものなり。一大事のことなり。なんぞものをまゐらせよ。いふべきと仰せられ候ふ時、順誓、[[なかなか]][[なにたるものなりとも]]進上いたすべきと申され候ふ。蓮如上人仰せられ候ふ。このことををしふる人は阿弥陀如来にて候ふ。阿弥陀如来のわれをたのめとの御をしへにて候ふよし仰せられ候ふ。

一　蓮如上人、法敬に対せられ仰せられ候ふ。いまこの弥陀をたのめといふことを御教へ候ふ人をしりたるかと仰せられ候ふ。順誓、存ぜずと申され候ふ。いま御をしへ候ふ人をいふべし。[[ 鍛冶番匠|鍛冶・番匠]]なども物ををしふるに[[物]]を出すものなり。一大事のことなり。なんぞものをまゐらせよ。いふべきと仰せられ候ふ時、順誓、[[なかなか]][[なにたるものなりとも]]進上いたすべきと申され候ふ。蓮如上人仰せられ候ふ。このことををしふる人は阿弥陀如来にて候ふ。阿弥陀如来のわれをたのめとの御をしへにて候ふよし仰せられ候ふ。

一　法敬坊、蓮如上人へ申され候ふ。[[あそばされ候ふ御名号]]焼けまうし候ふが、六体の仏になりまうし候ふ。不思議なることと申され候へば、前々住上人（蓮如）そのとき仰せられ候ふ。それは不思議にてもなきなり。仏の仏に御成り候ふは不思議にてもなく候ふ。悪凡夫の弥陀をたのむ一念にて仏に成るこそ不思議よと仰せられ候ふなり。

一　法敬坊、蓮如上人へ申され候ふ。[[あそばされ候ふ御名号]]焼けまうし候ふが、六体の仏になりまうし候ふ。不思議なることと申され候へば、前々住上人（蓮如）そのとき仰せられ候ふ。それは不思議にてもなきなり。仏の仏に御成り候ふは不思議にてもなく候ふ。悪凡夫の弥陀をたのむ一念にて仏に成るこそ不思議よと仰せられ候ふなり。

一　[[朝夕]]は如来・聖人（親鸞）の[[御用]]にて候ふあひだ、[[冥加]]のかたをふかく

一　[[朝夕]]は如来・聖人（親鸞）の[[御用]]にて候ふあひだ、[[冥加]]のかたをふかく

一　前々住上人仰せられ候ふ。「[[噛むとはしるとも、呑むとしらすな]]」といふことがあるぞ。妻子を帯し魚鳥を服し、罪障の身なりといひて、さのみ思ひのままにはあるまじきよし仰せられ候ふ。

一　前々住上人仰せられ候ふ。「[[噛むとはしるとも、呑むとしらすな]]」といふことがあるぞ。妻子を帯し魚鳥を服し、罪障の身なりといひて、さのみ思ひのままにはあるまじきよし仰せられ候ふ。

一　仏法には無我と仰せられ候ふ。われと思ふことはいささかあるまじきことなり。われはわろしとおもふ人なし。これ聖人（親鸞）の御罰なりと、御詞候ふ。他力の御すすめにて候ふ。ゆめゆめわれといふことはあるまじく候ふ。無我といふこと、前住上人（実如）もたびたび仰せられ候ふ。

一　仏法には無我と仰せられ候ふ。われと思ふことはいささかあるまじきことなり。われはわろしとおもふ人なし。これ聖人（親鸞）の御罰なりと、御詞候ふ。他力の御すすめにて候ふ。ゆめゆめわれといふことはあるまじく候ふ。無我といふこと、前住上人（実如）もたびたび仰せられ候ふ。

一　「日ごろしれるところを善知識にあひて問へば徳分あるなり」（浄土見聞集・意）。しれるところを問へば[[徳分]]あるといへるが殊勝のことばなりと、蓮如上人仰せられ候ふ。知らざるところを問はばいかほど殊勝なることあるべきと仰せられ候ふ。

一　「日ごろしれるところを善知識にあひて問へば徳分あるなり」（浄土見聞集・意）。しれるところを問へば[[徳分]]あるといへるが殊勝のことばなりと、蓮如上人仰せられ候ふ。知らざるところを問はばいかほど殊勝なることあるべきと仰せられ候ふ。

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一　聴聞を申すも大略わがためとはおもはず、ややもすれば[[法文]]の一つをもききおぼえて、人に[[うりごころ]]あるとの仰せごとにて候ふ。

一　聴聞を申すも大略わがためとはおもはず、ややもすれば[[法文]]の一つをもききおぼえて、人に[[うりごころ]]あるとの仰せごとにて候ふ。

一　一心にたのみたてまつる機は、如来のよく[[しろしめす]]なり。弥陀のただしろしめすやうに心中をもつべし。冥加を[[おそろしく存ずべきこと]]にて候ふとの義に候ふ。

一　一心にたのみたてまつる機は、如来のよく[[しろしめす]]なり。弥陀のただしろしめすやうに心中をもつべし。冥加を[[おそろしく存ずべきこと]]にて候ふとの義に候ふ。

一　前住上人（実如）仰せられ候ふ。前々住（蓮如）より御相続の義は[[別義]]なきなり。ただ弥陀たのむ一念の義よりほかは別義なく候ふ。これよりほか御存知なく候ふ。いかやうの御誓言もあるべきよし仰せられ候ふ。

一　前住上人（実如）仰せられ候ふ。前々住（蓮如）より御相続の義は[[別義]]なきなり。ただ弥陀たのむ一念の義よりほかは別義なく候ふ。これよりほか御存知なく候ふ。いかやうの御誓言もあるべきよし仰せられ候ふ。

一　おなじく仰せられ候ふ。[[凡夫往生]]、ただたのむ一念にて仏に成らぬことあらば、いかなる御誓言をも仰せらるべき。証拠は南無阿弥陀仏なり。[[十方]]の諸仏、証人にて候ふ。

一　おなじく仰せられ候ふ。[[凡夫往生]]、ただたのむ一念にて仏に成らぬことあらば、いかなる御誓言をも仰せらるべき。証拠は南無阿弥陀仏なり。[[十方]]の諸仏、証人にて候ふ。

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一　蓮如上人仰せられ候ふ。物をいへいへと仰せられ候ふ。物を申さぬものはおそろしきと仰せられ候ふ。[[信不信]]ともに、ただ物をいへと仰せられ候ふ。物を申せば心底もきこえ、また人にも直さるるなり。ただ物を申せと仰せられ候ふ。

一　蓮如上人仰せられ候ふ。物をいへいへと仰せられ候ふ。物を申さぬものはおそろしきと仰せられ候ふ。[[信不信]]ともに、ただ物をいへと仰せられ候ふ。物を申せば心底もきこえ、また人にも直さるるなり。ただ物を申せと仰せられ候ふ。

一　蓮如上人仰せられ候ふ。仏法は、[[つとめ]]の[[節はかせ]]もしらでよくすると思ふなり。つとめの節わろきよしを仰せられ、慶聞坊をいつも[[とりつめて|とりつめ]] 仰せられつるよしに候ふ。それにつきて蓮如上人仰せられ候ふ。[[一向にわろき人]]は違ひなどといふこともなし。ただわろきまでなり。わろしとも仰せごともなきなり。法義をもこころにかけ、ちとこころえもあるうへの違ひが、ことのほかの違ひなりと仰せられ候ふよしに候ふ。

一　蓮如上人仰せられ候ふ。仏法は、[[つとめ]]の[[節はかせ]]もしらでよくすると思ふなり。つとめの節わろきよしを仰せられ、慶聞坊をいつも[[とりつめて|とりつめ]] 仰せられつるよしに候ふ。それにつきて蓮如上人仰せられ候ふ。[[一向にわろき人]]は違ひなどといふこともなし。ただわろきまでなり。わろしとも仰せごともなきなり。法義をもこころにかけ、ちとこころえもあるうへの違ひが、ことのほかの違ひなりと仰せられ候ふよしに候ふ。

一　人のこころえのとほり申されけるに、わがこころはただ籠に水を入れ候ふやうに、仏法の御座敷にてはありがたくもたふとくも存じ候ふが、[[やがて]]もとの心中になされ候ふと、申され候ふところに、前々住上人（蓮如）仰せられ

一　人のこころえのとほり申されけるに、わがこころはただ籠に水を入れ候ふやうに、仏法の御座敷にてはありがたくもたふとくも存じ候ふが、[[やがて]]もとの心中になされ候ふと、申され候ふところに、前々住上人（蓮如）仰せられ

一　聖教を拝見申すも、[[うかうかと]]拝みまうすはその詮なし。蓮如上人は、ただ聖教をば[[くれくれ]]と仰せられ候ふ。また百遍これをみれば[[義理]]おのづから得ると申すこともあれば、心をとどむべきことなり。聖教は[[句面のごとく]]こころうべし。そのうへにて[[師伝]][[口業]]はあるべきなり。[[私にして会釈すること]]しかるべからざることなり。

一　聖教を拝見申すも、[[うかうかと]]拝みまうすはその詮なし。蓮如上人は、ただ聖教をば[[くれくれ]]と仰せられ候ふ。また百遍これをみれば[[義理]]おのづから得ると申すこともあれば、心をとどむべきことなり。聖教は[[句面のごとく]]こころうべし。そのうへにて[[師伝]][[口業]]はあるべきなり。[[私にして会釈すること]]しかるべからざることなり。

一　前々住上人（蓮如）仰せられ候ふ。他力信心他力信心とみれば、あやまりなきよし仰せられ候ふ。

一　前々住上人（蓮如）仰せられ候ふ。他力信心他力信心とみれば、あやまりなきよし仰せられ候ふ。

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[[触光柔軟の願]]（第三十三願）候ふときは、心もやはらぐべきことなり。されば縁覚は独覚のさとりなるがゆゑに、仏に成らざるなり。

[[触光柔軟の願]]（第三十三願）候ふときは、心もやはらぐべきことなり。されば縁覚は独覚のさとりなるがゆゑに、仏に成らざるなり。

一　一句一言も申すものは、われと思ひて物を申すなり。信のうへはわれはわろしと思ひ、また報謝と思ひ、ありがたさのあまりを人にも申すことなるべ

一　一句一言も申すものは、われと思ひて物を申すなり。信のうへはわれはわろしと思ひ、また報謝と思ひ、ありがたさのあまりを人にも申すことなるべ

一　信もなくて、人に信をとられよとられよと申すは、われは物をもたずして人に物をとらすべきといふの心なり。人、[[承引]]あるべからずと、前住上人（蓮如）申さると順誓に仰せられ候ひき。「自信教人信」（礼讃 六七六）と候ふ時は、まづわが信心決定して、人にも教へて仏恩になるとのことに候ふ。自身の安心決定して教ふるは、すなはち「[[大悲伝普化]]」（同）の道理なるよし、おなじく仰せられ候ふ。

一　信もなくて、人に信をとられよとられよと申すは、われは物をもたずして人に物をとらすべきといふの心なり。人、[[承引]]あるべからずと、前住上人（蓮如）申さると順誓に仰せられ候ひき。「自信教人信」（礼讃 六七六）と候ふ時は、まづわが信心決定して、人にも教へて仏恩になるとのことに候ふ。自身の安心決定して教ふるは、すなはち「[[大悲伝普化]]」（同）の道理なるよし、おなじく仰せられ候ふ。

一　蓮如上人仰せられ候ふ。聖教よみの聖教よまずあり、聖教よまずの聖<span id="P--1262"></span>

一　蓮如上人仰せられ候ふ。聖教よみの聖教よまずあり、聖教よまずの聖<span id="P--1262"></span>

一　聖教よみの、仏法を申したてたることはなく候ふ。[[尼入道]]のたぐひのたふとやありがたやと申され候ふをききては、人が信をとると、前々住上人（蓮如）仰せられ候ふよしに候ふ。なにもしらねども、仏の[[加備力]]のゆゑに尼入道などのよろこばるるをききては、人も信をとるなり。聖教をよめども、[[名聞]]がさきにたちて心には法なきゆゑに、人の信用なきなり。

一　聖教よみの、仏法を申したてたることはなく候ふ。[[尼入道]]のたぐひのたふとやありがたやと申され候ふをききては、人が信をとると、前々住上人（蓮如）仰せられ候ふよしに候ふ。なにもしらねども、仏の[[加備力]]のゆゑに尼入道などのよろこばるるをききては、人も信をとるなり。聖教をよめども、[[名聞]]がさきにたちて心には法なきゆゑに、人の信用なきなり。

一　蓮如上人仰せられ候ふ。当流には、[[総体]]、[[世間機]]わろし。仏法のうへよりなにごともあひはたらくべきことなるよし仰せられ候ふと［云々］。

一　蓮如上人仰せられ候ふ。当流には、[[総体]]、[[世間機]]わろし。仏法のうへよりなにごともあひはたらくべきことなるよし仰せられ候ふと［云々］。

一　おなじく仰せられ候ふ。世間にて、[[時宜しかるべき]]はよき人なりといへど

一　おなじく仰せられ候ふ。世間にて、[[時宜しかるべき]]はよき人なりといへど

一　[[君]]を思ふはわれを思ふなり。善知識の仰せに随ひ信をとれば、極楽へまゐるものなり。

一　[[君]]を思ふはわれを思ふなり。善知識の仰せに随ひ信をとれば、極楽へまゐるものなり。

一　久遠劫より久しき仏は阿弥陀仏なり。仮に[[果後の方便]]によりて誓願をまうけたまふことなり。

一　久遠劫より久しき仏は阿弥陀仏なり。仮に[[果後の方便]]によりて誓願をまうけたまふことなり。

一　前々住上人（蓮如）仰せられ候ふ。弥陀をたのめる人は、南無阿弥陀仏に[[身をばまるめたる]]ことなりと仰せられ候ふと［云々］。いよいよ冥加を存ずべきのよしに候ふ。

一　前々住上人（蓮如）仰せられ候ふ。弥陀をたのめる人は、南無阿弥陀仏に[[身をばまるめたる]]ことなりと仰せられ候ふと［云々］。いよいよ冥加を存ずべきのよしに候ふ。

一　[[丹後法眼蓮応|丹後法眼　［蓮応］]]　衣装ととのへられ、前々住上人の御前に[[伺候]]候ひし

一　[[丹後法眼蓮応|丹後法眼　［蓮応］]]　衣装ととのへられ、前々住上人の御前に[[伺候]]候ひし

一　前々住上人（蓮如）仰せられ候ふ。仏法のうへには、事ごとにつけて[[空おそろしきこと]]と存じ候ふべく候ふ。ただよろづにつけて油断あるまじきことと存じ候へのよし、折々に仰せられ候ふと［云々］。仏法には明日と申すことあるまじく候ふ。仏法のことはいそげいそげと仰せられ候ふなり。

一　前々住上人（蓮如）仰せられ候ふ。仏法のうへには、事ごとにつけて[[空おそろしきこと]]と存じ候ふべく候ふ。ただよろづにつけて油断あるまじきことと存じ候へのよし、折々に仰せられ候ふと［云々］。仏法には明日と申すことあるまじく候ふ。仏法のことはいそげいそげと仰せられ候ふなり。

一　おなじく仰せに、今日の日はあるまじきと思へと仰せられ候ふ。なにごともかきいそぎて物を御沙汰候ふよしに候ふ。ながながしたることを御嫌ひのよしに候ふ。仏法のうへには、明日のことを今日するやうにいそぎたること、[[賞翫]]なり。

一　おなじく仰せに、今日の日はあるまじきと思へと仰せられ候ふ。なにごともかきいそぎて物を御沙汰候ふよしに候ふ。ながながしたることを御嫌ひのよしに候ふ。仏法のうへには、明日のことを今日するやうにいそぎたること、[[賞翫]]なり。

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一　おなじく仰せにいはく、聖人（親鸞）の[[御影を申す]]は大事のことなり。昔は御本尊よりほかは御座なきことなり。信なくはかならず御罰を蒙るべきよし仰せられ候ふ。

一　おなじく仰せにいはく、聖人（親鸞）の[[御影を申す]]は大事のことなり。昔は御本尊よりほかは御座なきことなり。信なくはかならず御罰を蒙るべきよし仰せられ候ふ。

一　時節到来といふこと、用心をもしてそのうへに事の出でき候ふを、時節到来とはいふべし。無用心にて出でき候ふを時節到来とはいはぬことなり。聴聞を心がけてのうへの宿善・無宿善ともいふことなり。ただ信心はきくにきはまることなるよし仰せのよし候ふ。

一　時節到来といふこと、用心をもしてそのうへに事の出でき候ふを、時節到来とはいふべし。無用心にて出でき候ふを時節到来とはいはぬことなり。聴聞を心がけてのうへの宿善・無宿善ともいふことなり。ただ信心はきくにきはまることなるよし仰せのよし候ふ。

一　前々住上人（蓮如）、法敬に対して仰せられ候ふ。まきたてといふもの知りたるかと。法敬御返事に、まきたてと申すは一度たねを播きて[[手をささぬ]]ものに候ふと申され候ふ。仰せにいはく、それぞ、まきたてわろきなり。人に直されまじきと思ふ心なり。心中をば申しいだして人に直され候はでは、心得の直ることあるべからず。まきたてにては信をとることあるべからずと仰せられ候ふ［云々］。

一　前々住上人（蓮如）、法敬に対して仰せられ候ふ。まきたてといふもの知りたるかと。法敬御返事に、まきたてと申すは一度たねを播きて[[手をささぬ]]ものに候ふと申され候ふ。仰せにいはく、それぞ、まきたてわろきなり。人に直されまじきと思ふ心なり。心中をば申しいだして人に直され候はでは、心得の直ることあるべからず。まきたてにては信をとることあるべからずと仰せられ候ふ［云々］。

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一　何ともして人に直され候ふやうに心中を持つべし。わが心中をば[[同行]]のなかへ打ちいだしておくべし。[[下としたる人]]のいふことをば用ゐずしてかならず[[腹立]]するなり。あさましきことなり。ただ人に直さるるやうに心中を持つべき義に候ふ。

一　何ともして人に直され候ふやうに心中を持つべし。わが心中をば[[同行]]のなかへ打ちいだしておくべし。[[下としたる人]]のいふことをば用ゐずしてかならず[[腹立]]するなり。あさましきことなり。ただ人に直さるるやうに心中を持つべき義に候ふ。

一　人の、前々住上人（蓮如）へ申され候ふ。一念の処決定にて候ふ。ややもすれば、善知識の御ことばをおろそかに存じ候ふよし申され候へば、仰せられ候ふは、もつとも信のうへは[[崇仰]]の心あるべきなり。さりながら、凡夫の心にては、かやうの心中のおこらん時は勿体なきこととおもひすつべしと仰せられしと［云々］。

一　人の、前々住上人（蓮如）へ申され候ふ。一念の処決定にて候ふ。ややもすれば、善知識の御ことばをおろそかに存じ候ふよし申され候へば、仰せられ候ふは、もつとも信のうへは[[崇仰]]の心あるべきなり。さりながら、凡夫の心にては、かやうの心中のおこらん時は勿体なきこととおもひすつべしと仰せられしと［云々］。

一　蓮如上人、兼縁に対せられ仰せられ候ふ。たとひ[[木の皮をきるいろめ]]なりとも、[[なわびそ]]。ただ弥陀をたのむ一念をよろこぶべきよし仰せられ候ふ。

一　蓮如上人、兼縁に対せられ仰せられ候ふ。たとひ[[木の皮をきるいろめ]]なりとも、[[なわびそ]]。ただ弥陀をたのむ一念をよろこぶべきよし仰せられ候ふ。

一　前々住上人仰せられ候ふ。上下老若によらず、後生は油断にてしそん<span id="P--1267"></span>

一　前々住上人仰せられ候ふ。上下老若によらず、後生は油断にてしそん<span id="P--1267"></span>

一　前々住上人（蓮如）御口のうち御煩ひ候ふに、をりふし御目をふさがれ、ああ、と仰せられ候ふ。人の信なきことを思ふことは、身をきりさくやうにかなしきよと仰せられ候ふよしに候ふ。

一　前々住上人（蓮如）御口のうち御煩ひ候ふに、をりふし御目をふさがれ、ああ、と仰せられ候ふ。人の信なきことを思ふことは、身をきりさくやうにかなしきよと仰せられ候ふよしに候ふ。

一　おなじく仰せに、われは人の機を[[当機をかがみ|かがみ]]、人にしたがひて仏法を御聞かせ候ふよし仰せられ候ふ。いかにも人のすきたることなど申させられ、うれしやと存じ候ふところに、また仏法のことを仰せられ候ふ。いろいろ御方便にて、人に法を御聞かせ候ひつるよしに候ふ。

一　おなじく仰せに、われは人の機を[[当機をかがみ|かがみ]]、人にしたがひて仏法を御聞かせ候ふよし仰せられ候ふ。いかにも人のすきたることなど申させられ、うれしやと存じ候ふところに、また仏法のことを仰せられ候ふ。いろいろ御方便にて、人に法を御聞かせ候ひつるよしに候ふ。

一　前々住上人仰せられ候ふ。人々の仏法を信じてわれによろこばせんと思へり。それはわろし。信をとれば自身の[[勝徳]]なり。さりながら、信をとらば、恩にも御うけあるべきと仰せられ候ふ。また、聞きたくもなきことなりとも、まことに信をとるべきならば、きこしめすべきよし仰せられ候ふ。

一　前々住上人仰せられ候ふ。人々の仏法を信じてわれによろこばせんと思へり。それはわろし。信をとれば自身の[[勝徳]]なり。さりながら、信をとらば、恩にも御うけあるべきと仰せられ候ふ。また、聞きたくもなきことなりとも、まことに信をとるべきならば、きこしめすべきよし仰せられ候ふ。

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一　おなじく仰せに、まことに一人なりとも信をとるべきならば、身を捨てよ。それはすたらぬと仰せられ候ふ。

一　おなじく仰せに、まことに一人なりとも信をとるべきならば、身を捨てよ。それはすたらぬと仰せられ候ふ。

一　あるとき仰せられ候ふ。御門徒の心得を直すときこしめして、[[老の皺をのべ候ふ]]と仰せられ候ふ。

一　あるとき仰せられ候ふ。御門徒の心得を直すときこしめして、[[老の皺をのべ候ふ]]と仰せられ候ふ。

一　ある御門徒衆に御尋ね候ふ。そなたの坊主、心得の直りたるをうれしく存ずるかと御尋ね候へば、申され候ふ。まことに心得を直され、法義を心にかけられ候ふ。一段ありがたくうれしく存じ候ふよし申され候ふ。その時仰せられ候ふ。われはなほうれしく思ふよと仰せられ候ふ。

一　ある御門徒衆に御尋ね候ふ。そなたの坊主、心得の直りたるをうれしく存ずるかと御尋ね候へば、申され候ふ。まことに心得を直され、法義を心にかけられ候ふ。一段ありがたくうれしく存じ候ふよし申され候ふ。その時仰せられ候ふ。われはなほうれしく思ふよと仰せられ候ふ。

一　をかしき[[事態]]をもさせられ、仏法に退屈仕り候ふものの心をもくつろげ、その気をも失はして、またあたらしく法を仰せられ候ふ。まことに[[善巧方便]]、ありがたきことなり。

一　をかしき[[事態]]をもさせられ、仏法に退屈仕り候ふものの心をもくつろげ、その気をも失はして、またあたらしく法を仰せられ候ふ。まことに[[善巧方便]]、ありがたきことなり。

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一　[[天王寺土塔会]]、前々住上人（蓮如）御覧候ひて仰せられ候ふ。あれほどのおほき人ども地獄へおつべしと、[[不便]]に思し召し候ふよし仰せられ候ふ。またそのなかに御門徒の人は仏に成るべしと仰せられ候ふ。これまたありがたき仰せにて候ふ。

一　[[天王寺土塔会]]、前々住上人（蓮如）御覧候ひて仰せられ候ふ。あれほどのおほき人ども地獄へおつべしと、[[不便]]に思し召し候ふよし仰せられ候ふ。またそのなかに御門徒の人は仏に成るべしと仰せられ候ふ。これまたありがたき仰せにて候ふ。

====119-200====

====119-200====

一　前々住上人（蓮如）[[御法談]]以後、四五人の[[御兄弟]]へ仰せられ候ふ。四五人の衆[[寄合ひ]][[談合]]せよ。かならず五人は五人ながら[[意巧に]]きくものなるあひだ、よくよく談合すべきのよし仰せられ候ふ。

一　前々住上人（蓮如）[[御法談]]以後、四五人の[[御兄弟]]へ仰せられ候ふ。四五人の衆[[寄合ひ]][[談合]]せよ。かならず五人は五人ながら[[意巧に]]きくものなるあひだ、よくよく談合すべきのよし仰せられ候ふ。

一　[[たとひなきことなりとも]]、人申し候はば、[[当座領掌すべし]]。当座に詞を返せば、ふたたびいはざるなり。人のいふことをばただふかく[[用心]]すべきなり。これにつきてある人、あひたがひにあしきことを申すべしと、[[契約]]候ひしところに、すなはち一人のあしきさまなること申しければ、われはさやうに存ぜざれども、人の申すあひださやうに候ふと申す。さればこの返答あしきとのことに候ふ。さなきことなりとも、当座はさぞと申すべきことなり。

一　[[たとひなきことなりとも]]、人申し候はば、[[当座領掌すべし]]。当座に詞を返せば、ふたたびいはざるなり。人のいふことをばただふかく[[用心]]すべきなり。これにつきてある人、あひたがひにあしきことを申すべしと、[[契約]]候ひしところに、すなはち一人のあしきさまなること申しければ、われはさやうに存ぜざれども、人の申すあひださやうに候ふと申す。さればこの返答あしきとのことに候ふ。さなきことなりとも、当座はさぞと申すべきことなり。

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一　一宗の繁昌と申すは、人のおほくあつまり、[[威のおほきなること]]にてはなく候ふ。一人なりとも、人の信をとるが、一宗の繁昌に候ふ。しかれば、「[[専修正行]]の繁昌は[[遺弟]]の[[念力]]より成ず」（報恩講私記）とあそばされおかれ候ふ。

一　一宗の繁昌と申すは、人のおほくあつまり、[[威のおほきなること]]にてはなく候ふ。一人なりとも、人の信をとるが、一宗の繁昌に候ふ。しかれば、「[[専修正行]]の繁昌は[[遺弟]]の[[念力]]より成ず」（報恩講私記）とあそばされおかれ候ふ。

一　前々住上人（蓮如）仰せられ候ふ。[[聴聞]][[心に入れ]]まうさんと思ふ人はあり、信をとらんずると思ふ人なし。されば極楽はたのしむと聞きて、まゐらんと願ひのぞむ人は仏に成らず、弥陀をたのむ人は仏に成ると仰せられ候ふ。

一　前々住上人（蓮如）仰せられ候ふ。[[聴聞]][[心に入れ]]まうさんと思ふ人はあり、信をとらんずると思ふ人なし。されば極楽はたのしむと聞きて、まゐらんと願ひのぞむ人は仏に成らず、弥陀をたのむ人は仏に成ると仰せられ候ふ。

一　聖教を[[すきこしらへもちたる]]人の子孫には、[[仏法者]]いでくるものなり。

一　聖教を[[すきこしらへもちたる]]人の子孫には、[[仏法者]]いでくるものなり。

一　[[御文]]は如来の[[直説]]なりと存ずべきのよしに候ふ。[[形をみれば法然詞を聞けば弥陀の直説|形をみれば法然、詞を聞けば弥陀の直説]]といへり。

一　[[御文]]は如来の[[直説]]なりと存ずべきのよしに候ふ。[[形をみれば法然詞を聞けば弥陀の直説|形をみれば法然、詞を聞けば弥陀の直説]]といへり。

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一　蓮如上人御病中に、[[慶聞]]に、なんぞ物をよめと仰せられ候ふとき、御文をよみまうすべきかと申され候ふ。さらばよみまうせと仰せられ候ふ。三通二度づつ六遍よませられて仰せられ候ふ。わがつくりたるものなれども、殊勝なるよと仰せられ候ふ。

一　蓮如上人御病中に、[[慶聞]]に、なんぞ物をよめと仰せられ候ふとき、御文をよみまうすべきかと申され候ふ。さらばよみまうせと仰せられ候ふ。三通二度づつ六遍よませられて仰せられ候ふ。わがつくりたるものなれども、殊勝なるよと仰せられ候ふ。

一　順誓申されしと［云々］。常にはわがまへにてはいはずして、[[後言]]いふとて[[腹立]]することなり。われはさやうには存ぜず候ふ。わがまへにて申しにくくは、かげにてなりともわがわろきことを申されよ。聞きて心中をなほすべきよし申され候ふ。

一　順誓申されしと［云々］。常にはわがまへにてはいはずして、[[後言]]いふとて[[腹立]]することなり。われはさやうには存ぜず候ふ。わがまへにて申しにくくは、かげにてなりともわがわろきことを申されよ。聞きて心中をなほすべきよし申され候ふ。

一　前々住上人（蓮如）仰せられ候ふ。仏法のためと思し召し候へば、なにたる御辛労をも御辛労とは思し召されぬよし仰せられ候ふ。御[[心まめにて]]、なにごとも御沙汰候ふよしなり。

一　前々住上人（蓮如）仰せられ候ふ。仏法のためと思し召し候へば、なにたる御辛労をも御辛労とは思し召されぬよし仰せられ候ふ。御[[心まめにて]]、なにごとも御沙汰候ふよしなり。

一　法には[[あらめなり|あらめなる]]がわろし。[[世間には…|世間には微細なるといへども]]、仏法には微細<span id="P--1273"></span>

一　法には[[あらめなり|あらめなる]]がわろし。[[世間には…|世間には微細なるといへども]]、仏法には微細<span id="P--1273"></span>

一　とほきはちかき道理、ちかきはとほき道理あり。灯台もとくらしとて、仏法を[[不断]]聴聞申す身は、[[御用]]を厚くかうぶりて、いつものことと思ひ、法義におろそかなり。とほく候ふ人は、仏法をききたく大切にもとむるこころありけり。仏法は大切にもとむるよりきくものなり。

一　とほきはちかき道理、ちかきはとほき道理あり。灯台もとくらしとて、仏法を[[不断]]聴聞申す身は、[[御用]]を厚くかうぶりて、いつものことと思ひ、法義におろそかなり。とほく候ふ人は、仏法をききたく大切にもとむるこころありけり。仏法は大切にもとむるよりきくものなり。

一　ひとつことを聞きて、いつもめづらしく[[初めたるやうに]]、[[信のうへ]]にはあるべきなり。ただ珍しきことをききたく思ふなり。ひとつことをいくたび聴聞申すとも、めづらしく初めたるやうにあるべきなり。

一　ひとつことを聞きて、いつもめづらしく[[初めたるやうに]]、[[信のうへ]]にはあるべきなり。ただ珍しきことをききたく思ふなり。ひとつことをいくたび聴聞申すとも、めづらしく初めたるやうにあるべきなり。

一　[[赤尾の道宗|道宗]]は、ただ一つ御詞をいつも聴聞申すが、初めたるやうにありがたきよし申され候ふ。

一　[[赤尾の道宗|道宗]]は、ただ一つ御詞をいつも聴聞申すが、初めたるやうにありがたきよし申され候ふ。

一　念仏申すも、人の[[名聞げに]]おもはれんと思ひてたしなむが[[大儀]]なるよし、

一　念仏申すも、人の[[名聞げに]]おもはれんと思ひてたしなむが[[大儀]]なるよし、

一　[[同行]][[同侶]]の目をはぢて[[冥慮]]をおそれず。ただ[[冥見]]をおそろしく存ずべきことなり。

一　[[同行]][[同侶]]の目をはぢて[[冥慮]]をおそれず。ただ[[冥見]]をおそろしく存ずべきことなり。

一　たとひ[[正義]]たりとも、[[しげからんこと]]をば停止すべきよし候ふ。まして世間の儀停止候はぬことしかるべからず。いよいよ増長すべきは信心にて候ふ。

一　たとひ[[正義]]たりとも、[[しげからんこと]]をば停止すべきよし候ふ。まして世間の儀停止候はぬことしかるべからず。いよいよ増長すべきは信心にて候ふ。

一　蓮如上人仰せられ候ふ。仏法には[[まゐらせ心]]わろし。これをして御心に叶はんと思ふ心なり。仏法のうへはなにごとも報謝と存ずべきなりと［云々］。

一　蓮如上人仰せられ候ふ。仏法には[[まゐらせ心]]わろし。これをして御心に叶はんと思ふ心なり。仏法のうへはなにごとも報謝と存ずべきなりと［云々］。

一　人の身には[[眼耳鼻身舌意|眼・耳・鼻・舌・身・意]]の[[六賊]]ありて善心をうばふ。これは諸行のことなり。念仏はしからず。[[仏智の心]]をうるゆゑに、[[貪瞋痴]]の煩悩をば仏の方より刹那に消したまふなり。ゆゑに「[[貪瞋煩悩中…|貪瞋煩悩中　能生清浄願往生心]]」（散善義 四六八）といへり。「正信偈」には、「[[譬如日光覆雲霧…|譬如日光覆雲霧　雲霧之下明無闇]]」

一　人の身には[[眼耳鼻身舌意|眼・耳・鼻・舌・身・意]]の[[六賊]]ありて善心をうばふ。これは諸行のことなり。念仏はしからず。[[仏智の心]]をうるゆゑに、[[貪瞋痴]]の煩悩をば仏の方より刹那に消したまふなり。ゆゑに「[[貪瞋煩悩中…|貪瞋煩悩中　能生清浄願往生心]]」（散善義 四六八）といへり。「正信偈」には、「[[譬如日光覆雲霧…|譬如日光覆雲霧　雲霧之下明無闇]]」

一　一句一言を聴聞するとも、ただ[[得手に]]法を聞くなり。ただよくきき、心中のとほりを同行にあひ談合すべきことなりと［云々］。

一　一句一言を聴聞するとも、ただ[[得手に]]法を聞くなり。ただよくきき、心中のとほりを同行にあひ談合すべきことなりと［云々］。

一　前々住上人（蓮如）仰せられ候ふ。神にも仏にも馴れては、手ですべきことを足にてするぞと仰せられける。如来・聖人（親鸞）・善知識にも馴れまうすほど御こころやすく思ふなり。馴れまうすほどいよいよ[[渇仰]]の心をふかくはこぶべきこともつともなるよし仰せられ候ふ。

一　前々住上人（蓮如）仰せられ候ふ。神にも仏にも馴れては、手ですべきことを足にてするぞと仰せられける。如来・聖人（親鸞）・善知識にも馴れまうすほど御こころやすく思ふなり。馴れまうすほどいよいよ[[渇仰]]の心をふかくはこぶべきこともつともなるよし仰せられ候ふ。

一　口と身のはたらきとは似するものなり。[[心根]]がよくなりがたきものなり。[[涯分]]、心の方を嗜みまうすべきことなりと［云々］。

一　口と身のはたらきとは似するものなり。[[心根]]がよくなりがたきものなり。[[涯分]]、心の方を嗜みまうすべきことなりと［云々］。

一　衣装等にいたるまで、わが物と思ひ踏みたたくること[[あさましき]]ことなり。ことごとく聖人の[[御用のもの|御用物]]にて候ふあひだ、前々住上人は召し物など御<span id="P--1276"></span>

一　衣装等にいたるまで、わが物と思ひ踏みたたくること[[あさましき]]ことなり。ことごとく聖人の[[御用のもの|御用物]]にて候ふあひだ、前々住上人は召し物など御<span id="P--1276"></span>

一　[[王法]]は[[額にあてよ]]、仏法は内心にふかく蓄へよとの仰せに候ふ。[[仁義]]といふことも、[[端正]]あるべきことなるよしに候ふ。

一　[[王法]]は[[額にあてよ]]、仏法は内心にふかく蓄へよとの仰せに候ふ。[[仁義]]といふことも、[[端正]]あるべきことなるよしに候ふ。

一　蓮如上人御若年のころ、御[[迷惑]]のことにて候ひし。ただ[[御代]]にて仏法を[[仰せたてられん]]と思し召し候ふ御念力一つにて御繁昌候ふ。御辛労ゆゑに候ふ。

一　蓮如上人御若年のころ、御[[迷惑]]のことにて候ひし。ただ[[御代]]にて仏法を[[仰せたてられん]]と思し召し候ふ御念力一つにて御繁昌候ふ。御辛労ゆゑに候ふ。

一　御病中に蓮如上人仰せられ候ふ。御代に仏法を是非とも御[[再興]]あらんと思し召し候ふ御念力一つにて、かやうにいままでみなみな心やすくあることは、[[この法師]]が[[冥加]]に叶ふによりてのことなりと御自讃ありと［云々］。

一　御病中に蓮如上人仰せられ候ふ。御代に仏法を是非とも御[[再興]]あらんと思し召し候ふ御念力一つにて、かやうにいままでみなみな心やすくあることは、[[この法師]]が[[冥加]]に叶ふによりてのことなりと御自讃ありと［云々］。

一　前々住上人（蓮如）は、昔は[[こぶくめ]]をめされ候ふ。白小袖とて御心やすく召され候ふ御ことも御座なく候ふよしに候ふ。いろいろ御かなしかりける

一　前々住上人（蓮如）は、昔は[[こぶくめ]]をめされ候ふ。白小袖とて御心やすく召され候ふ御ことも御座なく候ふよしに候ふ。いろいろ御かなしかりける

一　よろづ御迷惑にて、油をめされ候はんにも御[[用脚]]なく、やうやう京の[[黒木]]をすこしづつ御とり候ひて、聖教など御覧候ふよしに候ふ。また少々は月の光にても聖教を[[あそばす|あそばされ候ふ]]。御足をもたいがい水にて御洗ひ候ふ。また二三日も御膳まゐり候はぬことも候ふよし承りおよび候ふ。

一　よろづ御迷惑にて、油をめされ候はんにも御[[用脚]]なく、やうやう京の[[黒木]]をすこしづつ御とり候ひて、聖教など御覧候ふよしに候ふ。また少々は月の光にても聖教を[[あそばす|あそばされ候ふ]]。御足をもたいがい水にて御洗ひ候ふ。また二三日も御膳まゐり候はぬことも候ふよし承りおよび候ふ。

一　人をも[[かひがひしく]]召しつかはれ候はであるうへは、幼童の[[むつき]]をもひとり御洗ひ候ふなどと仰せられ候ふ。

一　人をも[[かひがひしく]]召しつかはれ候はであるうへは、幼童の[[むつき]]をもひとり御洗ひ候ふなどと仰せられ候ふ。

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一　前々住上人（蓮如）仰せられ候ふ。昔は仏前に[[伺候]]の人は、本は[[紙絹に輻をさし]]着候ふ。いまは白小袖にて、[[結句]]きがへを所持候ふ。これそのころは[[禁裏]]にも御迷惑にて、質をおかれて御用にさせられ候ふと、[[引きごと]]に御沙汰候ふ。

一　前々住上人（蓮如）仰せられ候ふ。昔は仏前に[[伺候]]の人は、本は[[紙絹に輻をさし]]着候ふ。いまは白小袖にて、[[結句]]きがへを所持候ふ。これそのころは[[禁裏]]にも御迷惑にて、質をおかれて御用にさせられ候ふと、[[引きごと]]に御沙汰候ふ。

一　また仰せられ候ふ。御貧しく候ひて、京にて古き綿を御とり候ひて、御一人ひろげ候ふことあり。また御衣はかたの破れたるをめされ候ふ。白き御小袖は美濃絹のわろきをもとめ、やうやう一つめされ候ふよし仰せられ候ふ。当時はかやうのことをもしり候はで、あるべきやうにみなみな存じ候ふほどに、冥加につきまうすべし。一大事なり。

一　また仰せられ候ふ。御貧しく候ひて、京にて古き綿を御とり候ひて、御一人ひろげ候ふことあり。また御衣はかたの破れたるをめされ候ふ。白き御小袖は美濃絹のわろきをもとめ、やうやう一つめされ候ふよし仰せられ候ふ。当時はかやうのことをもしり候はで、あるべきやうにみなみな存じ候ふほどに、冥加につきまうすべし。一大事なり。

一　同行・善知識にはよくよくちかづくべし。「親近せざるは雑修の失なり」と『礼讃』（意）にあらはせり。あしきものにちかづけば、それには馴れじと思へども、悪事[[よりよりに]]あり。ただ仏法者には馴れちかづくべきよし仰せられ候ふ。[[俗典]]にいはく、「人の善悪は近づき習ふによる」と、また「その人を

一　同行・善知識にはよくよくちかづくべし。「親近せざるは雑修の失なり」と『礼讃』（意）にあらはせり。あしきものにちかづけば、それには馴れじと思へども、悪事[[よりよりに]]あり。ただ仏法者には馴れちかづくべきよし仰せられ候ふ。[[俗典]]にいはく、「人の善悪は近づき習ふによる」と、また「その人を

一　「[[きれば…|きればいよいよかたく、仰げばいよいよたかし]]」といふことあり。物をきりてみてかたきとしるなり。本願を信じて殊勝なるほどもしるなり。信心おこりぬれば、たふとくありがたく、よろこびも増長あるなり。

一　「[[きれば…|きればいよいよかたく、仰げばいよいよたかし]]」といふことあり。物をきりてみてかたきとしるなり。本願を信じて殊勝なるほどもしるなり。信心おこりぬれば、たふとくありがたく、よろこびも増長あるなり。

一　凡夫の身にて後生たすかることは、ただ易きとばかり思へり。「[[難中之難]]」（大経・下）とあれば、[[堅く]]おこしがたき信なれども、仏智より得やすく成就したまふことなり。「往生ほどの一大事、凡夫のはからふべきにあらず」（執持鈔・二）といへり。前住上人（実如）仰せに、後生一大事と存ずる人には御同心あるべきよし仰せられ候ふと［云々］。

一　凡夫の身にて後生たすかることは、ただ易きとばかり思へり。「[[難中之難]]」（大経・下）とあれば、[[堅く]]おこしがたき信なれども、仏智より得やすく成就したまふことなり。「往生ほどの一大事、凡夫のはからふべきにあらず」（執持鈔・二）といへり。前住上人（実如）仰せに、後生一大事と存ずる人には御同心あるべきよし仰せられ候ふと［云々］。

一　仏説に[[信謗]]あるべきよし説きおきたまへり。信ずるものばかりにて謗ずる人なくは、説きおきたまふこといかがとも思ふべきに、はや謗ずるものあるう

一　仏説に[[信謗]]あるべきよし説きおきたまへり。信ずるものばかりにて謗ずる人なくは、説きおきたまふこといかがとも思ふべきに、はや謗ずるものあるう

一　同行のまへにてはよろこぶものなり、これ名聞なり。信のうへは一人居てよろこぶ法なり。

一　同行のまへにてはよろこぶものなり、これ名聞なり。信のうへは一人居てよろこぶ法なり。

一　仏法には[[世間のひまを闕きて]]きくべし。世間の隙をあけて法をきくべきやうに思ふこと、あさましきことなり。仏法には明日といふことはあるまじきよしの仰せに候ふ。「たとひ[[大千世界]]に　[[みてらん]]火をもすぎゆきて　仏の御名をきくひとは　ながく不退にかなふなり」と、『和讃』（浄土和讃・三一）に[[あそばす|あそばされ候ふ]]。

一　仏法には[[世間のひまを闕きて]]きくべし。世間の隙をあけて法をきくべきやうに思ふこと、あさましきことなり。仏法には明日といふことはあるまじきよしの仰せに候ふ。「たとひ[[大千世界]]に　[[みてらん]]火をもすぎゆきて　仏の御名をきくひとは　ながく不退にかなふなり」と、『和讃』（浄土和讃・三一）に[[あそばす|あそばされ候ふ]]。

一　[[法敬]]申され候ふと［云々］。人寄合ひ、雑談ありしなかばに、ある人ふと座敷を立たれ候ふ。[[上人]]いかにと仰せければ、一大事の急用ありとて立たれけり。その後、先日はいかにふと立たれ候ふやと問ひければ、申され候ふ。仏法の物語、約束申したるあひだ、[[あるもあられず|あるもあられずして]]まかりたち候ふよし申さ

一　[[法敬]]申され候ふと［云々］。人寄合ひ、雑談ありしなかばに、ある人ふと座敷を立たれ候ふ。[[上人]]いかにと仰せければ、一大事の急用ありとて立たれけり。その後、先日はいかにふと立たれ候ふやと問ひければ、申され候ふ。仏法の物語、約束申したるあひだ、[[あるもあられず|あるもあられずして]]まかりたち候ふよし申さ

一　[[仏法をあるじとし…|仏法をあるじとし]]、世間を客人とせよといへり。仏法のうへよりは、世間のことは時にしたがひあひはたらくべきことなりと［云々］。

一　[[仏法をあるじとし…|仏法をあるじとし]]、世間を客人とせよといへり。仏法のうへよりは、世間のことは時にしたがひあひはたらくべきことなりと［云々］。

一　前々住上人（蓮如）、[[南殿]]にて、存覚[[御作分]]の聖教ちと[[不審]]なる所の候ふを、いかがとて、兼縁、前々住上人へ御目にかけられ候へば、仰せられ候ふ。名人のせられ候ふ物をばそのままにて置くことなり。これが名誉なりと仰せられ候ふなり。

一　前々住上人（蓮如）、[[南殿]]にて、存覚[[御作分]]の聖教ちと[[不審]]なる所の候ふを、いかがとて、兼縁、前々住上人へ御目にかけられ候へば、仰せられ候ふ。名人のせられ候ふ物をばそのままにて置くことなり。これが名誉なりと仰せられ候ふなり。

一　前々住上人へある人申され候ふ。[[開山]]（親鸞）の御時のこと申され候ふ。これはいかやうの[[子細]]にて候ふと申されければ、仰せられ候ふ。われもしらぬことなり。なにごともなにごともしらぬことをも、開山のめされ候ふやうに御沙汰候ふと仰せられ候ふ。

一　前々住上人へある人申され候ふ。[[開山]]（親鸞）の御時のこと申され候ふ。これはいかやうの[[子細]]にて候ふと申されければ、仰せられ候ふ。われもしらぬことなり。なにごともなにごともしらぬことをも、開山のめされ候ふやうに御沙汰候ふと仰せられ候ふ。

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一　[[総体]]、人にはおとるまじきと思ふ心あり。この心にて世間には物を[[しならふ]]なり。仏法には無我にて候ふうへは、人にまけて信をとるべきなり。[[理]]をみて[[情]]を折るこそ、仏の御慈悲よと仰せられ候ふ。

一　[[総体]]、人にはおとるまじきと思ふ心あり。この心にて世間には物を[[しならふ]]なり。仏法には無我にて候ふうへは、人にまけて信をとるべきなり。[[理]]をみて[[情]]を折るこそ、仏の御慈悲よと仰せられ候ふ。

一　一心とは、弥陀をたのめば如来の仏心とひとつになしたまふがゆゑに、一心といへり。

一　一心とは、弥陀をたのめば如来の仏心とひとつになしたまふがゆゑに、一心といへり。

一　ある人申され候ふと［云々］。われは井の水を飲むも、[[仏法の御用]]なれば、水の一口も、如来・聖人（親鸞）の御用と存じ候ふよし申され候ふ。

一　ある人申され候ふと［云々］。われは井の水を飲むも、[[仏法の御用]]なれば、水の一口も、如来・聖人（親鸞）の御用と存じ候ふよし申され候ふ。

一　蓮如上人御病中に仰せられ候ふ。御自身なにごとも思し召し立ち候ふことの、成りゆくほどのことはあれども、成らずといふことなし。人の信なきことばかりかなしく御なげきは思し召しのよし仰せられ候ふ。

一　蓮如上人御病中に仰せられ候ふ。御自身なにごとも思し召し立ち候ふことの、成りゆくほどのことはあれども、成らずといふことなし。人の信なきことばかりかなしく御なげきは思し召しのよし仰せられ候ふ。

一　おなじく仰せに、なにごとをも思し召すままに御沙汰あり。聖人の[[一流|御一流]]

一　おなじく仰せに、なにごとをも思し召すままに御沙汰あり。聖人の[[一流|御一流]]

一　敵の陣に火をともすを、火にてなきとは思はず。いかなる人なりとも、[[御ことば]]のとほりを申し、御詞をよみまうさば、信仰し、承るべきことなり

一　敵の陣に火をともすを、火にてなきとは思はず。いかなる人なりとも、[[御ことば]]のとほりを申し、御詞をよみまうさば、信仰し、承るべきことなり

一　蓮如上人、折々仰せられ候ふ。仏法の義をばよくよく人に問へ。物をば人によく問ひまうせのよし仰せられ候ふ。たれに問ひまうすべきよしうかがひまうしければ、[[仏法だにもあらば]]、上下をいはず問ふべし。仏法はしりさうもなきものが知るぞと仰せられ候ふと［云々］。

一　蓮如上人、折々仰せられ候ふ。仏法の義をばよくよく人に問へ。物をば人によく問ひまうせのよし仰せられ候ふ。たれに問ひまうすべきよしうかがひまうしければ、[[仏法だにもあらば]]、上下をいはず問ふべし。仏法はしりさうもなきものが知るぞと仰せられ候ふと［云々］。

一　蓮如上人、無紋のものを着ることを御きらひ候ふ。殊勝さうにみゆると

一　蓮如上人、無紋のものを着ることを御きらひ候ふ。殊勝さうにみゆると

一　大坂殿にて、紋のある御小袖をさせられ、[[御座のうへに掛けられておかれ候ふ]]よしに候ふ。

一　大坂殿にて、紋のある御小袖をさせられ、[[御座のうへに掛けられておかれ候ふ]]よしに候ふ。

一　御膳まゐり候ふ時には、御合掌ありて、如来・聖人（親鸞）の御用にて[[衣食ふ]]よと仰せられ候ふ。

一　御膳まゐり候ふ時には、御合掌ありて、如来・聖人（親鸞）の御用にて[[衣食ふ]]よと仰せられ候ふ。

一　人はあがりあがりて[[おちばをしらぬなり|おちばをしらぬ]]なり。ただつつしみて不断そらおそろしきことと、毎事につけて心をもつべきのよし仰せられ候ふ。

一　人はあがりあがりて[[おちばをしらぬなり|おちばをしらぬ]]なり。ただつつしみて不断そらおそろしきことと、毎事につけて心をもつべきのよし仰せられ候ふ。

一　往生は一人の[[しのぎ]]なり。一人一人仏法を信じて後生をたすかることな

一　往生は一人の[[しのぎ]]なり。一人一人仏法を信じて後生をたすかることな

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一　大坂殿にて、ある人、前々住上人（蓮如）に申され候ふ。今朝暁より老いたるものにて候ふがまゐられ候ふ。[[神変]]なることなるよし申され候へば、[[やがて]]仰せられ候ふ。信だにあれば辛労とはおもはぬなり。信のうへは仏恩報謝と存じ候へば、苦労とは思はぬなりと仰せられしと［云々］。老者と申すは[[田上の了宗]]なりと［云々］。

一　大坂殿にて、ある人、前々住上人（蓮如）に申され候ふ。今朝暁より老いたるものにて候ふがまゐられ候ふ。[[神変]]なることなるよし申され候へば、[[やがて]]仰せられ候ふ。信だにあれば辛労とはおもはぬなり。信のうへは仏恩報謝と存じ候へば、苦労とは思はぬなりと仰せられしと［云々］。老者と申すは[[田上の了宗]]なりと［云々］。

一　南殿にて人々寄合ひ、心中をなにかと[[あつかひ]]まうすところへ、前々住上人御出で候ひて仰せられ候ふ。なにごとをいふぞ。ただなにごとのあつかひも思ひすてて、一心に弥陀を疑なくたのむばかりにて、往生は仏のかたより定めましますぞ。その証は南無阿弥陀仏よ。このうへはなにごとをかあつかふべきぞと仰せられ候ふ。もし不審などを申すにも、[[多事]]をただ御一言にてはらりと不審はれ候ひしと［云々］。

一　南殿にて人々寄合ひ、心中をなにかと[[あつかひ]]まうすところへ、前々住上人御出で候ひて仰せられ候ふ。なにごとをいふぞ。ただなにごとのあつかひも思ひすてて、一心に弥陀を疑なくたのむばかりにて、往生は仏のかたより定めましますぞ。その証は南無阿弥陀仏よ。このうへはなにごとをかあつかふべきぞと仰せられ候ふ。もし不審などを申すにも、[[多事]]をただ御一言にてはらりと不審はれ候ひしと［云々］。

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一　前々住上人（蓮如）、「おどろかすかひこそなけれ[[村雀]]　耳なれぬれば[[なるこ]]にぞのる」、この歌を御引きありて折々仰せられ候ふ。ただ人はみな耳なれ雀なりと仰せられしと［云々］。

一　前々住上人（蓮如）、「おどろかすかひこそなけれ[[村雀]]　耳なれぬれば[[なるこ]]にぞのる」、この歌を御引きありて折々仰せられ候ふ。ただ人はみな耳なれ雀なりと仰せられしと［云々］。

一　心中をあらためんとまでは思ふ人はあれども、信をとらんと思ふ人はなきなりと仰せられ候ふ。

一　心中をあらためんとまでは思ふ人はあれども、信をとらんと思ふ人はなきなりと仰せられ候ふ。

一　蓮如上人仰せられ候ふ。方便をわろしといふことはあるまじきなり。方便をもつて真実をあらはす[[廃立]]の義よくよくしるべし。弥陀・釈迦・善知識の[[善巧方便]]によりて、真実の信をばうることなるよし仰せられ候ふと［云々］。

一　蓮如上人仰せられ候ふ。方便をわろしといふことはあるまじきなり。方便をもつて真実をあらはす[[廃立]]の義よくよくしるべし。弥陀・釈迦・善知識の[[善巧方便]]によりて、真実の信をばうることなるよし仰せられ候ふと［云々］。

一　御文はこれ凡夫往生の鏡なり。御文のうへに法門あるべきやうに思ふ人あり。大きなる誤りなりと［云々］。

一　御文はこれ凡夫往生の鏡なり。御文のうへに法門あるべきやうに思ふ人あり。大きなる誤りなりと［云々］。

一　[[信のうへ]]は仏恩の称名[[退転]]あるまじきことなり。あるいは心よりたふ

一　[[信のうへ]]は仏恩の称名[[退転]]あるまじきことなり。あるいは心よりたふ

一　蓮如上人仰せられ候ふ。信のうへは、たふとく思ひて申す念仏も、またふと申す念仏も[[仏恩にそなはる]]なり。他宗には親のため、またなにのためなんどとて念仏をつかふなり。聖人（親鸞）の御一流には弥陀をたのむが念仏なり。そのうへの称名は、なにともあれ仏恩になるものなりと仰せられ候ふ［云々］。

一　蓮如上人仰せられ候ふ。信のうへは、たふとく思ひて申す念仏も、またふと申す念仏も[[仏恩にそなはる]]なり。他宗には親のため、またなにのためなんどとて念仏をつかふなり。聖人（親鸞）の御一流には弥陀をたのむが念仏なり。そのうへの称名は、なにともあれ仏恩になるものなりと仰せられ候ふ［云々］。

一　ある人いはく、前々住上人（蓮如）の御時、南殿とやらんにて、人、蜂を殺し候ふに、[[思ひよらず]]念仏申され候ふ。その時なにと思うて念仏をば申したると仰せられ候へば、ただ[[かわいや|かはいや]]と存ずるばかりにて申し候ふと申されければ、仰せられ候ふは、信のうへはなにともあれ、念仏申すは報謝の義と存ずべし。みな仏恩になると仰せられ候ふ。

一　ある人いはく、前々住上人（蓮如）の御時、南殿とやらんにて、人、蜂を殺し候ふに、[[思ひよらず]]念仏申され候ふ。その時なにと思うて念仏をば申したると仰せられ候へば、ただ[[かわいや|かはいや]]と存ずるばかりにて申し候ふと申されければ、仰せられ候ふは、信のうへはなにともあれ、念仏申すは報謝の義と存ずべし。みな仏恩になると仰せられ候ふ。

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一　南殿にて、前々住上人（蓮如）、[[のうれん]]を打ちあげられて御出で候ふとて、南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏と仰せられ候ひて、法敬この心しりたるかと仰せられ候ふ。なにとも存ぜずと申され候へば、仰せられ候ふ。これはわれは御たすけ候ふ、御うれしやたふとやと申す心よと仰せられ候ふ［云々］。

一　南殿にて、前々住上人（蓮如）、[[のうれん]]を打ちあげられて御出で候ふとて、南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏と仰せられ候ひて、法敬この心しりたるかと仰せられ候ふ。なにとも存ぜずと申され候へば、仰せられ候ふ。これはわれは御たすけ候ふ、御うれしやたふとやと申す心よと仰せられ候ふ［云々］。

一　蓮如上人へ、ある人安心のとほり申され候ふ。［西国の人と云々］　安心の[[一通り]]を申され候へば、仰せられ候ふ。申し候ふごとくの心中に候はば、それが[[肝要]]と仰せられ候ふ。

一　蓮如上人へ、ある人安心のとほり申され候ふ。［西国の人と云々］　安心の[[一通り]]を申され候へば、仰せられ候ふ。申し候ふごとくの心中に候はば、それが[[肝要]]と仰せられ候ふ。

一　おなじく仰せられ候ふ。[[当時]]ことばにては安心のとほりおなじやうに申され候ひし。しかれば、[[信治定]]の人に紛れて、往生をしそんずべきことをかなしく思し召し候ふよし仰せられ候ふ。

一　おなじく仰せられ候ふ。[[当時]]ことばにては安心のとほりおなじやうに申され候ひし。しかれば、[[信治定]]の人に紛れて、往生をしそんずべきことをかなしく思し召し候ふよし仰せられ候ふ。

一　信のうへは[[さのみ]]わろきことはあるまじく候ふ。あるいは人のいひ候ふなどとて、あしきことなどはあるまじく候ふ。今度生死の[[結句をきりて]]、安楽に

一　信のうへは[[さのみ]]わろきことはあるまじく候ふ。あるいは人のいひ候ふなどとて、あしきことなどはあるまじく候ふ。今度生死の[[結句をきりて]]、安楽に

一　仰せにいはく、仏法をば[[さしよせて]]いへいへと仰せられ候ふ。法敬に対し仰せられ候ふ。信心・安心といへば、愚痴のものは文字もしらぬなり。信心・安心などいへば、別のやうにも思ふなり。ただ凡夫の仏に成ることををしふべし。後生たすけたまへと弥陀をたのめといふべし。なにたる愚痴の衆生なりとも、聞きて信をとるべし。[[当流]]には、これよりほかの法門はなきなりと仰せられ候ふ。『安心決定鈔』（本）にいはく、「浄土の法門は、第十八の願をよくよくこころうるのほかにはなきなり」といへり。しかれば、御文には「[[一心一向に…|一心一向に]]仏たすけたまへと申さん衆生をば、たとひ罪業は深重なりとも、かならず弥陀如来はすくひましますべし。これすなはち第十八の念仏往生の誓願の意なり」といへり。

一　仰せにいはく、仏法をば[[さしよせて]]いへいへと仰せられ候ふ。法敬に対し仰せられ候ふ。信心・安心といへば、愚痴のものは文字もしらぬなり。信心・安心などいへば、別のやうにも思ふなり。ただ凡夫の仏に成ることををしふべし。後生たすけたまへと弥陀をたのめといふべし。なにたる愚痴の衆生なりとも、聞きて信をとるべし。[[当流]]には、これよりほかの法門はなきなりと仰せられ候ふ。『安心決定鈔』（本）にいはく、「浄土の法門は、第十八の願をよくよくこころうるのほかにはなきなり」といへり。しかれば、御文には「[[一心一向に…|一心一向に]]仏たすけたまへと申さん衆生をば、たとひ罪業は深重なりとも、かならず弥陀如来はすくひましますべし。これすなはち第十八の念仏往生の誓願の意なり」といへり。

一　信をとらぬによりてわろきぞ。ただ信をとれと仰せられ候ふ。善知識のわ

一　信をとらぬによりてわろきぞ。ただ信をとれと仰せられ候ふ。善知識のわ

一　蓮如上人仰せられ候ふ。なにたることをきこしめしても、御心には[[ゆめゆめ]]叶はざるなりと。一人なりとも人の信をとりたることをきこしめしたきと、御ひとりごとに仰せられ候ふ。御一生は、人に信をとらせたく思し召され候ふよし仰せられ候ふ。

一　蓮如上人仰せられ候ふ。なにたることをきこしめしても、御心には[[ゆめゆめ]]叶はざるなりと。一人なりとも人の信をとりたることをきこしめしたきと、御ひとりごとに仰せられ候ふ。御一生は、人に信をとらせたく思し召され候ふよし仰せられ候ふ。

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れ候ふ。しかれば、御再興の上人にてましますものなり。

れ候ふ。しかれば、御再興の上人にてましますものなり。

一　よきことをしたるがわろきことあり、わろきことをしたるがよきことあり。よきことをしても、われは[[法義]]につきてよきことをしたると思ひ、[[われといふことあれば]]わろきなり。あしきことをしても、心中をひるがへし本願に帰すれば、わろきことをしたるがよき道理になるよし仰せられ候ふ。しかれば、蓮如上人は、まゐらせ心がわろきと仰せらるると［云々］。

一　よきことをしたるがわろきことあり、わろきことをしたるがよきことあり。よきことをしても、われは[[法義]]につきてよきことをしたると思ひ、[[われといふことあれば]]わろきなり。あしきことをしても、心中をひるがへし本願に帰すれば、わろきことをしたるがよき道理になるよし仰せられ候ふ。しかれば、蓮如上人は、まゐらせ心がわろきと仰せらるると［云々］。

一　前々住上人（蓮如）仰せられ候ふ。思ひよらぬものが分に過ぎて物を出し候はば、一子細あるべきと思ふべし。わが[[こころならひ]]に人よりものを出せばうれしく思ふほどに、なんぞ用をいふべき時は、人がさやうにするなりと仰せられ候ふ。

一　前々住上人（蓮如）仰せられ候ふ。思ひよらぬものが分に過ぎて物を出し候はば、一子細あるべきと思ふべし。わが[[こころならひ]]に人よりものを出せばうれしく思ふほどに、なんぞ用をいふべき時は、人がさやうにするなりと仰せられ候ふ。

一　行くさきむかひばかりみて、あしもとをみねば、[[踏みかぶる]]べきなり。人のうへばかりみて、わが身のうへのことを[[たしなまずは]]、一大事たるべきと仰

一　行くさきむかひばかりみて、あしもとをみねば、[[踏みかぶる]]べきなり。人のうへばかりみて、わが身のうへのことを[[たしなまずは]]、一大事たるべきと仰

一　善知識の仰せなりとも、成るまじなんど思ふは、大きなる[[あさましき]]ことなり。成らざることなりとも、仰せならば成るべきと存ずべし。この凡夫の身が仏に成るうへは、[[さてあるまじき]]と存ずることあるべきか。しかれば道宗、[[近江の湖]]を一人してうめよと仰せ候ふとも、[[畏まりたる]]と申すべく候ふ。仰せにて候はば、成らぬことあるべきかと申され候ふ。

一　善知識の仰せなりとも、成るまじなんど思ふは、大きなる[[あさましき]]ことなり。成らざることなりとも、仰せならば成るべきと存ずべし。この凡夫の身が仏に成るうへは、[[さてあるまじき]]と存ずることあるべきか。しかれば道宗、[[近江の湖]]を一人してうめよと仰せ候ふとも、[[畏まりたる]]と申すべく候ふ。仰せにて候はば、成らぬことあるべきかと申され候ふ。

一　「[[至りて]]かたきは石なり、至りてやはらかなるは水なり、水よく石を[[穿つ]]、[[心源]]もし徹しなば[[菩提の覚道]]なにごとか成ぜざらん」といへる古き詞あり。いかに不信なりとも、聴聞を心に入れまうさば、御慈悲にて候ふあひだ、信をうべきなり。ただ仏法は聴聞にきはまることなりと［云々］。

一　「[[至りて]]かたきは石なり、至りてやはらかなるは水なり、水よく石を[[穿つ]]、[[心源]]もし徹しなば[[菩提の覚道]]なにごとか成ぜざらん」といへる古き詞あり。いかに不信なりとも、聴聞を心に入れまうさば、御慈悲にて候ふあひだ、信をうべきなり。ただ仏法は聴聞にきはまることなりと［云々］。

一　前々住上人（蓮如）仰せられ候ふ。信決定の人をみて、あのごとくならではと思へばなるぞと仰せられ候ふ。あのごとくになりてこそと[[思ひすつ|思ひすつる]]こ

一　前々住上人（蓮如）仰せられ候ふ。信決定の人をみて、あのごとくならではと思へばなるぞと仰せられ候ふ。あのごとくになりてこそと[[思ひすつ|思ひすつる]]こ

一　人のわろきことはよくよくみゆるなり。わが身のわろきことはおぼえざるものなり。わが身にしられてわろきことあらば、よくよくわろければこそ身にしられ候ふとおもひて、心中をあらたむべし。ただ人のいふことをばよく信用すべし。わがわろきことは[[おぼえざる]]ものなるよし仰せられ候ふ。

一　人のわろきことはよくよくみゆるなり。わが身のわろきことはおぼえざるものなり。わが身にしられてわろきことあらば、よくよくわろければこそ身にしられ候ふとおもひて、心中をあらたむべし。ただ人のいふことをばよく信用すべし。わがわろきことは[[おぼえざる]]ものなるよし仰せられ候ふ。

一　世間の物語ある座敷にては、[[結句]]法義のことをいふこともあり。さやうの[[段]]は[[人なみたるべし]]。心には油断あるべからず。あるいは[[講談]]、または仏法の[[讃嘆]]などいふ時、一向に物をいはざること大きなる違ひなり。仏法讃嘆とあらん時は、いかにも心中をのこさず、あひたがひに信不信の義、談合申すべきことなりと［云々］。

一　世間の物語ある座敷にては、[[結句]]法義のことをいふこともあり。さやうの[[段]]は[[人なみたるべし]]。心には油断あるべからず。あるいは[[講談]]、または仏法の[[讃嘆]]などいふ時、一向に物をいはざること大きなる違ひなり。仏法讃嘆とあらん時は、いかにも心中をのこさず、あひたがひに信不信の義、談合申すべきことなりと［云々］。

一　[[金森の善従|金森]]の善従に、ある人申され候ふ。[[このあひだ]]、[[さこそ]][[徒然に]]御入り候

一　[[金森の善従|金森]]の善従に、ある人申され候ふ。[[このあひだ]]、[[さこそ]][[徒然に]]御入り候

一　善従申され候ふとて、前住上人（実如）仰せられ候ふ。ある人、善従の宿所へ行き候ふところに、履をも脱ぎ候はぬに、仏法のこと申しかけられ候ふ。またある人申され候ふは、履をさへぬがれ候はぬに、いそぎかやうにはなにとて仰せ候ふぞと、人申しければ、善従申され候ふは、出づる息は入るをまたぬ[[浮世]]なり、もし履をぬがれぬまに死去候はば、いかが候ふべきと申され候ふ。ただ仏法のことをば、さし急ぎ申すべきのよし仰せられ候ふ。

一　善従申され候ふとて、前住上人（実如）仰せられ候ふ。ある人、善従の宿所へ行き候ふところに、履をも脱ぎ候はぬに、仏法のこと申しかけられ候ふ。またある人申され候ふは、履をさへぬがれ候はぬに、いそぎかやうにはなにとて仰せ候ふぞと、人申しければ、善従申され候ふは、出づる息は入るをまたぬ[[浮世]]なり、もし履をぬがれぬまに死去候はば、いかが候ふべきと申され候ふ。ただ仏法のことをば、さし急ぎ申すべきのよし仰せられ候ふ。

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ひし。人々、これは年よりてかやうのことを申され候ふなど申しければ、つひに[[御坊御建立]]にて御繁昌候ふ。不思議のことと仰せられ候ひき。また善従は法然の化身なりと、[[世上]]に人申しつると、おなじく仰せられ候ひき。かの往生は[[八月二十五日]]にて候ふ。

ひし。人々、これは年よりてかやうのことを申され候ふなど申しければ、つひに[[御坊御建立]]にて御繁昌候ふ。不思議のことと仰せられ候ひき。また善従は法然の化身なりと、[[世上]]に人申しつると、おなじく仰せられ候ひき。かの往生は[[八月二十五日]]にて候ふ。

====200-314====

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一　前々住上人（蓮如）[[東山]]を[[御出で候ひて]]、いづかたに御座候ふとも、人存ぜず候ひしに、この善従あなたこなた尋ねまうされければ、ある所にて御目にかかられ候ふ。[[一段]][[御迷惑の体]]にて候ひつるあひだ、前々住上人にも[[さだめて]]善従かなしまれまうすべきと思し召され候へば、善従御目にかかられ、あらありがたや、[[はや]]仏法はひらけまうすべきよと申され候ふ。つひにこの詞[[符合]]候ふ。善従は不思議の人なりと、蓮如上人仰せられ候ひしよし、上人（実如）仰せられ候ひき。

一　前々住上人（蓮如）[[東山]]を[[御出で候ひて]]、いづかたに御座候ふとも、人存ぜず候ひしに、この善従あなたこなた尋ねまうされければ、ある所にて御目にかかられ候ふ。[[一段]][[御迷惑の体]]にて候ひつるあひだ、前々住上人にも[[さだめて]]善従かなしまれまうすべきと思し召され候へば、善従御目にかかられ、あらありがたや、[[はや]]仏法はひらけまうすべきよと申され候ふ。つひにこの詞[[符合]]候ふ。善従は不思議の人なりと、蓮如上人仰せられ候ひしよし、上人（実如）仰せられ候ひき。

一　前住上人（実如）、先年[[大永三]]、蓮如上人[[二十五年]]の三月始めごろ、御夢御覧候ふ。御堂上壇南の方に前々住上人御座候ひて、紫の御小袖をめ

一　前住上人（実如）、先年[[大永三]]、蓮如上人[[二十五年]]の三月始めごろ、御夢御覧候ふ。御堂上壇南の方に前々住上人御座候ひて、紫の御小袖をめ

一　心中を改め候はんと申す人、なにをかまづ改め候はんと申され候ふ。よろづわろきことを改めてと、かやうに仰せられ候ふ。[[いろをたてきはを立て|いろをたて、きはを立て]]申しいでて改むべきことなりと［云々］。なににてもあれ、人の直さるるをききて、われも直るべきと思うて、わが[[とが]]を申しいださぬは、直らぬぞと仰せられ候ふと［云々］。

一　心中を改め候はんと申す人、なにをかまづ改め候はんと申され候ふ。よろづわろきことを改めてと、かやうに仰せられ候ふ。[[いろをたてきはを立て|いろをたて、きはを立て]]申しいでて改むべきことなりと［云々］。なににてもあれ、人の直さるるをききて、われも直るべきと思うて、わが[[とが]]を申しいださぬは、直らぬぞと仰せられ候ふと［云々］。