「往生礼讃 (七祖)」の版間の差分
出典: 浄土真宗聖典『ウィキアーカイブ(WikiArc)』
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全体は前序と礼讃の行儀について明かす正明段、および後述の3段よりなっている。前序では、安心・起行・作業という願生行者の実践法について述べ、さらに称名念仏を専修する一行三昧の意義、専修と雑修の得失について説き述べている。正明段では、『大経』の十二光仏名による日没讃、『大経』の要文による初夜讃、龍樹菩薩の「十二礼」による中夜讃、天親菩薩の「願生偈」による後夜讃、彦の「礼讃偈」による晨朝讃、善導大師自作の「十六観偈」による日中讃を示して、六時行儀の次第を明かしている。後述の部分では、『十往生経』『観経』『大経』『小経』を引証して、現世と当来の得益に言及し、一部を結んでいる。 | 全体は前序と礼讃の行儀について明かす正明段、および後述の3段よりなっている。前序では、安心・起行・作業という願生行者の実践法について述べ、さらに称名念仏を専修する一行三昧の意義、専修と雑修の得失について説き述べている。正明段では、『大経』の十二光仏名による日没讃、『大経』の要文による初夜讃、龍樹菩薩の「十二礼」による中夜讃、天親菩薩の「願生偈」による後夜讃、彦の「礼讃偈」による晨朝讃、善導大師自作の「十六観偈」による日中讃を示して、六時行儀の次第を明かしている。後述の部分では、『十往生経』『観経』『大経』『小経』を引証して、現世と当来の得益に言及し、一部を結んでいる。 | ||
− | 本書は、浄土教の敬虔な日常行儀を説き述べたものとして長く勤式に依用されたばかりでなく、教学の上からも、善導大師の独創的な儀礼論が窺われるものとして重要な意義を有している。 | + | 本書は、浄土教の敬虔な日常行儀を説き述べたものとして長く勤式に依用されたばかりでなく、教学の上からも、善導大師の独創的な儀礼論が窺われるものとして重要な意義を有している。 |
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つつしみて『大経』、および龍樹・天親、この土(中国)の沙門等の所造の往生礼讃によりて、集めて一処に在き、分ちて六時を作る。ただ相続して心を係けて[[往益]]を助成せんと欲す。また願はくは[[未聞を暁悟]]して、遠く[[遐代]]を沾さんのみ。 | つつしみて『大経』、および龍樹・天親、この土(中国)の沙門等の所造の往生礼讃によりて、集めて一処に在き、分ちて六時を作る。ただ相続して心を係けて[[往益]]を助成せんと欲す。また願はくは[[未聞を暁悟]]して、遠く[[遐代]]を沾さんのみ。 | ||
− | 何者ぞ。第一につつしみて『大経』に釈迦および十方の諸仏、[[弥陀の十二光の名]]を讃歎して、「[[称・礼・念]]すればさだめてかの国に生ず」と勧めたまふによりて、十九拝、[[日没]]の時に当りて礼す。第二につつしみて[[『大経』によりて]]要文を採集して、もつて礼讃の偈となす。二十四拝、[[初夜]]の時に当りて礼す。第三につつしみて龍樹菩薩の願往生礼讃の偈(十二礼)によりて、十六拝、[[中夜]]の時に当りて礼す。第四につつしみて天親菩薩の願往生礼讃の偈(浄土論)<span id="P--654"></span>によりて、二十拝、[[後夜]]の時に当りて礼す。第五につつしみて[[ | + | 何者ぞ。第一につつしみて『大経』に釈迦および十方の諸仏、[[弥陀の十二光の名]]を讃歎して、「[[称・礼・念]]すればさだめてかの国に生ず」と勧めたまふによりて、十九拝、[[日没]]の時に当りて礼す。第二につつしみて[[『大経』によりて]]要文を採集して、もつて礼讃の偈となす。二十四拝、[[初夜]]の時に当りて礼す。第三につつしみて龍樹菩薩の願往生礼讃の偈(十二礼)によりて、十六拝、[[中夜]]の時に当りて礼す。第四につつしみて天親菩薩の願往生礼讃の偈(浄土論)<span id="P--654"></span>によりて、二十拝、[[後夜]]の時に当りて礼す。第五につつしみて[[彦琮法師の願往生礼讃の偈によりて]]、二十一拝、[[晨朝]]の時に当りて礼す。第六に沙門善導の願往生礼讃の偈、つつしみて[[十六観]]によりて二十拝を作る。[[午時]]に当りて礼す。 |
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問ひていはく、なんがゆゑぞ、観をなさしめずしてただもつぱら名字を称せしむるは、なんの意かあるや。 | 問ひていはく、なんがゆゑぞ、観をなさしめずしてただもつぱら名字を称せしむるは、なんの意かあるや。 | ||
− | 答へていはく、すなはち衆生障重くして、[[境は細に心は粗なる]]によりて、[[ | + | 答へていはく、すなはち衆生障重くして、[[境は細に心は粗なる]]によりて、[[識颺り神飛びて]]、観成就しがたし。ここをもつて大聖(釈尊)悲憐して、ただ勧めてもつぱら名字を称せしむ。まさしく称名は易きによるがゆゑに、相続してすなはち生ず。 |
問ひていはく、すでにもつぱら一仏を称せしむるに、なんがゆゑぞ、[[境現ずること]]すなはち多き。これあに[[邪正あひ交はり]]、[[一多雑現]]するにあらずや。 | 問ひていはく、すでにもつぱら一仏を称せしむるに、なんがゆゑぞ、[[境現ずること]]すなはち多き。これあに[[邪正あひ交はり]]、[[一多雑現]]するにあらずや。 | ||
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:華本心に随ひて変じ、宮移りて身おのづから安し。 | :華本心に随ひて変じ、宮移りて身おのづから安し。 | ||
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:願はくはもろもろの衆生とともに、安楽国に往生せん。 | :願はくはもろもろの衆生とともに、安楽国に往生せん。 | ||
南無して心を至し帰命して、西方の阿弥陀仏を礼したてまつる。 | 南無して心を至し帰命して、西方の阿弥陀仏を礼したてまつる。 | ||
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:下輩は[[下行下根の人]]なり。十悪・五逆等の[[貪瞋]]と、 | :下輩は[[下行下根の人]]なり。十悪・五逆等の[[貪瞋]]と、 | ||
− | :四重と[[偸僧]]と[[謗正法]]と、いまだかつて慚愧して前の | + | :四重と[[偸僧]]と[[謗正法]]と、いまだかつて慚愧して前の{{Font|}}を悔いず。 |
:[[終時]]に、苦相、雲のごとくに集まり、地獄の猛火罪人の前にあり。 | :[[終時]]に、苦相、雲のごとくに集まり、地獄の猛火罪人の前にあり。 | ||
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2010年5月20日 (木) 21:21時点における版
■往生礼讃 善導大師
現存する善導大師の五部九巻の著作のうち、『観経疏』(「本疏」「解義分」)以外の4部(『法事讃』『観念法門』『往生礼讃』『般舟讃』)はいずれも浄土教の儀礼・実践を明らかにしたものであるので、「具疏」とも「行儀分」とも呼びならわされている。
本書は、つぶさには『勧一切衆生願生西方極楽世界阿弥陀仏国六時礼讃偈』(一切衆生を勧めて、西方極楽世界の阿弥陀仏国に生ぜんと願ぜしむる六時礼讃の偈)といい、略して『往生礼讃偈』とも『六時礼讃』ともまた『礼讃』ともいう。その題号が示すように、願生行者が日常実修すべき六時(日没・初夜・中夜・後夜・晨朝・日中)の礼法を明かしたものである。
全体は前序と礼讃の行儀について明かす正明段、および後述の3段よりなっている。前序では、安心・起行・作業という願生行者の実践法について述べ、さらに称名念仏を専修する一行三昧の意義、専修と雑修の得失について説き述べている。正明段では、『大経』の十二光仏名による日没讃、『大経』の要文による初夜讃、龍樹菩薩の「十二礼」による中夜讃、天親菩薩の「願生偈」による後夜讃、彦の「礼讃偈」による晨朝讃、善導大師自作の「十六観偈」による日中讃を示して、六時行儀の次第を明かしている。後述の部分では、『十往生経』『観経』『大経』『小経』を引証して、現世と当来の得益に言及し、一部を結んでいる。
本書は、浄土教の敬虔な日常行儀を説き述べたものとして長く勤式に依用されたばかりでなく、教学の上からも、善導大師の独創的な儀礼論が窺われるものとして重要な意義を有している。 往生礼讃
往生礼讃偈 一巻
沙門善導集記
前序
【1】 一切衆生を勧めて、西方極楽世界の阿弥陀仏国に生ぜんと願ぜしむる六時礼讃の偈。
つつしみて『大経』、および龍樹・天親、この土(中国)の沙門等の所造の往生礼讃によりて、集めて一処に在き、分ちて六時を作る。ただ相続して心を係けて往益を助成せんと欲す。また願はくは未聞を暁悟して、遠く遐代を沾さんのみ。
何者ぞ。第一につつしみて『大経』に釈迦および十方の諸仏、弥陀の十二光の名を讃歎して、「称・礼・念すればさだめてかの国に生ず」と勧めたまふによりて、十九拝、日没の時に当りて礼す。第二につつしみて『大経』によりて要文を採集して、もつて礼讃の偈となす。二十四拝、初夜の時に当りて礼す。第三につつしみて龍樹菩薩の願往生礼讃の偈(十二礼)によりて、十六拝、中夜の時に当りて礼す。第四につつしみて天親菩薩の願往生礼讃の偈(浄土論)によりて、二十拝、後夜の時に当りて礼す。第五につつしみて彦琮法師の願往生礼讃の偈によりて、二十一拝、晨朝の時に当りて礼す。第六に沙門善導の願往生礼讃の偈、つつしみて十六観によりて二十拝を作る。午時に当りて礼す。
安心
【2】 問ひていはく、いま人を勧めて往生せしめんと欲せば、いまだ知らず、いかんが安心・起行・作業してさだめてかの国土に往生することを得るや。
答へていはく、かならずかの国土に生ぜんと欲せば、『観経』に説きたまふがごときは、三心を具してかならず往生を得。なんらをか三となす。一には至誠心。 いはゆる身業にかの仏を礼拝し、口業にかの仏を讃歎称揚し、意業にかの仏を専念観察す。おほよそ三業を起さば、かならずすべからく真実なるべし。ゆゑに至誠心と名づく。二には深心。すなはちこれ真実の信心なり。自身はこれ煩悩を具足する凡夫、善根薄少にして三界に流転して火宅を出でずと信知し、いま弥陀の本弘誓願は、名号を称すること下十声・一声等に至るに及ぶまで、さだめて往生を得と信知して、すなはち一念に至るまで疑心あることなし。ゆゑに深心と名づく。三には回向発願心。所作の一切の善根ことごとくみな回して往生を願ず。ゆゑに回向発願心と名づく。この三心を具すれば、かならず生ずることを得。
もし一心も少けぬれば、すなはち生ずることを得ず。『観経』につぶさに説くがごとし、知るべし。
起行
【3】 また天親の『浄土論』にいふがごとし。もしかの国に生ぜんと願ずることあるものには、勧めて五念門を修せしむ。五門もし具すれば、さだめて往生を得。何者をか五となす。一には身業礼拝門。 いはゆる一心にもつぱら恭敬を至して、合掌し香華供養して、かの阿弥陀仏を礼拝す。礼するにはすなはちもつぱらかの仏を礼して、畢命を期となして余礼を雑へず。ゆゑに礼拝門と名づく。 二には口業讃歎門。いはゆる意をもつぱらにして、かの仏の身相・光明、一切の聖衆の身相・光明、およびかの国中の一切の宝荘厳・光明等を讃歎す。ゆゑに讃歎門と名づく。 三には意業憶念観察門。いはゆる意をもつぱらにして、かの仏および一切の聖衆の身相・光明、国土の荘厳等を念観す。『観経』に説きたまふがごとく、ただ睡時を除きて、この事等をつねに憶しつねに念じつねに想しつねに観ず。ゆゑに観察門と名づく。 四には作願門。いはゆる心をもつぱらにして、もしは昼、もしは夜、一切時、一切処に、三業・四威儀の所作の功徳、初・中・後を問はず、みなすべからく真実心のうちに発願して、かの国に生ぜんと願ずべし。ゆゑに作願門と名づく。 五には回向門。いはゆる心をもつぱらにして、もしは自作の善根、および一切の三乗・五道、一々の聖凡等の所作の善根に深く随喜を生じ、諸仏・菩薩の所作の随喜のごとく、われもまたかくのごとく随喜して、この随喜の善根およびおのが所作の善根をもつて、みなことごとく衆生とこれをともにしてかの国に回向す。ゆゑに回向門と名づく。
またかの国に到りをはりて六神通を得て生死に回入して、衆生を教化すること後際を徹窮して心に厭足なく、すなはち成仏に至るまでまた回向門と名づく。
五門すでに具しぬれば、さだめて往生を得。一々の門上の三心と合して、随ひて業行を起せば、多少を問はず、みな真実の業と名づく、知るべし。
作業
【4】 また勧めて四修の法を行ぜしめて、もつて三心・五念の行を策ましてすみやかに往生を得しむ。何者をか四となす。一には恭敬修。いはゆるかの仏およびかの一切の聖衆等を恭敬礼拝す。ゆゑに恭敬修と名づく。畢命を期となして誓ひて中止せざる、すなはちこれ長時修なり。
二には無余修。いはゆるもつぱらかの仏の名を称して、かの仏および一切の聖衆等を専念し、専想し、専礼し、専讃して、余業を雑へず。ゆゑに無余修と名づく。畢命を期となして誓ひて中止せざる、すなはちこれ長時修なり。
三には無間修。いはゆる相続して恭敬礼拝し、称名讃歎し、憶念観察し、回向発願し、心々相続して余業をもつて来し間へず。ゆゑに無間修と名づく。また貪瞋煩悩をもつて来し間へず。随犯随懺して、念を隔て時を隔て日を隔てしめず、つねに清浄ならしむるをまた無間修と名づく。畢命を期となして誓ひて中止せざる、すなはちこれ長時修なり。また菩薩すでに生死を免れて、所作の善法回して仏果を求むるは、すなはちこれ自利なり。衆生を教化して未来際を尽すは、すなはちこれ利他なり。
しかるにいまの時の衆生ことごとく煩悩のために繋縛せられて、いまだ悪道生死等の苦を免れず。縁に随ひて行を起して、一切の善根つぶさにすみやかに回して、阿弥陀仏国に往生せんと願ぜよ。かの国に到りをはりて、さらに畏るるところなし。上のごとき四修自然任運にして、自利利他具足せざるはなし、知るべし。
一行三昧
【5】 また『文殊般若』(意)にのたまふがごとし。「一行三昧を明かさば、ただ独り空閑に処してもろもろの乱意を捨て、心を一仏に係けて相貌を観ぜず、もつぱら名字を称することを勧む。すなはち念のうちにおいて、かの阿弥陀仏および一切の仏等を見たてまつることを得」と。
問ひていはく、なんがゆゑぞ、観をなさしめずしてただもつぱら名字を称せしむるは、なんの意かあるや。
答へていはく、すなはち衆生障重くして、境は細に心は粗なるによりて、識颺り神飛びて、観成就しがたし。ここをもつて大聖(釈尊)悲憐して、ただ勧めてもつぱら名字を称せしむ。まさしく称名は易きによるがゆゑに、相続してすなはち生ず。
問ひていはく、すでにもつぱら一仏を称せしむるに、なんがゆゑぞ、境現ずることすなはち多き。これあに邪正あひ交はり、一多雑現するにあらずや。
答へていはく、仏と仏と斉しく証して、形二の別なし。たとひ一を念じて多を見ること、なんの大道理にか乖かんや。また『観経』にのたまふがごとし。仏、坐観・礼念等、みな面を西方に向かふるを須ゐるは最勝なりと勧めたまふ。樹の先より傾けるは倒るるに、かならず曲れるに随ふがごとくなるがゆゑなり。かならず事の礙ありて西方に向かふに及ばずは、ただ西に向かふ想をなすもまた得たり。
問ひていはく、一切の諸仏三身同じく証し、悲智の果円かにしてまた無二なるべし。方に随ひて一仏を礼念し課称せんに、また生ずることを得べし。なんがゆゑぞ、ひとへに西方を歎じて、勧めて礼念等をもつぱらにせしむるは、なんの義かあるや。
光号摂化
答へていはく、諸仏の所証は平等にしてこれ一なれども、もし願行をもつて来し収むるに因縁なきにあらず。しかるに弥陀世尊、本深重の誓願を発して、光明・名号をもつて十方を摂化したまふ。ただ信心をもつて求念すれば、上一形を尽し下十声・一声等に至るまで、仏願力をもつて易く往生を得。このゆゑに釈迦および諸仏勧めて西方に向かはしむるを別異となすのみ。 またこれ余仏を称念して障を除き、罪を滅することあたはざるにはあらず、知るべし。
専雑得失
【6】 もしよく上のごとく念々相続して、畢命を期となすものは、十はすなはち十ながら生じ、百はすなはち百ながら生ず。なにをもつてのゆゑに。外の雑縁なくして正念を得るがゆゑに、仏の本願と相応することを得るがゆゑに、教に違せざるがゆゑに、仏語に随順するがゆゑなり。
もし専を捨てて雑業を修せんと欲するものは、百は時に希に一二を得、千は時に希に三五を得。なにをもつてのゆゑに。すなはち雑縁乱動するによりて正念を失するがゆゑに、仏の本願と相応せざるがゆゑに、教と相違せるがゆゑに、仏語に順ぜざるがゆゑに、係念相続せざるがゆゑに、憶想間断するがゆゑに、回願慇重真実ならざるがゆゑに、貪・瞋・諸見の煩悩来り間断するがゆゑに、慚愧・懺悔の心あることな きがゆゑなり。
懺悔に三品あり。一には要、二には略、三には広なり。下につぶさに説くがごとし。意に随ひて用ゐるにみな得たり。また相続してかの仏恩を念報せざるがゆゑに、心に軽慢を生じて業行をなすといへども、つねに名利と相応するがゆゑに、人我おのづから覆ひて同行善知識に親近せざるがゆゑに、楽ひて雑縁に近づきて、往生の正行を自障障他するがゆゑなり。なにをもつてのゆゑに。余、このごろみづから諸方の道俗を見聞するに、解行不同にして専雑異なることあり。ただ意をもつぱらにしてなせば、十はすなはち十ながら生ず。雑を修して至心ならざれば、千がなかに一もなし。この二行の得失、前 にすでに弁ぜるがごとし。仰ぎ願はくは一切の往生人等[[よくみづから思量せよ。
すでによく今身にかの国に生ぜんと願ずるものは]]、行住坐臥にかならずすべからく心を励まし、おのれを剋して昼夜に廃することなく、畢命を期となすべし。上一形にありては少苦に似如たれども、前念に命終して後念にすなはちかの国に生じ、長時永劫につねに無為の法楽を受く。すなはち成仏に至るまで生死を経ず。あに快きにあらずや、知るべし。
日没讃
【7】 第一につつしみて『大経』(上)に釈迦仏、阿弥陀仏の十二光の名を礼讃して往生を求願せよと勧めたまふによりて、一十九拝、日没の時に当りて礼す。中・下の懺悔を取るもまた得たり。
【8】 釈迦牟尼仏等の一切の三宝に南無したてまつる。われいま稽首して礼し、回して無量寿国に往生せんと願ず。
- [この一仏(釈尊)は現にこれ今時道俗等の師なり。「三宝」といふはすなはちこれ[[福
- 田]]無量なり。もしよくこれを礼すること一拝すれば、すなはちこれ師恩を念報して、
- もつておのが行を成ず。この一行をもつて回して往生を願ず。]
十方三世の尽虚空遍法界の微塵刹土中の一切の三宝に南無したてまつる。わ れいま稽首して礼し、回して無量寿国に往生せんと願ず。
- [しかるに十方虚空無辺にして、三宝無尽なり。もし礼すること一拝すれば、すなは
- ちこれ福田無量なり、功徳無窮なり。よく心を至してこれを礼すること一拝すれば、
- 一々の仏の上、一々の法の上、一々の菩薩・聖僧の上、一々の舎利の上に、みな身口意
- 業に解脱分の善根を得、来りて行者を資益し、もつておのが業を成ず。この一行をも
- つて回して往生を願ず。]
【9】 西方極楽世界の阿弥陀仏に南無したてまつる。
- 願はくは衆生とともにことごとく帰命せん。ゆゑにわれ頂礼してかの国に
- 生ぜん。
- [問ひていはく、なんがゆゑぞ阿弥陀と号けたてまつる。答へていはく、『弥陀経』
- および『観経』にのたまはく、「かの仏の光明は無量にして十方国を照らすに障礙す
- るところなし。ただ念仏の衆生を観そなはして、摂取して捨てたまはざるがゆゑに阿
- 弥陀と名づけたてまつる。かの仏の寿命およびその人民も無量無辺阿僧祇劫なり。ゆ
- ゑに阿弥陀と名づけたてまつる」と。また釈迦仏および十方の仏、弥陀の光明に[[十二
- 種の名]]あることを讃歎し、あまねく衆生を勧めたまへり。称名し礼拝し相続して断
- えざれば、現世に無量の功徳を得、命終の後さだめて往生を得。『無量寿経』(上・
- 意)に説きてのたまふがごとし。「それ衆生ありてこの光に遇ふものは、三垢消滅して
- 身意柔軟なり。歓喜踊躍して善心生ず。もし三塗勤苦の処にありて、この光明を見た
- てまつれば、また苦悩なし。寿終りて後みな解脱を蒙る。無量寿仏の光明顕赫にし
- て十方を照耀して、諸仏の国土は聞えざるはなし。ただわれのみいまその光明を称す
- るにあらず、一切諸仏、声聞、縁覚、もろもろの菩薩衆ことごとくともに歎誉したま
- ふこと、またかくのごとし。もし衆生ありて、その光明の威神功徳を聞きて、日夜に
- 称説して、心を至して断えざれば、その所願に随ひてその国に生ずることを得。つね
- にもろもろの菩薩、声聞の衆のためにともに歎誉してその功徳を称せらる。仏(釈尊)
- のたまはく、〈われ、無量寿仏の光明の威神巍々殊妙なるを説かんに、昼夜一劫すと
- も、なほ尽すことあたはず〉」と。もろもろの行者にまうす。まさに知るべし、弥陀
- の身相・光明は、釈迦如来一劫に説きたまふとも、尽すことあたはざるものなり。『観
- 経』にのたまふがごとし。「一々の光明あまねく十方世界を照らし、念仏の衆生を摂
- 取して捨てたまはず」と。いますでに『観経』にかくのごとき不思議増上の勝縁あり
- て、行者を摂護したまふ。なんぞ相続して称・観・礼・念して往生を願ぜざらんや、
- 知るべし。]
【10】 西方極楽世界の無量光仏に南無したてまつる。
- 願はくは衆生とともにことごとく帰命せん。ゆゑにわれ頂礼してかの国に
- 生ぜん。
西方極楽世界の無辺光仏に南無したてまつる。
- 願はくは衆生とともにことごとく帰命せん。ゆゑにわれ頂礼してかの国に
- 生ぜん。
西方極楽世界の無礙光仏に南無したてまつる。
- 願はくは衆生とともにことごとく帰命せん。ゆゑにわれ頂礼してかの国に
- 生ぜん。
西方極楽世界の無対光仏に南無したてまつる。
- 願はくは衆生とともにことごとく帰命せん。ゆゑにわれ頂礼してかの国に
- 生ぜん。
西方極楽世界の炎王光仏に南無したてまつる。
- 願はくは衆生とともにことごとく帰命せん。ゆゑにわれ頂礼してかの国に
- 生ぜん。
西方極楽世界の清浄光仏に南無したてまつる。
- 願はくは衆生とともにことごとく帰命せん。ゆゑにわれ頂礼してかの国に
- 生ぜん。
西方極楽世界の歓喜光仏に南無したてまつる。
- 願はくは衆生とともにことごとく帰命せん。ゆゑにわれ頂礼してかの国に
- 生ぜん。
西方極楽世界の智慧光仏に南無したてまつる。
- 願はくは衆生とともにことごとく帰命せん。ゆゑにわれ頂礼してかの国に
- 生ぜん。
西方極楽世界の不断光仏に南無したてまつる。
- 願はくは衆生とともにことごとく帰命せん。ゆゑにわれ頂礼してかの国に
- 生ぜん。
西方極楽世界の難思光仏に南無したてまつる。
- 願はくは衆生とともにことごとく帰命せん。ゆゑにわれ頂礼してかの国に
- 生ぜん。
西方極楽世界の無称光仏に南無したてまつる。
- 願はくは衆生とともにことごとく帰命せん。ゆゑにわれ頂礼してかの国に
- 生ぜん。
西方極楽世界の超日月光仏に南無したてまつる。
- 願はくは衆生とともにことごとく帰命せん。ゆゑにわれ頂礼してかの国に
- 生ぜん。
【11】 西方極楽世界の阿弥陀仏に南無したてまつる。
西方極楽世界の観世音菩薩に南無したてまつる。
- 願はくは衆生とともにことごとく帰命せん。ゆゑにわれ頂礼してかの国に
- 生ぜん。
西方極楽世界の大勢至菩薩に南無したてまつる。
- 願はくは衆生とともにことごとく帰命せん。ゆゑにわれ頂礼してかの国に
- 生ぜん。
- [この二菩薩は一切衆生の命終の時に臨みて、ともに華台を持して行者に授与し、
- 阿弥陀仏は大光明を放ちて、行者の身を照らしたまふ。また無数の化仏・菩薩・声聞
- 大衆等と一時に授手して、弾指のあひだのごとくにすなはち往生を得。仏恩を報ぜん
- がためのゆゑに、心を至してこれを礼すること一拝す。]
西方極楽世界のもろもろの菩薩・清浄大海衆に南無したてまつる。
- 願はくは衆生とともにことごとく帰命せん。ゆゑにわれ頂礼してかの国に
- 生ぜん。
- [これらのもろもろの菩薩、また仏(阿弥陀仏)に随ひ来りて、行者を迎接したまふ。
- 恩を報ぜんがためのゆゑに、心を至してこれを礼すること一拝す。]
【12】 あまねく師僧・父母および善知識、法界の衆生、三障を断除して、同じ く阿弥陀仏国に往生することを得んがために、帰命し懺悔したてまつる。 心を至して懺悔す。
- 十方の仏に南無し懺悔したてまつる。願はくは一切のもろもろの罪根を滅
- したまへ。
- いま久近に修するところの善をもつて、回して自他安楽の因となす。
- つねに願はくは一切臨終の時、勝縁・勝境ことごとく現前せん。
- 願はくは弥陀大悲主、観音・勢至・十方尊を覩たてまつらん。
- 仰ぎ願はくは神光授手を蒙りて、仏の本願に乗じてかの国に生ぜん。
懺悔し回向し発願しをはりて、心を至して阿弥陀仏に帰命したてまつる。
【13】 次に梵をなし、偈を説きて発願せよ。[『宝性論』に出でたり。]
- 「礼懺のもろもろの功徳をもつて、願はくは命終の時に臨みて、
- 無量寿仏の無辺の功徳身を見たてまつらん。
- われおよび余の信者、すでにかの仏を見たてまつりをはりて、
- 願はくは離垢の眼を得、安楽国に往生して、
- 無上菩提を成ぜん」と。
【14】 礼懺しをはりて一切恭敬す。
- 仏の菩提を得たまふに帰す。道心つねに退せざらん。
願はくはもろもろの衆生とともに回して無量寿国に往生せんと願ず。
願はくはもろもろの衆生とともに回して無量寿国に往生せんと願ず。
願はくはもろもろの衆生とともに回して無量寿国に往生せんと願ず。 願はくはもろもろの衆生、三業清浄にして、仏教を奉持し一切の賢聖を[[和 南]]せん。 願はくはもろもろの衆生とともに回して無量寿国に往生せんと願ず。
【15】 もろもろの衆等聴け。日没の無常の偈を説かん。
- 人間怱々として衆務を営み、年命の日夜に去ることを覚えず。
- 灯の風中にありて滅すること期しがたきがごとし。忙々たる六道に定趣
- なし。
- いまだ解脱して苦海を出づることを得ず。いかんが安然として驚懼せざら
- ん。
- おのおの聞け。強健有力の時、自策自励して常住を求めよ。
【16】 この偈を説きをはりて、さらにまさに心口に発願すべし。 願はくは弟子等、命終の時に臨みて心顛倒せず、心錯乱せず、心失念せず、 身心もろもろの苦痛なく、身心快楽なること禅定に入れるがごとくして、聖衆 現前し、仏の本願に乗じて阿弥陀仏国に上品往生せん。かの国に到りをはり て、六神通を得て十方界に入りて、苦の衆生を救摂せん。虚空法界尽きんや、 わが願もまたかくのごとくならん。発願しをはりて、心を至して阿弥陀仏に帰 命したてまつる。
【17】 初夜の偈にのたまはく(坐禅三昧経・意)、
【18】 中夜の偈にいはく(大智度論)、
- 「なんぢら臭き屍を抱きて臥することなかれ。種々の不浄をかりに人と名
- づく。
- 重病を得、箭の体に入るがごとし。もろもろの苦痛集まる。いづくんぞ
- 眠るべけん」と。
【19】 後夜の偈にいはく、
【20】 平旦の偈にのたまはく(僧祇律・意)、
- 「寂滅の楽を求めんと欲せば、まさに沙門の法を学すべし。
- 衣食は身命を支ふ。精粗、衆に随ひて得よ。
- もろもろの衆等、今日晨朝におのおの六念を誦せよ」と。
【21】 日中の偈にのたまはく(六方礼経・意)、
- 「人生れて精進せずは、たとへば樹に根なきがごとし。
- 華を採りて日中に置くに、よくいくばくの時か鮮やかなることを得ん。
- 人の命もまたかくのごとし。無常は須臾のあひだなり。
- もろもろの行道の衆を勧む。勤修してすなはち真に至れ」と。
初夜讃
【22】 第二に沙門善導、つつしみて『大経』によりて要文を採集して、もつて 礼讃の偈となす。二十四拝、初夜の時に当りて礼す。懺悔は前後に同じ。
【23】 南無して心を至し帰命して、西方の阿弥陀仏を礼したてまつる。
- 弥陀の智願海は、深広にして涯底なし。
- 名を聞きて往生せんと欲すれば、みなことごとくかの国に到る。
- 願はくはもろもろの衆生とともに、安楽国に往生せん。
南無して心を至し帰命して、西方の阿弥陀仏を礼したてまつる。
- この世界のなかにおいて、六十有七億の
- 不退のもろもろの菩薩あり。みなまさにかしこに生ずることを得べし。
- 願はくはもろもろの衆生とともに、安楽国に往生せん。
南無して心を至し帰命して、西方の阿弥陀仏を礼したてまつる。
- 小行のもろもろの菩薩、および少福を修するもの、
- その数計るべからず。みなまさにかしこに生ずることを得べし。
- 願はくはもろもろの衆生とともに、安楽国に往生せん。
南無して心を至し帰命して、西方の阿弥陀仏を礼したてまつる。
- 十方仏刹のなかの菩薩・比丘衆は、
- 劫を窮むるも計るべからず。みなまさにかしこに生ずることを得べし。
- 願はくはもろもろの衆生とともに、安楽国に往生せん。
南無して心を至し帰命して、西方の阿弥陀仏を礼したてまつる。
- 一切のもろもろの菩薩、おのおの天の妙華、
- 宝香、無価衣を齎ちて弥陀仏を供養したてまつる。
- 願はくはもろもろの衆生とともに、安楽国に往生せん。
南無して心を至し帰命して、西方の阿弥陀仏を礼したてまつる。
- 最勝の尊を歌歎して、弥陀仏を供養したてまつる。
- 願はくはもろもろの衆生とともに、安楽国に往生せん。
南無して心を至し帰命して、西方の阿弥陀仏を礼したてまつる。
南無して心を至し帰命して、西方の阿弥陀仏を礼したてまつる。
- かの厳浄土の微妙にして思議しがたきを見て、
- よりて無上心を発す。願はくはわが国もまたしからんと。
- 願はくはもろもろの衆生とともに、安楽国に往生せん。
南無して心を至し帰命して、西方の阿弥陀仏を礼したてまつる。
- 時に応じて無量尊(阿弥陀仏)、容を動かし欣笑を発し、
- 口より無数の光を出して、あまねく十方の国を照らしたまふ。
- 願はくはもろもろの衆生とともに、安楽国に往生せん。
南無して心を至し帰命して、西方の阿弥陀仏を礼したてまつる。
南無して心を至し帰命して、西方の阿弥陀仏を礼したてまつる。
南無して心を至し帰命して、西方の阿弥陀仏を礼したてまつる。
- かの厳浄国に至れば、すなはちすみやかに神通を得て、
- かならず無量尊(阿弥陀仏)において、記を受けて等覚を成ず。
- 願はくはもろもろの衆生とともに、安楽国に往生せん。
南無して心を至し帰命して、西方の阿弥陀仏を礼したてまつる。
南無して心を至し帰命して、西方の阿弥陀仏を礼したてまつる。
南無して心を至し帰命して、西方の阿弥陀仏を礼したてまつる。
【24】 南無して心を至し帰命して、西方の阿弥陀仏を礼したてまつる。
- それかの弥陀仏の名号を聞くことを得ることありて、
- 歓喜して一念に至るまで、みなまさにかしこに生ずることを得べし。
- 願はくはもろもろの衆生とともに、安楽国に往生せん。
南無して心を至し帰命して、西方の阿弥陀仏を礼したてまつる。
- たとひ大千に満てらん火をも、ただちに過ぎて仏の名を聞け。
- 名を聞きて歓喜して讃ずれば、みなまさにかしこに生ずることを得べし。
- 願はくはもろもろの衆生とともに、安楽国に往生せん。
南無して心を至し帰命して、西方の阿弥陀仏を礼したてまつる。
- 万年にして三宝滅せんに、この『経』(大経)住すること百年せん。
- その時聞きて一念せんに、みなまさにかしこに生ずることを得べし。
- 願はくはもろもろの衆生とともに、安楽国に往生せん。
南無して心を至し帰命して、西方の阿弥陀仏を礼したてまつる。
南無して心を至し帰命して、西方の阿弥陀仏を礼したてまつる。
- みづから信じ人を教へて信ぜしむること、難きがなかにうたたさらに難し。
- 大悲をもつて伝へてあまねく化するは、まことに仏恩を報ずるになる。
- 願はくはもろもろの衆生とともに、安楽国に往生せん。
【25】 南無して心を至し帰命して、西方の阿弥陀仏を礼したてまつる。
- 此世および後生に、願はくは仏つねに摂受したまへ。
- 願はくはもろもろの衆生とともに、安楽国に往生せん。
南無して心を至し帰命して、西方極楽世界の観世音菩薩を礼したてまつる。
- 願はくはもろもろの衆生とともに、安楽国に往生せん。
南無して心を至し帰命して、西方極楽世界の大勢至菩薩を礼したてまつる。
- 願はくはもろもろの衆生とともに、安楽国に往生せん。
南無して心を至し帰命して、西方極楽世界の諸菩薩・清浄大海衆を礼した てまつる。
- 願はくはもろもろの衆生とともに、安楽国に往生せん。
【26】 あまねく師僧・父母および善知識、法界の衆生、三障を断除して、同じ く阿弥陀仏国に往生することを得んがために、帰命し懺悔したてまつる。
中夜讃
【27】 第三につつしみて龍樹菩薩の願往生礼讃の偈(十二礼)によりて、一十 六拝、中夜の時に当りて礼す。懺悔は前後に同じ。
【28】 南無して心を至し帰命して、西方の阿弥陀仏を礼したてまつる。
南無して心を至し帰命して、西方の阿弥陀仏を礼したてまつる。
南無して心を至し帰命して、西方の阿弥陀仏を礼したてまつる。
南無して心を至し帰命して、西方の阿弥陀仏を礼したてまつる。
- 観音頂戴の冠中に住したまふ。種々の妙相宝をもつて荘厳せり。
- よく外道と魔との驕慢を伏す。ゆゑにわれ弥陀尊を頂礼したてまつる。
- 願はくはもろもろの衆生とともに、安楽国に往生せん。
南無して心を至し帰命して、西方の阿弥陀仏を礼したてまつる。
南無して心を至し帰命して、西方の阿弥陀仏を礼したてまつる。
- 十方に名の聞ゆる菩薩衆、無量の諸魔つねに讃歎す。
- もろもろの衆生のために願力をもつて住したまふ。ゆゑにわれ弥陀尊を頂
- 礼したてまつる。
- 願はくはもろもろの衆生とともに、安楽国に往生せん。
南無して心を至し帰命して、西方の阿弥陀仏を礼したてまつる。
- 金を底とし宝間はりたる池に生ぜる華、善根の成ぜるところの妙台座なり。
- かの座の上において山王のごとし。ゆゑにわれ弥陀尊を頂礼したてまつる。
- 願はくはもろもろの衆生とともに、安楽国に往生せん。
南無して心を至し帰命して、西方の阿弥陀仏を礼したてまつる。
- 願はくはもろもろの衆生とともに、安楽国に往生せん。
南無して心を至し帰命して、西方の阿弥陀仏を礼したてまつる。
南無して心を至し帰命して、西方の阿弥陀仏を礼したてまつる。
- かの尊の仏刹には悪の名なし。また女人と悪道との怖れなし。
- 衆人、心を至してかの尊を敬ひたてまつる。ゆゑにわれ弥陀尊を頂礼した
- てまつる。
- 願はくはもろもろの衆生とともに、安楽国に往生せん。
南無して心を至し帰命して、西方の阿弥陀仏を礼したてまつる。
南無して心を至し帰命して、西方の阿弥陀仏を礼したてまつる。
- われかの尊の功徳の事を説けり。衆善無辺にして海水のごとし。
- 獲るところの善根清浄なるもの、衆生に回施してかの国に生ぜん。
- 願はくはもろもろの衆生とともに、安楽国に往生せん。
【29】 南無して心を至し帰命して、西方の阿弥陀仏を礼したてまつる。
南無して心を至し帰命して、西方極楽世界の観世音菩薩を礼したてまつる。
- 願はくはもろもろの衆生とともに、安楽国に往生せん。
南無して心を至し帰命して、西方極楽世界の大勢至菩薩を礼したてまつる。
- 願はくはもろもろの衆生とともに、安楽国に往生せん。
南無して心を至し帰命して、西方極楽世界の諸菩薩・清浄大海衆を礼した てまつる。
- 願はくはもろもろの衆生とともに、安楽国に往生せん。
【30】 あまねく師僧・父母および善知識、法界の衆生、三障を断除して、同じ く阿弥陀仏国に往生することを得んがために、帰命し懺悔したてまつる。 心を至して懺悔す。
- 無始に身を受けてよりこのかた、つねに十悪をもつて衆生に加ふ。
- 父母に孝せず三宝を謗り、五逆・不善業を造作す。
- この衆罪の因縁をもつてのゆゑに、妄想顛倒して纏縛を生じ、
- 無量の生死の苦を受くべし。頂礼し懺悔したてまつる。願はくは滅除せし
- めたまへ。
懺悔しをはりて、心を至して阿弥陀仏に帰命したてまつる。 心を至して勧請す。
勧請しをはりて、心を至して阿弥陀仏に帰命したてまつる。 心を至して随喜す。
随喜しをはりて、心を至して阿弥陀仏に帰命したてまつる。 心を至して回向す。
回向しをはりて、心を至して阿弥陀仏に帰命したてまつる。 心を至して発願す。
- 虚空法界尽きんや。わが願もまたかくのごとくならん。
発願しをはりて、心を至して阿弥陀仏に帰命したてまつる。[余はことごとく 上の法に同じ。]
後夜讃
【31】 第四につつしみて天親菩薩の願往生礼讃の偈(浄土論)によりて、二十 拝、後夜の時に当りて礼す。懺悔は前後に同じ。
【32】 南無して心を至し帰命して、西方の阿弥陀仏を礼したてまつる。
- 世尊、われ一心に尽十方無礙光如来に帰命したてまつりて、
- 仏教と相応せん。
- 願はくはもろもろの衆生とともに、安楽国に往生せん。
南無して心を至し帰命して、西方の阿弥陀仏を礼したてまつる。
南無して心を至し帰命して、西方の阿弥陀仏を礼したてまつる。
- 浄光明の満足せること、鏡と日月輪とのごとし。
- 願はくはもろもろの衆生とともに、安楽国に往生せん。
南無して心を至し帰命して、西方の阿弥陀仏を礼したてまつる。
- もろもろの珍宝の性を備へて、妙荘厳を具足せり。
- 無垢の光焔熾りにして、明浄にして世間を曜かす。
- 願はくはもろもろの衆生とともに、安楽国に往生せん。
南無して心を至し帰命して、西方の阿弥陀仏を礼したてまつる。
南無して心を至し帰命して、西方の阿弥陀仏を礼したてまつる。
南無して心を至し帰命して、西方の阿弥陀仏を礼したてまつる。
南無して心を至し帰命して、西方の阿弥陀仏を礼したてまつる。
南無して心を至し帰命して、西方の阿弥陀仏を礼したてまつる。
南無して心を至し帰命して、西方の阿弥陀仏を礼したてまつる。
- 永く身心の悩みを離れ、楽しみを受くることつねにして間なし。
- 大乗善根の界は、等しくして譏嫌の名なし。
- 願はくはもろもろの衆生とともに、安楽国に往生せん。
南無して心を至し帰命して、西方の阿弥陀仏を礼したてまつる。
南無して心を至し帰命して、西方の阿弥陀仏を礼したてまつる。
南無して心を至し帰命して、西方の阿弥陀仏を礼したてまつる。
南無して心を至し帰命して、西方の阿弥陀仏を礼したてまつる。
- 願はくはもろもろの衆生とともに、安楽国に往生せん。
南無して心を至し帰命して、西方の阿弥陀仏を礼したてまつる。
南無して心を至し帰命して、西方の阿弥陀仏を礼したてまつる。
- 仏のもろもろの功徳を讃ずるに、分別の心あることなし。
- よくすみやかに功徳の大宝海を満足せしむ。
- 願はくはもろもろの衆生とともに、安楽国に往生せん。
【33】 南無して心を至し帰命して、西方の阿弥陀仏を礼したてまつる。
南無して心を至し帰命して、西方極楽世界の観世音菩薩を礼したてまつる。
- 願はくはもろもろの衆生とともに、安楽国に往生せん。
南無して心を至し帰命して、西方極楽世界の大勢至菩薩を礼したてまつる。
- 願はくはもろもろの衆生とともに、安楽国に往生せん。
南無して心を至し帰命して、西方極楽世界の諸菩薩・清浄大海衆を礼した てまつる。
- 願はくはもろもろの衆生とともに、安楽国に往生せん。
【34】 あまねく師僧・父母および善知識、法界の衆生、三障を断除して、同じ く阿弥陀仏国に往生することを得んがために、帰命し懺悔したてまつる。
晨朝讃
【35】 第五につつしみて彦琮法師の願往生礼讃の偈によりて、二十一拝、[[旦起 ]]の時に当りて礼したてまつる。懺悔は前後に同じ。
【36】 南無して心を至し帰命して、西方の阿弥陀仏を礼したてまつる。
- 法蔵の因いよいよ遠ければ、極楽の果また深し。
- 異珍参はりて地をなし、衆宝間はりて林をなす。
- 華は希有の色を開き、波は実相の音を揚ぐ。
- いかにしてかまさに授手を蒙りて、一たび往生の心を遂ぐべき。
- 願はくはもろもろの衆生とともに、安楽国に往生せん。
南無して心を至し帰命して、西方の阿弥陀仏を礼したてまつる。
- 濁世に還り入るを難ひ、浄土の願いよいよ深し。
- 金縄直くして道を界ひ、珠網縵くして林に垂る。
- 色を見ればみな真色、音を聞けばことごとく法音なり。
- 西方遠しといふことなかれ。ただ十念の心を須ゐよ。
- 願はくはもろもろの衆生とともに、安楽国に往生せん。
南無して心を至し帰命して、西方の阿弥陀仏を礼したてまつる。
- すでに窮理の聖となりて、まことに遍空の威あり。
- 西にありて時に小を現ずるは、ただこれしばらく機に随ふのみ。
- 葉珠あひ映飾し、砂水ともに澄輝せり。
- 無生の果を得んと欲せば、かの土にかならずすべからくよるべし。
- 願はくはもろもろの衆生とともに、安楽国に往生せん。
南無して心を至し帰命して、西方の阿弥陀仏を礼したてまつる。
- 業深ければ往きやすきことを成ず。因浅ければ実に聞きがたし。
- かならず望むらくは疑惑を除きて、超然として独り群がらざれ。
- 願はくはもろもろの衆生とともに、安楽国に往生せん。
南無して心を至し帰命して、西方の阿弥陀仏を礼したてまつる。
- 心は真慈を帯びて満ち、光は法界を含みて団かなり。
- 無縁よく物を摂すれば、有相さだめて難きにあらず。
- 華本心に随ひて変じ、宮移りて身おのづから安し。
- 出世の境を聞くことを悕はば、すべからくともに禅に入りて看るべし。
- 願はくはもろもろの衆生とともに、安楽国に往生せん。
南無して心を至し帰命して、西方の阿弥陀仏を礼したてまつる。
- 回向やうやく功をなせば、西方の路やうやく通ず。
- 宝幢厚地を承け、天香遠風に入る。
- 開華重なりて水に布き、覆網細かくして空を分つ。
- 願生なんぞ意切なる。まさしく楽の無窮なるがためなり。
- 願はくはもろもろの衆生とともに、安楽国に往生せん。
南無して心を至し帰命して、西方の阿弥陀仏を礼したてまつる。
- 当生の処を選ばんと欲せば、西方もつとも帰すべし。
- 樹を間てて重閣を開き、道に満てて鮮衣を布く。
- 香飯、心に随ひて至り、宝殿身を逐ひて飛ぶ。
- 有縁はみな入ることを得。まさしくみづから往く人希なり。
- 願はくはもろもろの衆生とともに、安楽国に往生せん。
南無して心を至し帰命して、西方の阿弥陀仏を礼したてまつる。
- 十劫に道先になりて、界を厳りて群萌を引く。
- 金砂水を徹して照り、玉葉枝に満ててあきらかなり。
- 鳥は本珠のなかより出で、人はただ華の上に生ず。
- あへて請ふ西方の聖、いつかさだめてあひ迎へたまへ。
- 願はくはもろもろの衆生とともに、安楽国に往生せん。
南無して心を至し帰命して、西方の阿弥陀仏を礼したてまつる。
- 十方諸仏の国は、ことごとくこれ法王の家なり。
- ひとへに有縁の地を求めて、冀はくは早く邪なきを得ん。
- 八功如意の水、七宝自然の華、
- かしこに心よく係くれば、まさにかならず往くべし。はるかなるにあらず。
- 願はくはもろもろの衆生とともに、安楽国に往生せん。
南無して心を至し帰命して、西方の阿弥陀仏を礼したてまつる。
- 浄国は衰変なし。一たび立して古今しかなり。
- 光台には千宝を合し、音楽八風に宣ぶ。
- 池には多し説法の鳥、空には満てり散華の天。
- 生ずることを得れば退くことを畏れず。意に随ひてすでに蓮を開く。
- 願はくはもろもろの衆生とともに、安楽国に往生せん。
南無して心を至し帰命して、西方の阿弥陀仏を礼したてまつる。
- 華に坐するは一像にあらず。聖衆また量りがたし。
- 蓮開けて人独り処し、波生じて法おのづから揚ぐ。
- 災なきは処の静かなるによる。退かざるは朋の良きためなり。
- かの前生の輩に問ふ。「ここに来りてよりいくばくの劫ばかりぞ」と。
- 願はくはもろもろの衆生とともに、安楽国に往生せん。
南無して心を至し帰命して、西方の阿弥陀仏を礼したてまつる。
- 光舒べて毘舎を救ひ、空に立ちて韋提を引く。
- 天来りて香蓋を捧げ、人去りて宝衣を齎す。
- 六時に鳥の合するを聞く。四寸華を践みて低る。
- あひ看るに正しからざるはなし。あにまた長き迷ひあらんや。
- 願はくはもろもろの衆生とともに、安楽国に往生せん。
南無して心を至し帰命して、西方の阿弥陀仏を礼したてまつる。
- あまねく勧む、三福を弘めて、ことごとく五焼を滅せしむ。
- 心を発して功すでに至れば、念を係くるに罪すなはち消ゆ。
- 鳥華やかにして珠光転じ、風好ましくして楽声調ふ。
- ただ行道の易きことを欣ぶ。なんぞ聖果のはるかなるを愁へんや。
- 願はくはもろもろの衆生とともに、安楽国に往生せん。
南無して心を至し帰命して、西方の阿弥陀仏を礼したてまつる。
- 珠色仍なりて水となる。金光すなはちこれ台なり。
- 時に到りて華おのづから散じ、願に随ひて華また開く。
南無して心を至し帰命して、西方の阿弥陀仏を礼したてまつる。
- 心を洗ふ甘露の水、目を悦ばしむる妙華の雲。
- 同生の機識りやすく、等しき寿量分ちがたし。
- 楽多くとも道を廃することなし。声遠くとも聞くを妨げず。
- いかんが五濁を貪りて、安然として火にみづから焚けん。
- 願はくはもろもろの衆生とともに、安楽国に往生せん。
南無して心を至し帰命して、西方の阿弥陀仏を礼したてまつる。
- 台の裏に人天現れ、光のなかに侍者看ゆ。
- 空に懸る四宝の閣、回に臨む七重の欄。
- 疑多きは辺地に久し。徳少なきは上生難し。
- しばらく余願を論ずることなかれ。西方すでに心に安んず。
- 願はくはもろもろの衆生とともに、安楽国に往生せん。
南無して心を至し帰命して、西方の阿弥陀仏を礼したてまつる。
- 六根つねに道に合し、三塗永く名を絶つ。
- 念のあひだに遊方あまねくして、還る時に得忍成ず。
- 地平らかにして極まりなく広し。風長にしてこの処清し。
- 言を有心の輩に寄す。ともにもつぱら苦なる城を出でよ。
- 願はくはもろもろの衆生とともに、安楽国に往生せん。
【37】 南無して心を至し帰命して、西方の阿弥陀仏を礼したてまつる。
南無して心を至し帰命して、西方極楽世界の観世音菩薩を礼したてまつる。
- 千輪、足の下にあきらかにして、五道光のなかに現ず。
- 悲引つねに絶ゆることなければ、人の帰するもまたいまだ窮まらず。
- 口に宣べてなほ定にあり。心静かにしてさらに通を飛ばす。
- 名を聞きてみな往くことを願ぜよ。日にいくばくの華叢をか発く。
- 願はくはもろもろの衆生とともに、安楽国に往生せん。
南無して心を至し帰命して、西方極楽世界の大勢至菩薩を礼したてまつる。
- 慧力無上を標し、身光有縁を備ふ。
- もろもろの宝国を動揺して、一の金蓮に侍座す。
- 鳥群、実の鳥にあらず。天類あに真の天ならんや。
- すべからく知るべし、妙楽を求めば、かならずこれ戒香を全くせよ。
- 願はくはもろもろの衆生とともに、安楽国に往生せん。
南無して心を至し帰命して、西方極楽世界の諸菩薩・清浄大海衆を礼した てまつる。
- 願はくはもろもろの衆生とともに、安楽国に往生せん。
【38】 あまねく師僧・父母および善知識、法界の衆生、三障を断除して、同じ く阿弥陀仏国に往生することを得んがために、帰命し懺悔したてまつる。
日中讃
【39】 第六に沙門善導の願往生礼讃の偈、つつしみて〔観経の〕十六観によりて 二十拝を作る。日中の時に当りて礼す。懺悔は前後に同じ。
【40】 南無して心を至し帰命して、西方の阿弥陀仏を礼したてまつる。
- かの弥陀の極楽界を観ずるに、広大寛平にして衆宝をもつて成ず。
- 四十八願より荘厳起りて、もろもろの仏刹に超えてもつとも精たり。
- 本国・他方の大海衆、劫を窮めて算数すとも名すら知らず。
- あまねく勧む、西に帰してかの会に同ぜよ。恒沙の三昧自然に成ず。
- 願はくはもろもろの衆生とともに、安楽国に往生せん。
【41】 南無して心を至し帰命して、西方の阿弥陀仏を礼したてまつる。
- 地下の荘厳七宝の幢、無量無辺無数億なり。
- 八方八面百宝をもつて成ず。かれを見れば無生自然に悟る。
- 無生の宝国永く常たり。一々の宝無数の光を流す。
- 行者心を傾けてつねに目に対して、神を騰げ踊躍して西方に入れ。
- 願はくはもろもろの衆生とともに、安楽国に往生せん。
南無して心を至し帰命して、西方の阿弥陀仏を礼したてまつる。
- 地上の荘厳うたた極まりなし。金縄は道を界ふ。工匠にあらず。
- 弥陀の願智巧みに荘厳す。菩薩・人・天華を散じてたてまつる。
- 宝地に宝色ありて宝光飛ぶ。一々の光無数の台となる。
- 台のなかに宝楼千万億あり。台の側に百億の宝幢囲めり。
- 願はくはもろもろの衆生とともに、安楽国に往生せん。
南無して心を至し帰命して、西方の阿弥陀仏を礼したてまつる。
- 一々の台上虚空のなか、荘厳宝楽また窮まりなし。
- 八種の清風光に尋いで出でて、時に随ひて楽を鼓つに、機に応ずる音あ
- り。
- 機音の正受やや難しとなす。行住坐臥に心を摂して観じ、
- ただ睡時を除きてつねに憶念せよ。三昧は無為にしてすなはち涅槃なり。
- 願はくはもろもろの衆生とともに、安楽国に往生せん。
南無して心を至し帰命して、西方の阿弥陀仏を礼したてまつる。
- 宝国の宝林にもろもろの宝樹あり。宝華・宝葉・宝根茎なり。
- あるいは千宝をもつて林を分ちて異なり、あるいは百宝ありてともに[[行を
- 成ず]]。
- 行々あひ当り葉あひ次げり。色おのおの不同にして光またしかなり。
- 等量斉高にして三十万なり。枝条あひ触れて無生を説く。
- 願はくはもろもろの衆生とともに、安楽国に往生せん。
南無して心を至し帰命して、西方の阿弥陀仏を礼したてまつる。
- 七重の羅網・七重の宮、綺たがひに光を回らしてあひ映発す。
- 化天童子みな充満せり。瓔珞の輝光日月に超えたり。
- 行々の宝葉色千般なり。華敷けて等しくして旋金輪のごとし。
- 菓光を変じて衆宝の蓋を成ず。塵沙の仏刹現じて無辺なり。
- 願はくはもろもろの衆生とともに、安楽国に往生せん。
南無して心を至し帰命して、西方の阿弥陀仏を礼したてまつる。
- 宝池に宝岸・宝金沙あり、宝渠に宝葉・宝蓮華ありて、
- 十二由旬にしてみな正等なり。宝羅・宝網・宝欄巡れり。
- 徳水流を分ちて宝樹を尋ぬ。波を聞き楽を覩て恬怕を証す。
- 言を有縁の同行者に寄す。つとめて迷ひを翻して本家に還れ。
- 願はくはもろもろの衆生とともに、安楽国に往生せん。
南無して心を至し帰命して、西方の阿弥陀仏を礼したてまつる。
- 一々の金縄は道の上に界ひて、宝楽・宝楼千万億あり。
- もろもろの天童子香華を散じ、他方の菩薩雲のごとくに集まる。
- 無量無辺にしてよく計ることなし。弥陀を稽首して恭敬して立つ。
- 風鈴樹の響き虚空にあまねくして、三尊を歎説すること極まりあることな
- し。
- 願はくはもろもろの衆生とともに、安楽国に往生せん。
南無して心を至し帰命して、西方の阿弥陀仏を礼したてまつる。
- 弥陀本願の華王の座、一切衆宝もつて成ずることをなせり。
- 台上に四幢あり、宝縵を張れり。弥陀独り坐して真形を顕す。
- 真形の光明法界にあまねし。光触を蒙るものは心退せず。
- 昼夜六時にもつぱら想念すれば、終時快楽にして三昧のごとし。
- 願はくはもろもろの衆生とともに、安楽国に往生せん。
南無して心を至し帰命して、西方の阿弥陀仏を礼したてまつる。
南無して心を至し帰命して、西方の阿弥陀仏を礼したてまつる。
- 弥陀の身色金山のごとし。相好の光明十方を照らす。
- ただ念仏するもののみありて光摂を蒙る。まさに知るべし、本願もつとも
- 強しとなす。
- 十方の如来舌を舒べて証したまふ。もつぱら名号を称して西方に至ると。
- かしこに到り華開けて妙法を聞けば、十地の願行自然に彰る。
- 願はくはもろもろの衆生とともに、安楽国に往生せん。
南無して心を至し帰命して、西方の阿弥陀仏を礼したてまつる。
- 観音菩薩の大慈悲、すでに菩提を得るも捨てて証せず。
- 一切の五道身中に内る。六時に観察して三輪応ず。
- 応現の身光は紫金色なり。相好威儀うたた極まりなし。
- つねに百億光王の手を舒べて、あまねく有縁を摂して本国に帰せしむ。
- 願はくはもろもろの衆生とともに、安楽国に往生せん。
南無して心を至し帰命して、西方の阿弥陀仏を礼したてまつる。
- 勢至菩薩思議しがたく、威光あまねく無辺際を照らす。
- 有縁の衆生光触を蒙りて、智慧を増長して三界を超ゆ。
- 法界傾揺して転蓬のごとし。化仏雲集して虚空に満てり。
- あまねく有縁に勧む。つねに憶念して、永く胞胎を絶ちて、六通を証せよ。
- 願はくはもろもろの衆生とともに、安楽国に往生せん。
南無して心を至し帰命して、西方の阿弥陀仏を礼したてまつる。
- 正坐跏趺して三昧に入れば、想心念に乗じて西方に至る。
- 弥陀の極楽界を覩見するに、地上・虚空七宝をもつて荘れり。
- 弥陀の身量きはめて無辺なれば、かさねて衆生を勧めて小身を観ぜしむ。
- 丈六・八尺機に随ひて現じ、円光の化仏前の真に等し。
- 願はくはもろもろの衆生とともに、安楽国に往生せん。
【42】 南無して心を至し帰命して、西方の阿弥陀仏を礼したてまつる。
- 上輩は上行上根の人なり。浄土に生ずることを求めて貪瞋を断ず。
- 行の差別につきて三品を分つ。五門相続して三因を助く。
- 一日七日もつぱら精進して、畢命に台に乗じて六塵を出づ。
- 慶ばしきかな、逢ひがたくしていま遇ふことを得たり。永く無為法性の身
- を証せん。
- 願はくはもろもろの衆生とともに、安楽国に往生せん。
南無して心を至し帰命して、西方の阿弥陀仏を礼したてまつる。
- 中輩は中行中根の人なり。一日の斎戒をもつて金蓮に処す。
- 父母に孝養せるを教へて回向せしめ、ために西方快楽の因と説く。
- 仏、声聞衆と来り取りて、ただちに弥陀の華座の辺に到る。
- 百宝の華に籠りて七日を経。三品の蓮開けて小真を証す。
- 願はくはもろもろの衆生とともに、安楽国に往生せん。
南無して心を至し帰命して、西方の阿弥陀仏を礼したてまつる。
- たちまちに往生の善知識の、急に勧めてもつぱらかの仏の名を称せしむる
- に遇ふ。
- 化仏・菩薩声を尋ねて到りたまふ。一念心を傾くれば宝蓮に入る。
- 三華障重くして多劫に開く。時にはじめて菩提の因を発す。
- 願はくはもろもろの衆生とともに、安楽国に往生せん。
【43】 南無して心を至し帰命して、西方の阿弥陀仏を礼したてまつる。
- 弥陀仏国はよく感ずるところなり。西方極楽は思議しがたし。
- 般若を渇聞して思漿を絶つ。無生を念食してすなはち飢ゑを断ず。
- 一切の荘厳みな法を説く。無心に領納して自然に知る。
- 七覚の華池意に随ひて入る。八背神を凝らして一枝に会す。
- 無辺の菩薩同学となる。性海の如来ことごとくこれ師なり。
- 弥陀の心水身頂に沐す。観音・勢至、衣を与へて被す。
- たちまちに空に騰りて法界に遊び、須臾に記を授かり無為と号す。
- かくのごとく逍遥極まりなき処なり。われいま去かずはいづれの時をか待
- たん。
- 願はくはもろもろの衆生とともに、安楽国に往生せん。
【44】 南無して心を至し帰命して、西方の阿弥陀仏を礼したてまつる。
南無して心を至し帰命して、西方極楽世界の観音・勢至・諸菩薩・[[清浄大 海衆]]を礼したてまつる。
- 願はくはもろもろの衆生とともに、安楽国に往生せん。
【45】 あまねく師僧・父母および善知識、法界の衆生、三障を断除して、同じ く阿弥陀仏国に往生することを得んがために、帰命し懺悔したてまつる。
【46】 上の二品の懺悔・発願等前に同じ。要がなかの要を須ゐば、初めを取れ。 略がなかの略を須ゐば、中を取れ。広がなかの広を須ゐば、下を取れ。その 「広」といふは、実に心に生ぜんと願ずることあるものにつきて勧む。あるい は四衆に対し、あるいは十方の仏に対し、あるいは舎利・尊像・大衆に対し、 あるいは一人に対す。もしは独自等なり。また十方尽虚空の三宝および尽衆生 界等に向かひ、つぶさに向かひて発露懺悔すべし。懺悔に三品あり。上・中・ 下なり。「上品の懺悔」とは、身の毛孔のなかより血流れ、眼のなかより血出 づるものを上品の懺悔と名づく。「中品の懺悔」とは、遍身に熱き汗毛孔より 出で、眼のなかより血流るるものを中品の懺悔と名づく。「下品の懺悔」とは、 遍身徹りて熱く、眼のなかより涙出づるものを下品の懺悔と名づく。これらの 三品差別ありといへども、すなはちこれ久しく解脱分の善根を種ゑたる人なり。 今生に法を敬ひ、人を重くして身命を惜しまず、すなはち小罪に至るまで、も し懺すれば、すなはちよく心に徹り髄に徹さしむることを致す。よくかくのご とく懺すれば、久近を問はず、あらゆる重障たちまちにみな滅尽す。もしか くのごとくせざれば、たとひ日夜十二時に急に走むとも、すべてこれ益なし。 なさざるもののごとし。知るべし、流涙・流血等にあたはずといへども、ただ よく真心徹到するはすなはち上と同じ。
【47】 敬ひて十方の諸仏、十二部経、諸大菩薩、一切の賢聖および一切の[[天・ 竜八部]]、法界の衆生、現前の大衆等にまうす。われ[某甲]発露懺悔すること を証知したまへ。無始よりこのかたすなはち今身に至るまで、一切の三宝・師 僧・父母・六親眷属・善知識・法界の衆生を殺害せること数を知るべからず。 一切の三宝・師僧・父母・六親眷属・善知識・法界の衆生の物を偸盗せること 数を知るべからず。一切の三宝・師僧・父母・六親眷属・善知識・法界の衆生 の上において邪心を起せること数を知るべからず。妄語をもつて一切の三宝・ 師僧・父母・六親眷属・善知識・法界の衆生を欺誑せること数を知るべからず。 綺語をもつて一切の三宝・師僧・父母・六親眷属・善知識・法界の衆生を調弄 せること数を知るべからず。悪口をもつて一切の三宝・師僧・父母・六親眷 属・善知識・法界の衆生を罵辱し、誹謗し、毀呰せること数を知るべからず。 両舌をもつて一切の三宝・師僧・父母・六親眷属・善知識・法界の衆生を闘 乱破壊せること数を知るべからず。あるいは五戒・八戒・十戒・十善戒・二百 五十戒・五百戒、菩薩の三聚戒、十無尽戒、乃至一切の戒および一切威儀戒等 を破し、みづから作り他を教へ、作るを見て随喜せること数を知るべからず。 かくのごとき等の衆罪、また十方大地の無辺にして微塵の無数なるがごとく、 われらが作罪もまた無数なり。虚空無辺なり、われらが作罪もまた無辺なり。 方便無辺なり、われらが作罪もまた無辺なり。法性無辺なり、われらが作罪も また無辺なり。法界無辺なり、われらが作罪もまた無辺なり。衆生無辺なり、 われらが劫奪・殺害もまた無辺なり。三宝無辺なり、われらが侵損・劫奪・殺 害もまた無辺なり。戒品無辺なり、われらが毀犯もまた無辺なり。かくのごと き等の罪、上もろもろの菩薩に至り、下声聞・縁覚に至るまで知ることあたは ざるところなり。ただ仏と仏とのみすなはちよくわが罪の多少を知りたまへり。 いま三宝の前、法界の衆生の前において発露懺悔し、あへて覆蔵せず。ただ願 はくは十方の三宝、法界の衆生、わが懺悔を受け、わが清浄を憶したまへ。 今日よりはじめて、願はくは法界の衆生とともに、邪を捨て正に帰し、菩提心 を発して、慈心をもつてあひ向かひ、仏眼をもつてあひ看、菩提まで眷属とし て、真の善知識となりて、同じく阿弥陀仏国に生じ、すなはち成仏に至るまで、 かくのごとき等の罪永く相続を断じてさらにあへて作らず。懺悔しをはりて、 心を至して阿弥陀仏に帰命したてまつる。[広懺しをはりぬ。]
後述
【48】 もし入観しおよび睡眠する時は、この願を発すべし。もしは坐し、もし は立して一心に合掌し、面を正して西に向かへて、十声、阿弥陀仏・観音・勢 至・諸菩薩・清浄大海衆を称しをはりて、弟子[某甲]現にこれ生死の凡夫、 罪障深重にして六道に淪みて、苦つぶさにいふべからず。今日善知識に遇ひ て、弥陀の本願名号を聞くを得たり。一心に称念して往生を求願せよ。「願は くは仏の慈悲、本弘誓願を捨てたまはずして摂受したまへ。弟子、弥陀仏の身 相・光明を識らず。願はくは仏の慈悲をもつて弟子に身相、観音・勢至・諸菩 薩等およびかの世界の清浄荘厳・光明等の相を示現したまへ」と。この語を いひをはりて一心正念にして、すなはち意に随ひて入観し、および睡れ。ある いはまさしく発願する時すなはちこれを見ることを得るあり。あるいは睡眠す る時見ることを得るあり。至心ならざるを除く。この願このごろ大きに現験あ り。
【49】 問ひていはく、阿弥陀仏を称念し礼観して、現世になんの功徳利益かあ る。答へていはく、もし阿弥陀仏を称すること一声するに、すなはちよく八十 億劫の生死の重罪を除滅す。礼念以下もまたかくのごとし。『十往生経』(意) にのたまはく、「もし衆生ありて、阿弥陀仏を念じて往生せんと願ずれば、か の仏すなはち二十五の菩薩を遣はして、行者を擁護せしめたまふ。もしは行、 もしは坐、もしは住、もしは臥、もしは昼、もしは夜、一切時、一切処に、悪 鬼・悪神をしてその便を得しめず」と。また『観経』(意)にのたまふがごと し。「もし阿弥陀仏を称・礼・念して、かの国に往生せんと願ずれば、かの仏 すなはち無数の化仏、無数の化観音・勢至菩薩を遣はして、行者を護念せしめ たまふ」と。また前の二十五菩薩等と百重千重行者を囲繞して、行住坐臥、 一切の時処を問はず、もしは昼、もしは夜、つねに行者を離れたまはず。いま すでにこの勝益まします、憑むべし。願はくはもろもろの行者、[[おのおのすべ からく心を至して往くことを求むべし]]。また『無量寿経』(上・意)にのたま ふがごとし。「もしわれ成仏せんに、十方の衆生、わが名号を称すること下十 声に至るまで、もし生ぜずは、正覚を取らじ」(第十八願)と。かの仏いま現に 世にましまして成仏したまへり。まさに知るべし、本誓重願虚しからず、衆 生称念すればかならず往生を得。また『弥陀経』にのたまふがごとし。「も し衆生ありて阿弥陀仏を説くを聞かば、すなはち名号を執持すること、もしは 一日、もしは二日、乃至七日なるべし。一心に仏を称して乱れざれば、命終ら んと欲する時、阿弥陀仏、もろもろの聖衆と現じてその前にまします。この人 終る時、心顛倒せずしてすなはちかの国に往生することを得。仏(釈尊)、舎利 弗に告げたまはく、〈われこの利を見るがゆゑにこの言を説く。もし衆生あり てこの説を聞くものは、まさに発願してかの国に生ぜんと願ずべし〉」と。次 下に説きてのたまはく(小経・意)、「東方恒河沙のごとき等の諸仏、南西北方 および上下一々の方の恒河沙のごとき等の諸仏、おのおの本国においてその[[舌 相を出して]]、あまねく三千大千世界を覆ひて、誠実の言を説きたまはく、〈な んぢら衆生、みなこの一切諸仏所護念経を信ずべし〉と。いかんが護念と名づ くる。もし衆生ありて阿弥陀仏を称念すること、もしは七日および一日、下十 声乃至一声、一念等に至るまで、かならず往生を得。この事を証誠したまふ がゆゑに護念経と名づく」と。次下の文にのたまはく(同・意)、「もし仏を称 して往生するものは、つねに六方恒河沙等の諸仏のために護念せらる。ゆゑに 護念経と名づく」と。いますでにこの増上の誓願の憑むべきあり。もろもろの 仏子等、なんぞ意を励まし去かざらんや。
往生礼讃偈