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浄土和讃

出典: 浄土真宗聖典『ウィキアーカイブ(WikiArc)』

2022年10月31日 (月) 16:31時点における林遊 (トーク | 投稿記録)による版 (徳号列示)

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 和讃とは和語をもって讃嘆する詩という意味で、親鸞聖人が撰述された今様形式の和讃は500首をこえる。とくにそのなかで『浄土和讃』『高僧和讃』『正像末和讃』をまとめて『三帖和讃』と称している。

 『浄土和讃』は、経典などによって阿弥陀如来とその浄土の徳を讃嘆したもので、「冠頭讃」2首、「讃阿弥陀仏偈讃」48首、「大経讃」22首、「観経讃」9首、「弥陀経讃」5首、「諸経讃」9首、「現世利益讃」15首、「勢至讃」8首、合計118首からなっている。とくに「讃阿弥陀仏偈讃」のはじめの6首は、「正信念仏偈」とともに門信徒が朝夕読誦する和讃で、ひろく知られている。

浄土和讃

冠頭讃

(1)
弥陀の名号となへつつ
 信心まことにうるひとは
 憶念の心つねにして
 仏恩報ずるおもひあり

(2)
誓願不思議をうたがひて
 御名を称する往生は
 宮殿のうちに五百歳
 むなしくすぐとぞときたまふ

徳号列示

『讃阿弥陀仏偈』にいはく  曇鸞御造

南無阿弥陀仏釈して『無量寿傍経』と名づく、讃めたてまつりてまた安養といふ。
成仏よりこのかた十劫を歴たまへり、寿命まさに量りあることなし、法身の光輪法界に遍じて、世の盲冥を照らしたまふ、かるがゆゑに頂礼したてまつる。

また1無量光と2真実明と号く、また3無辺光と4平等覚と号く、また5無碍光と6難思議と号く、また7無対光と8畢竟依と号く、また9光炎王と10大応供と号く、また11清浄光と号く、また12歓喜光と13大安慰と号く、また14智慧光と号く、また15不断光と号く、また16難思光と号く、また17無称光と号く、18超日月光と号けたてまつる。

19無等等 20広大会 21大心海 22無上尊 23平等力 24大心力
25無称仏 26婆伽婆 27講堂 28清浄大摂受 29不可思議尊
30道場樹 31真無量 32清浄楽 33本願功徳聚 34清浄勲
35功徳蔵 36無極尊 37南無不可思議光[以上略抄なり。]

『十住毘婆娑論』にいはく
自在人[我礼]清浄人[帰命]無量徳[称讃] 以上


讃弥陀偈讃

讃阿弥陀仏偈和讃

         
愚禿親鸞作

南無阿弥陀仏

(3)
弥陀成仏のこのかたは
 いまに十劫をへたまへり
 法身の光輪きはもなく
 世の盲冥をてらすなり

(4)
智慧の光明はかりなし
 有量の諸相ことごとく
 光暁かぶらぬものはなし
 真実明に帰命せよ

(5)
解脱の光輪きはもなし
 光触かぶるものはみな
 有無をはなるとのべたまふ
 平等覚に帰命せよ

(6)
光雲無碍如虚空
 一切の有碍にさはりなし
 光沢かぶらぬものぞなき
 難思議を帰命せよ

(7)
清浄光明ならびなし
 遇斯光のゆゑなれば
 一切の業繋ものぞこりぬ
 畢竟依を帰命せよ

(8)
仏光照曜最第一
 光炎王仏となづけたり
 三塗の黒闇ひらくなり
 大応供を帰命せよ

(9)
道光明朗超絶せり
 清浄光仏とまうすなり
 ひとたび光照かぶるもの
 業垢をのぞき解脱をう

(10)
慈光はるかにかぶらしめ
 ひかりのいたるところには
 法喜をうとぞのべたまふ
 大安慰を帰命せよ

(11)
無明の闇を破するゆゑ
 智慧光仏となづけたり
 一切諸仏三乗衆
 ともに嘆誉したまへり

(12)
光明てらしてたえざれば
 不断光仏となづけたり
 聞光力のゆゑなれば
 心不断にて往生す

(13)
仏光測量なきゆゑに
 難思光仏となづけたり
 諸仏は往生嘆じつつ
 弥陀の功徳を称せしむ

(14)
神光の離相をとかざれば
 無称光仏となづけたり
 因光成仏のひかりをば
 諸仏の嘆ずるところなり

(15)
光明月日に勝過して
 超日月光となづけたり
 釈迦嘆じてなほつきず
 無等等を帰命せよ

(16)
弥陀初会の聖衆は
 算数のおよぶことぞなき
 浄土をねがはんひとはみな
 広大会を帰命せよ

(17)
安楽無量の大菩薩
 一生補処にいたるなり
 普賢の徳に帰してこそ
 穢国にかならず化するなれ

(18)
十方衆生のためにとて
 如来の法蔵あつめてぞ
 本願弘誓に帰せしむる
 大心海を帰命せよ

(19)
観音・勢至もろともに
 慈光世界を照曜し
 有縁を度してしばらくも
 休息あることなかりけり

(20)
安楽浄土にいたるひと
 五濁悪世にかへりては
 釈迦牟尼仏のごとくにて
 利益衆生はきはもなし

(21)
神力自在なることは
 測量すべきことぞなき
 不思議の徳をあつめたり
 無上尊を帰命せよ

(22)
安楽声聞・菩薩衆
 人・天智慧ほがらかに
 身相荘厳みなおなじ
 他方に順じて名をつらぬ

(23)
顔容端正たぐひなし
 精微妙躯非人天
 虚無之身無極体
 平等力を帰命せよ

(24)
安楽国をねがふひと
 正定聚にこそ住すなれ
 邪定・不定聚くにになし
 諸仏讃嘆したまへり

(25)
十方諸有の衆生は
 阿弥陀至徳の御名をきき
 真実信心いたりなば
 おほきに所聞を慶喜せん

(26)
若不生者のちかひゆゑ
 信楽まことにときいたり
 一念慶喜するひとは
 往生かならずさだまりぬ

(27)
安楽仏土の依正
 法蔵願力のなせるなり
 天上天下にたぐひなし
 大心力帰命せよ

(28)
安楽国土の荘厳は
 釈迦無碍のみことにて
 とくともつきじとのべたまふ
 無称仏を帰命せよ

(29)
已今当の往生
 この土の衆生のみならず
 十方仏土よりきたる
 無量無数不可計なり

(30)
阿弥陀仏の御名をきき
 歓喜讃仰せしむれば
 功徳の宝を具足して
 一念大利無上なり

(31)
たとひ大千世界
 みてらん火をもすぎゆきて
 仏の御名をきくひとは
 ながく不退にかなふなり

(32)
神力無極の阿弥陀は
 無量の諸仏ほめたまふ
 東方恒沙の仏国より
 無数の菩薩ゆきたまふ

(33)
自余の九方の仏国も
 菩薩の往覲みなおなじ
 釈迦牟尼如来をときて
 無量の功徳をほめたまふ

(34)
十方の無量菩薩衆
 徳本うゑんためにとて
 恭敬をいたし歌嘆す
 みなひと婆伽婆を帰命せよ

(35)
七宝講堂道場樹
 方便化身の浄土なり
 十方来生きはもなし
 講堂道場礼すべし

(36)
妙土広大超数限
 本願荘厳よりおこる
 清浄大摂受
 稽首帰命せしむべし

(37)
自利利他円満して
 帰命方便巧荘厳
 こころもことばもたえたれば
 不可思議尊を帰命せよ

(38)
神力本願及満足
 明了堅固究竟願
 慈悲方便不思議なり
 真無量を帰命せよ

(39)
宝林・宝樹微妙音
 自然清和の伎楽にて
 哀婉雅亮すぐれたり
 清浄楽を帰命せよ

(40)
七宝樹林くににみつ
 光耀たがひにかがやけり
 華菓枝葉またおなじ
 本願功徳聚を帰命せよ

(41)
清風宝樹をふくときは
 いつつの音声いだしつつ
 宮商和して自然なり
 清浄勲を礼すべし

(42)
一々のはなのなかよりは
 三十六百千億
 光明てらしてほがらかに
 いたらぬところはさらになし

(43)
一々のはなのなかよりは
 三十六百千億の
 仏身もひかりもひとしくて
 相好金山のごとくなり

(44)
相好ごとに百千の
 ひかりを十方にはなちてぞ
 つねに妙法ときひろめ
 衆生を仏道にいらしむる

(45)
七宝の宝池いさぎよく
 八功徳水みちみてり
 無漏の依果不思議なり
 功徳蔵を帰命せよ

(46)
三塗苦難ながくとぢ
 但有自然快楽音
 このゆゑ安楽となづけたり
 無極尊を帰命せよ

(47)
十方三世の無量慧
 おなじく一如に乗じてぞ
 二智円満道平等
 摂化随縁不思議なり

(48)
弥陀の浄土に帰しぬれば
 すなはち諸仏に帰するなり
 一心をもちて一仏を
 ほむるは無碍人をほむるなり

(49)
信心歓喜慶所聞
 乃曁一念至心者
 南無不可思議光仏
 頭面に礼したてまつれ

(50)
仏慧功徳ほめしめて
 十方の有縁にきかしめん
 信心すでにえんひとは
 つねに仏恩報ずべし

   以上四十八首 [愚禿親鸞作]

阿弥陀如来  {観世音菩薩 大勢至菩薩}
釈迦牟尼如来  {富楼那尊者 大目犍連 阿難尊者}
頻婆娑羅王  {韋提夫人 耆婆大臣 月光大臣}
提婆尊者  {阿闍世王 雨行大臣 守門者}

大経讃

浄土和讃  愚禿親鸞作

『大経』意  二十二首


(51)
尊者阿難座よりたち
 世尊の威光を瞻仰
 生希有心とおどろかし
 未曾見とぞあやしみし

(52)
如来の光瑞希有にして
 阿難はなはだこころよく
 如是之義ととへりしに
 出世の本意あらはせり

(53)
大寂定にいりたまひ
 如来の光顔たへにして
 阿難の慧見をみそなはし
 問斯慧義とほめたまふ

(54)
如来興世の本意には
 本願真実ひらきてぞ
 難値難見とときたまひ
 猶霊瑞華としめしける

(55)
弥陀成仏のこのかたは
 いまに十劫とときたれど
 塵点久遠劫よりも
 ひさしき仏とみえたまふ

(56)
南無不可思議光仏
 饒王仏のみもとにて
 十方浄土のなかよりぞ
 本願選択摂取する

(57)
無碍光仏のひかりには
 清浄・歓喜・智慧光
 その徳不可思議にして
 十方諸有を利益せり

(58) 第十八願
至心・信楽・欲生
 十方諸有をすすめてぞ
 不思議の誓願あらはして
 真実報土の因とする

(59)
真実信心うるひとは
 すなはち定聚のかずにいる
 不退のくらゐにいりぬれば
 かならず滅度にいたらしむ

(60)
弥陀の大悲ふかければ
 仏智の不思議をあらはして
 変成男子の願をたて
 女人成仏ちかひたり

(61) 第十九願
至心・発願・欲生
 十方衆生を方便し
 衆善の仮門ひらきてぞ
 現其人前と願じける

(62)
臨終現前の願により
 釈迦は諸善をことごとく
 『観経』一部にあらはして
 定散諸機をすすめけり

(63)
諸善万行ことごとく
 至心発願せるゆゑに
 往生浄土の方便の
 善とならぬはなかりけり

(64) 第二十願
至心・回向・欲生
 十方衆生を方便し
 名号の真門ひらきてぞ
 不果遂者と願じける

(65)
果遂の願によりてこそ
 釈迦は善本・徳本
 『弥陀経』にあらはして
 一乗の機をすすめける

(66)
定散自力の称名は
 果遂のちかひに帰してこそ
 をしへざれども自然に
 真如の門に転入する

(67)
安楽浄土をねがひつつ
 他力の信をえぬひとは
 仏智不思議をうたがひて
 辺地・懈慢にとまるなり

(68)
如来の興世にあひがたく
 諸仏の経道ききがたし
 菩薩の勝法きくことも
 無量劫にもまれらなり

(69)
善知識にあふことも
 をしふることもまたかたし
 よくきくこともかたければ
 信ずることもなほかたし

(70)
一代諸教の信よりも
 弘願の信楽なほかたし
 難中之難とときたまひ
 無過此難とのべたまふ

(71)
念仏成仏これ真宗
 万行諸善これ仮門
 権実真仮をわかずして
 自然の浄土をえぞしらぬ

(72)
聖道権仮の方便に
 衆生ひさしくとどまりて
 諸有に流転の身とぞなる
 悲願の一乗帰命せよ

   以上『大経』意

観経讃

『観経』意     九首


(73)
恩徳広大釈迦如来
 韋提夫人に勅してぞ
 光台現国のそのなかに
 安楽世界をえらばしむ

(74)
頻婆娑羅王勅せしめ
 宿因その期をまたずして
 仙人殺害のむくひには
 七重のむろにとぢられき

(75)
阿闍世王は瞋怒して
 我母是賊としめしてぞ
 無道に母を害せんと
 つるぎをぬきてむかひける

(76)
耆婆・月光ねんごろに
 是旃陀羅とはぢしめて
 不宜住此と奏してぞ
 闍王の逆心いさめける

(77)
耆婆大臣おさへてぞ
 却行而退せしめつつ
 闍王つるぎをすてしめて
 韋提をみやに禁じける

(78)
弥陀・釈迦方便して
 阿難・目連・富楼那・韋提
 達多・闍王・頻婆娑羅
 耆婆・月光・行雨等

(79)
大聖おのおのもろともに
 凡愚底下のつみひとを
 逆悪もらさぬ誓願に
 方便引入せしめけり

(80)
釈迦韋提方便して
 浄土の機縁熟すれば
 雨行大臣証として
 闍王逆悪興ぜしむ

(81)
定散諸機各別の
 自力の三心ひるがへし
 如来利他の信心
 通入せんとねがふべし

   以上『観経』意

弥陀経讃

『弥陀経』意   五首

(82)
十方微塵世界
 念仏の衆生をみそなはし
 摂取してすてざれば
 阿弥陀となづけたてまつる

(83)
恒沙塵数の如来は
 万行の少善きらひつつ
 名号不思議の信心を
 ひとしくひとへにすすめしむ

(84)
十方恒沙の諸仏は
 極難信ののりをとき
 五濁悪世のためにとて
 証誠護念せしめたり

(85)
諸仏の護念証誠は
 悲願成就のゆゑなれば
 金剛心をえんひとは
 弥陀の大恩報ずべし

(86)
五濁悪時悪世界
 濁悪邪見の衆生には
 弥陀の名号あたへてぞ
 恒沙の諸仏すすめたる

   以上『弥陀経』意

諸経讃

諸経のこころによりて
弥陀和讃    九首

(87)
無明の大夜をあはれみて
 法身の光輪きはもなく
 無碍光仏としめしてぞ
 安養界に影現する

(88)
久遠実成阿弥陀仏
 五濁の凡愚をあはれみて
 釈迦牟尼仏としめしてぞ
 迦耶城には応現する

(89)
百千倶胝の劫をへて
 百千倶胝のしたをいだし
 したごと無量のこゑをして
 弥陀をほめんになほつきじ

(90)
大聖易往とときたまふ
 浄土をうたがふ衆生をば
 無眼人とぞなづけたる
 無耳人とぞのべたまふ

(91)
無上上真解脱
 真解脱は如来なり
 真解脱にいたりてぞ
 無愛無疑とはあらはるる

(92)
平等心をうるときを
 一子地となづけたり
 一子地は仏性なり
 安養にいたりてさとるべし

(93)
如来すなはち涅槃なり
 涅槃を仏性となづけたり
 凡地にしてはさとられず
 安養にいたりて証すべし

(94)
信心よろこぶそのひとを
 如来とひとしとときたまふ
 大信心は仏性なり
 仏性すなはち如来なり

(95)
衆生有碍のさとりにて
 無碍の仏智をうたがへば
 曾婆羅頻陀羅地獄にて
 多劫衆苦にしづむなり

   以上諸経意

現世利益讃

現世利益和讃   十五首

(96)
阿弥陀如来来化して
 息災延命のためにとて
 『金光明』の「寿量品」
 ときおきたまへるみのりなり

(97)
山家伝教大師
 国土人民をあはれみて
 七難消滅文には
 南無阿弥陀仏をとなふべし

(98)
一切の功徳にすぐれたる
 南無阿弥陀仏をとなふれば
 三世の重障みなながら
 かならず転じて軽微なり

(99)
南無阿弥陀仏をとなふれば
 この世の利益きはもなし
 流転輪廻のつみきえて
 定業中夭のぞこりぬ

(100)
南無阿弥陀仏をとなふれば
 梵王帝釈帰敬す
 諸天善神ことごとく
 よるひるつねにまもるなり

(101)
南無阿弥陀仏をとなふれば
 四天大王もろともに
 よるひるつねにまもりつつ
 よろづの悪鬼をちかづけず

(102)
南無阿弥陀仏をとなふれば
 堅牢地祇は尊敬す
 かげとかたちとのごとくにて
 よるひるつねにまもるなり

(103)
南無阿弥陀仏をとなふれば
 難陀・跋難大竜等
 無量の竜神尊敬し
 よるひるつねにまもるなり

(104)
南無阿弥陀仏をとなふれば
 炎魔法王尊敬す
 五道の冥官みなともに
 よるひるつねにまもるなり

(105)
南無阿弥陀仏をとなふれば
 他化天の大魔王
 釈迦牟尼仏のみまへにて
 まもらんとこそちかひしか

(106)
天神・地祇はことごとく
 善鬼神となづけたり
 これらの善神みなともに
 念仏のひとをまもるなり

(107)
願力不思議の信心は
 大菩提心なりければ
 天地にみてる悪鬼神
 みなことごとくおそるなり

(108)
南無阿弥陀仏をとなふれば
 観音・勢至はもろともに
 恒沙塵数の菩薩と
 かげのごとくに身にそへり

(109)
無碍光仏のひかりには
 無数の阿弥陀ましまして
 化仏おのおのことごとく
 真実信心をまもるなり

(110)
南無阿弥陀仏をとなふれば
 十方無量の諸仏は
 百重千重囲繞して
 よろこびまもりたまふなり

   以上現世利益

勢至讃

首楞厳経』によりて大勢至菩薩和讃したてまつる  八首

(111)
勢至念仏円通して
 五十二菩薩もろともに
 すなはち座よりたたしめて
 仏足頂礼せしめつつ

(112)
教主世尊にまうさしむ
 往昔恒河沙劫に
 仏世にいでたまへりき
 無量光とまうしけり

(113)
十二の如来あひつぎて
 十二劫をへたまへり
 最後の如来をなづけてぞ
 超日月光とまうしける

(114)
超日月光この身には
 念仏三昧をしへしむ
 十方の如来は衆生を
 一子のごとく憐念す

(115)
子の母をおもふがごとくにて
 衆生仏を憶すれば
 現前当来とほからず
 如来を拝見うたがはず

(116)
染香人のその身には
 香気あるがごとくなり
 これをすなはちなづけてぞ
 香光荘厳とまうすなる

(117)
われもと因地にありしとき
 念仏の心をもちてこそ
 無生忍にはいりしかば
 いまこの娑婆界にして

(118)
念仏のひとを摂取して
 浄土に帰せしむるなり
 大勢至菩薩の
 大恩ふかく報ずべし

   以上大勢至菩薩

源空聖人御本地なり。